丑の戯言 栗田英二

体調不良につき、プロク゜投稿も途絶えがち

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 「ローストビーフの店 鎌倉山]の玉川支店へ初めて行った。

 身内同士の少人数の会食で、この店を選んだのだ。

 鎌倉と名付けたのは、鎌倉産の牛肉が売り物かと邪推したが、そうではなかった。

 別荘地として名高い鎌倉山に本店があり、高島屋百貨店が多摩川べりに進出したのに伴い、
 その食堂街に鎌倉山本店が支店を設けたというわけ。

 ともあれ、高島屋玉川店にある各種のレストランなどは、眺望が素晴らしい。

 眼下に多摩川が流れている景色に心が安らぐし、遠く富士山を望めることもある。

 ともかく、広々とした景観は、都会の雑踏から遠く離れた観があり、
 大袈裟に言えば、健全な食欲をやさしく刺激してくれるようだ。

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 さて、広々としたテーブルにメーンディッシュが運ばれてきた。
 
 なるほど、この店の目玉であるローストビーフの立派なこと!

 生焼きの牛肉のフィレがいかにも美味しそうだ。

 そのフィレ肉は、塩とコショウだけで生焼きにされており、いかにも食欲をそそる。

 小口に切り、口に放り込むと、牛肉の味わい深さに我が身が喜ぶ。

 サイドディッシュには新鮮な生野菜やら何やらが添えられており、
 それらが柔らか牛肉とうまく調和する。

 むろん、ローストビーフには赤ワインが付き物だ。
 その一本が忽ち空っぽになったのは、主従の調和がとれているからだろう。

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 そして、一息ついて見渡すのは、広々とした眺望だ。

 玉川高島屋は多摩川に近い所にあるだけに、その眺めは広々としており、
 見渡すと、いつものことながら心を慰められる。

 何も「ローストビーフの店」に限らず、このデパートの階上の各種レストランは、
 素晴らしい立地条件に恵まれていることを再認識する。

 少し離れた湘南からぼくが時折りここに来るのは、眺望が魅力だからでもある。

 食欲と景観を共に満たしてくれるひとときは、無上の幸せだ。

        (注:上掲の食卓は「ローストビーフ鎌倉山・玉川店」掲載の写真を拝借)

花咲蟹を初めて食して

 娘夫妻が北海道を旅してきたとは先日、当ブログで書いたが、
 追っかけ同地名産の蟹が宅急便で送られてきた。

 受け取って、びっくり!
 結構、重みがあるではないか。

 便の伝票に「花咲蟹」と記してあったので、中身はすぐに分かったが、
 こんなにずっしりとしているとは!

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 空けてみたら氷袋が入っていたので、その分、重いわけだが、
 それにしても大きな蟹には違いない。

 花咲蟹とは、名前こそ知っていたが、今までに食したことはなかった。
 それだけに楽しみが膨らむ。

 さっそく、その夜の食卓の主役にしたけれど、その大きいこと。

 それに甲羅の色が毒々しいほど赤いことにも、びっくり。

 手でひん剥くのは無理のようなので、キッチン鋏を取り出してきて、
 脚だの甲羅だのをジョキジョキ。

 ピンクがかった中身が現われ、いかにも食欲をそそる。


 さて、いただきましょう。

 あっ、それにはこの蟹を引き立ててくれるお酒がなくてはならない。

 折り良く数日前、広島在住の身内から日本酒が送られてきていた。
 同地の銘酒、「賀茂鶴」だ。

 やや辛口のこの清酒と花咲蟹は、ぴったりではないか!

 かくして独り黙々と食べ、飲み始めた。

 蟹のほうは、いかめしい面構えに似合わず、優しく、甘めの味で大満足。

 辛口の賀茂鶴がそれに調和する。


 猛暑の時節、素晴らしい贈り物であり、暑さ凌ぎにも、もってこいであった。
 月に一度か二度、昼食を摂りに行く店がある。

 自宅から近くの国道沿いにある「小田そば」という蕎麦屋だ。

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 店に入るや女主人が「いつものですね」と声をかけてくれるのが嬉しい。
 献立なんぞ見なくても、注文する品が決まっているのを覚えているのだ。

 ぼくが「コクン」とうなずくと、ややもして運ばれてくるのが「かき揚げ天せいろ」。

 この店でこれ以外の品を注文したことがないので、「いつもの……」というわけ。

 
 ところで、この店が気に入ったのは、店舗の構えが気に入ったからだ。

 純木造建築の和風で、飛騨地方でよく見られる合掌造りが心を惹く。
 いかにも和風蕎麦を売り物にしていることが分かるし、主の好みが現れている。

 一階だけでなく、二階も和風造りで、落ち着けるのも良い。

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ここに入ると、なぜ決まって「かき揚げ天せいろ」を注文するのか?

