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封切り当時、観たいと願いつつ、何年も鑑賞していない映画がある。
そのトップ級がヘンリー・フォンダ主演の『黄昏』だ。
なぜ長い間、敬遠していたか?
実は怖かったからだ。
自分の末路が見えてくるような気がして勇気が出なかったと言えばいいか。
でも、長年の禁を破って(?)、レンタル店で借り出してきた。
その店では〈名画〉のコーナーに納まっていた。
原題は『On Golden Pond』で、米ニューイングランド地区の湖沼を指しており、
そこを主舞台にした家族的ドラマ。
大学教授を退官した老いた夫がヘンリー・フォンダ、
その老妻にキャサリン・ヘップバーン、
離婚経験のある娘にジェーン・フォンダという顔ぶれで、
この物語にこれ以上の配役はないだろう。
湖畔には元教授の別荘があり、老夫婦はそこでひと夏を過ごすが、
うらやましいことこの上ない。
静謐で広がりのある湖を前にした別荘は、
造りこそ素朴だが、一家族が暮らすには申し分ない。
小型のランナバウトも備えてある。
老人の趣味は、これで大物釣りに出かけることのようだ。
そこへ中年になった娘が中学生の息子と、
新しい男友達を伴ってやってくる。
別荘訪問のひとつの目的は、老父の80歳の誕生日を祝うことでもある。
ところが、娘はその男友達と一緒に欧州に旅立ってしまう。
残された坊やと祖父との、やむなき付き合いが始まるわけで、
その間の出来事は、このドラマの行く末を暗示していて面白い。
そんな流れでラストシーンは、老夫婦だけが湖畔に立ち、
秋景色を眺めているところで幕。
美しく黄ばんだ森の景色が何やら暗示的だし、素晴らしい。
老人の無残な最期を表していないのが、またいい。
もっと素晴らしいのは、老妻の老夫への心遣いで、
いたわる様子が全編にみられることだ。
キャサリン・ヘップバーンがそんな賢明な妻を見事に演じている。
対して老いた夫は、偏屈で、へそ曲がりで、いつも渋い表情。
喜びなんぞ滅多に表さない。
ヘンリー・フォンダにうってつけの役柄だ。
地でいったとしか思えないが。
製作されたのは1981年で、翌年のアカデミーなど主演男優賞に輝くが、
授賞式にはジェーン・フォンダが代役を務めている。
不仲だった父子といわれたものだが。
そして、受賞した本人はその数ヵ月後、77歳で逝去した。
ともかく、邦題で『黄昏』となっているように、
人生のたそがれを重厚なタッチで描き出した映画だ。
人は誰しもたそがれを迎えるが、それがどんなものか想像できないし、
想像したくもないだろう。
しかし、避けては通れない。
その点、『黄昏』は最後の瞬間こそ写しださなかったけれども、
こんな場で人生の終焉を迎えられたらなあ、と思わせるに充分な名画であった。
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『黄昏』は私も封切りから何年かしてからビデオで観ましたが、自然の静けさの中でふと親子の葛藤がアタマを覗かせ、またすっと静けさに還るとてもいい映画でしたね。
それにしてもヘンリー・フオンダ ジェーン・フォンダ ピーター・フォンダという名優一家はすごいですね。
それぞれが一時代を背負う存在になったわけですから。
家庭生活でも互いの葛藤をあからさまに隠さなかった親子らしいですが、そこらに名優が育った秘密があったのでしょうか?
映画黄昏はそうした家庭生活に対するひとつの到達点として、ヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダが見せてくれた世界だったのではないか、と言ったらうがちすぎになるのかなあー。
知恵熱おやじ
2009/9/8(火) 午前 0:41 [ asa*ka* ]
知恵熱おやじさん おっしゃるとおり『黄昏』は、主演の父娘の長年の葛藤が雪解けになったのが象徴的に表されていますね。
演技とはいえ、父親の八十歳の誕生日祝いで、ジェーンがほころぶ笑顔を観ていたら、涙腺が緩くなりましたよ。
その翌年にヘンリー・フォンダは逝去したわけですが、それだけにこの作品はフォンダ一家にとり記念碑的なものになったことでしょう。
映画ってそういう裏面も頭に置きながら鑑賞できるわけで、そこがまた映画ファンにとっては、たまりません。
2009/9/8(火) 午後 1:06 [ eiji ]