丑の戯言 栗田英二

体調不良につき、プロク゜投稿も途絶えがち

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 新潮社発行の月刊誌『波』を数年前から定期購読しており、毎月、新しい号が送られてくるのを楽しみにしている。

 2年ほど前から連載中の『高峰秀子の言葉』を読みたいからだ。

 著者は、高峰秀子の晩年、養女として迎えられた斎藤明美という元雑誌記者。

 タイトルのとおり、あの名優の発言を柱とする一種の伝記本だが、
 幾度その内容に感動させられたことだろうか。

 伝記本というと、生い立ちから成功に至るまでを体系的に著すのが一般的だが、
 この連載は題名に「…の言葉」が付されているように主人公の発言が柱になっている。

 一例を挙げると、連載22回で「私、その成れの果てです」をタイトルとしているように私的で、
 なおかつ気取りがない。

 その場面は、近所の魚屋に普段着で買い物に行った折、店の主人から
 「あそこに女優の高峰秀子さんが住んでいるんですよ。知ってました?」と言われたという。

 すると、ご本人は「私、その成れの果てです」と軽く応じたという。

 かつての大女優であれば、そんな言葉は出てこないだろう。

 そんな小さな逸話ひとつで、着飾らない、真っ正直の人間性が浮かび上がるではないか。

 「男の人は職場で見るに限ります」という発言も、うなづけるし、当人の結婚観を表している。

 よく知られるようにご本人は、脚本家で映画監督の松山善三と結婚したが、
 その流れでもある教えだし、一言でもあるようだ。

 この夫妻は『カルメン故郷に帰る』という木下恵介監督の名作で、主役と助監督という関係から知り合ったが、
 男を見る目は、鋭く、正しかったのだろう。

 このような一言々々がこれまで25回も続いた連載の、それぞれ見出しになつている。

 読ませてもらう側としては、2年余りも愉しんだし、感動させられたわけだ。

 いずれ連載が終わったところで単行本になるだろうが、それを手に取るときがまた楽しみだ。

 因みに、高峰秀子は2010年末、86歳で逝去している。

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