 野菜や魚介類を交えて、カラリと揚げられた天麩羅が何といっても魅力だ。

 それをつつきながら、蕎麦を口に放り込むと、えもいわれぬ調和を感じる。
 この取り合わせが、なんといっても好物なのだ。

 自分の自炊暮らしのなかで、揚げ物をなかなか作れないのも天麩羅を求める所以だろう。

 また、今のような暑い時季ではなく、寒い頃にになると、イッパイやりたくなる。
 そのときは迷わずに「お銚子、一本!」を注文する。

 熱燗のお酒と、かき揚げがなんとも美味しく調和するのが気分良い。

 夕暮れ後にこの店に入ったことはないが、足が向いたとすれば、
 お銚子一本では済まされず、杯を重ねることだろう。

 そんな日があってもいいような気がする昨今だ。
 湘南に移り住んでこのかた、春が訪れると、生シラスが楽しみになる。

 近くの鮮魚店でもスーパーでも廉価で買えるのは、ありがたいことで、
 時には料理店へも出向いて食す。

 そのひとつが鎌倉の稲村ガ崎の近くにある『湘海亭』だ。

 そこには各種のシラス料理があり、活きの良い素材を味わえる。

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 この日、注文したのは、「生シラス丼」と「生シラスかき揚げ」とビールだ。

 まず口をつけるのは「かき揚げ」で、この極小の魚が寄り添うような揚げ物。

 カラッとした味わいが大変良く、ビールの友としてもぴったり。

 次いで丼物に手をつける。
 ねっちりとした生シラスと御飯が相俟って食欲を促す。

 大食いの苦手なぼくにも、抵抗なく食べ尽くすのだった。

 それだけで何匹(何尾)のシラスをいただいたことになるのか、見当もつかない。

 極小の魚だけに数えようもないが、
 ともあれ、無数の魚の命を食べ尽くしたことになり、申し訳なさが頭をよぎる。


 そう、シラスといえば、どこでも釜揚げや天日干しなら年中、どこでも買える。

 ただし、生のままとなると、当地では3月下旬から解禁となり。界隈に出回る。

 極小の魚だけに"足が速く"、獲れた日から一日を過ぎると、生では食せなくなる。
 それだけに海辺に近い地区でしか入手できないだろう。


 その点、「湘海亭」は地元で獲れた魚介類専門の料理店で、鮮度は飛び切り高いと思われる。

 このような魚介類を日に10種類ほど仕入れるそうで、そのほとんどは地元産と思われる。

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 この店は、相模湾に面する国道134号に接しており、窓外の眺めは雄大な海原だ。

 視線を左に移すと、稲村ガ崎が広がっており、情緒豊かである。
 先日、蕎麦の名店『神田藪蕎麦』(かんだやぶそば)が全焼してしまった。

 あれから数日間、ぼくはその焼失を惜しむとともに、いろんな想いが蘇ってならなかった。

 新聞報道によると、同店は明治13年、つまり130年ほど前の創業で、
 このほど漏電によって失われた店舗は、関東大震災後の大正12年に建てられたそうだ。

 東京都の歴史的建造物に指定されてもいる。

 無論、古式豊かな純木造建築で、建て面積はかなり広いようだ。

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 それはともかくとしてぼくの私的な思い出は、この名店のすぐ近くで暮らしていた頃に遡る。

 30歳代になったばかりの頃だ。

 神田川の畔にある都営アパートが当時の住まいで、その10階の我が部屋から藪蕎麦を見下ろせた。

 ちょうど川向かいにこの店が建っていたのだ。

 そんな至近距離にあることと蕎麦好きが手伝って、そこへしばしば行くようになった。

 なんたって「これぞ本物の蕎麦だ」と感じたからでもある。

 板塀に囲まれた純和風建築で、一歩入ると時代が逆行するような錯覚に陥る。

 玄関を入ると、低い卓と椅子が並んだ食堂(?)が拡がっているのも心地良い。

 注文するのは、決まって「ざる蕎麦」で、たいがいお銚子も一本。

 蕎麦そのものは、ほっそりしていながら、コシが強く、上品な香りも。

 燗酒と良く調和するのも、そのためだろう。

 そうそう、店内の賄いさんたちの澄んだ掛け声も忘れられない。

 思い返すと、日本蕎麦に病みつきになったのは、この蕎麦屋が始まりだ。


 
 あの当時は、独身だったこともあり、藪蕎麦へ行くのは帰宅後の夜か、休日の昼間だった。

 会社勤めの疲れを癒すのに、恰好の店と言えただろう。

 あれから40年以上経つが、今でも時折、あの店に行きたいと思う。

 先日の不幸な火災で、しばらく休業せざるを得ないだろうが、数ヵ月後に再開するそうなので、
 そのときこそ遠路はるばる再訪しようと考えている。

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