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寒い季節、思い出すのは寒中水泳ならぬ寒中潜水だ。
若かった一時期、それに熱中したことがあったから。
最初に試みたのは、三浦半島の葉山にある磯だ。
その頃、潜ることでは無二の友人がおり、競って潜りあっていた。
それが冬になっても止まらず、ある年の冬、
度胸試しのように海に飛び込んだのだった。
水泳パンツ一丁で、水中銃を携えて。
そうして海にドボンと入ったはいいが、冷たさに息が詰まるほどだ。
体が硬直したとでも言えようか。
でも、競争心むき出しに少しは潜水した。
しかし、獲物を狙おうにも、魚も貝類も見当たらない。
上の画像のようにウツボだけは別で、海水の冷たさにお構いなし。
で、海中には長く居たたまれないので、数分で陸に上がってしまったが、
それならそれで体が火照るよう。
また、別の年の大晦日、下田の白浜近くの漁村に投宿していた。
件の友人に加え、彼が連れてきた山中毅氏と一緒だった。
競泳のクロールでは日本一とされた男だ。
で、その夜、漁船を出してもらい、沖で潜ってみようとなった。
目的は正月に備え、価値ある獲物を捕らえようというわけ。
ただし、素潜りではなく、ウエットスーツを着て、水中銃も握って。
さらに、水中ボンベを背負い、海中用の照明器具も備えて。
こうして沖のほうでドボンと入ったが、まずぼくがお手上げ。
ボンベの使い方が初心者で、マウスが口から外れてしまったからだ。
やむなく、というより慌てて戻り、小舟に揚がってしまった。
その情けないことと、寒さにふるえたことが忘れられない。
ところで、山中氏は石川県輪島の出身で、母親がプロの海女さんというから、
水泳だけでなく、潜水もお手のものだ。
そんな彼とぼくの潜り友達が後日、テレビに出たときは驚いた。
NHKの『私の秘密』というクイズ番組で、この二人が「冬の北海道で潜水」が答。
そこで回答者のひとり、作詞家の藤浦洸が「あんた、水泳の山中選手でしょ?」と指摘。
で、寒中潜水の感想を訊かれたら、ぼくの友人が、
「潜って見えたのはウニばかりでした」と答えたのは可笑しかった。
そんなこんなで、冬の海を眺めると、昔のことが思い出されてならない。
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