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今回もファミリーレストラン〈藍屋〉で落ち合い、大いに飲み食いした。 お相手は一回り年長の先輩で、昔話に花を咲かせる。 集合場所を藍屋にしたのは、多摩川に近い世田谷区上野毛なのが好都合だから。 お互いに電車の便が良いのだ。 真っ昼間であろうが、じっくりと腰を据えて、 果てしなく飲んだり食べたりできるのも嬉しい。 落ち合うのは昼食時が引けてからなので、店内は空いている。 窓際の空いた席に陣取り、まずはビールで乾杯するのが通例だ。 ややもして料理が運び込まれる。 和食中心で、酒の肴にはもってこい。 この日、先輩は小冊子の写しを持参してくれた。 かの哲人、寺田寅彦が著した『天災と国防』の一部、「津波と人間」の項だ。 昭和8年に岩波新書から発刊されたもので、冒頭を抜き書きすると……。 「昭和8年3月3日の早朝、東北地方の太平洋岸に津波が襲来して、 沿岸の小都市村落を片っ端から薙ぎ倒し洗ひ流し、 さうして多数の人命と多額の財物を奪ひ去った」 あれから70数年後、またも東日本を津波が襲ったわけだが、 それを遡る明治27年にも同地方は同様の災害を受けている。 なんとも考えさせられる一文で、人間は愚を繰り返してもいる。 そんな話も交えて時を忘れ、話は延々と続くのだったが、 それとは別にいつも話題になるのは、もう一人の先輩のことだ。 この人を交えた3人で、数年前まで昼間の酒宴を繰り返していたからだ。 落ち合うのは、銀座通りをちょっと入った食堂兼居酒屋〈三州屋〉で、 心から楽しいひとときを過ごさせてもらった。 その集いは、彼が英国から一時帰国する春と秋で、20年ほど続いただろうか。 ところが3年前、彼は黄泉の国へ旅立ってしまった。 3人組のひとりが掛けたわけで、それでも場を移し、 2人だけの藍屋での酒宴を続けているのだ。 そんな集いがいつまでも続いてほしいと願うばかりである。
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