丑の戯言 栗田英二

体調不良につき、プロク゜投稿も途絶えがち

飲食

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 この店名〈天香回味〉は〈テン シャン フェイ ウェイ〉と読む。

 モンゴル語か中国語らしいけれど、いかにも美味しそうで、
 中国大陸の大地を感じるようでもある。

 過日、この料理店へ足を伸ばした。

 玉川高島屋SC店の最上階にあり、なかなかの盛況。

 食したのは〈天香回味鍋〉で、冬にはもってこいの鍋料理だ。

 同店のチラシから抽出すると、
 「この鍋はモンゴルの英雄チンギスハーンが考案したといわれ、
 数十種類もの天然の植物エキスから抽出したスープで食べます。

 スープは素材の味すべてを引き出したもので、タレを必要とせず、
 食材を煮るだけで、そのまま食べることができます。

 滋養強壮や美容に効果があり、胃もたれなど無縁の鍋料理です」とある。

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 上の画像で分かるようにタレの入った鍋は、右と左に分かれ、
 色の濃いほうは辛みかがっており、無色に近いほうはあっさり味。

 各種の緑黄野菜、茸類、にんにく、肉だんご、豆腐などが入っており、
 ぐつぐつと煮始めている。

 これに別注のズワイガニ、薄切りの牛肉と豚肉を投じ、
 しゃぶしゃぶ風に口に放り込むといった案配。

 やがて体中が温まってきて、滋養強壮なる効果が出始める。

 わが日本流のしゃぶしゃぶ鍋とはまた違った美味と満足感が得られる。

 そんなわけで、身内3人で酒類と共に満喫したのだった

 ぼくがこの店に来たのは、これで3回目。
 食べ終えて数ヵ月もしたらまた、となった次第。

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 気に入ったのは、眺望が素晴らしいことにも依る。

 ご存じ玉川高島屋は、雄大な多摩川に近接している。

 なので上階からその大河を見下ろせるのは、
 食欲増進ばかりか、日ごろの憂さも晴らしてくれるのだ。

ポンカンの到来物

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 突然のようにポンカンが到来した。

 今夏、奄美大島に旅した際に宿泊した旅館が送り主だ。

 南方系の柑橘類であることは知っていたが、口にした記憶はないように思う。

 さっそく、皮を剥いて試食したところ、さわやかな芳香を感じられた。

 内皮は薄く、そのまま口に放り込んでも抵抗がない。

 甘みはあっさりとしており、同じ仲間のミカンよりもを味わいが深い。


 この旅館(または民宿)については当プログで紹介したが、
 まさか地元の産物を贈ってくれるとは!

 所在地は島の住用町で、今秋、豪雨に襲われ、悲劇的な様相が報じられた。

 しかし、あんな豪雨でもポンカンはちゃんと育ったというわけか。

 宿のおばあさんと電話で話すと、豪雨のことはケロッとした様子。

 どうやら災禍を免れたようである。

 御歳83歳のこの人は、老いてなお健在で、客とのおしゃべりを楽しむ。

 ポンカンを送ってくれたのは、そのお礼だろうか。


 幸いこの柑橘類は長持ちしそうなので、正月の食卓を飾れるだろう。

 餅を食べ過ぎたり、酒を呑み過ぎたりしたら、きっと食べたくなるはずだ。

由比ヶ浜の中華料理店

 江ノ電の由比ヶ浜駅に隣接してこぢんまりした中華料理店がある。

 初めて立ち寄ったとき、田舎っぽくて入りづらかったけれど、
 その後、病みつきになった。

 外観はいかにも台湾風なのが気に入っている。

 店の名は〈豊龍〉で、中国式には〈FENG LONG〉。

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 その店の何に惹かれたかというと、外観がいかにも台湾風だからだ。

 駅と背中合わせなのも珍しく、それでいてのんびりしている。

 窓に垂れた古そうな木製カーテンも良く似合う。

 さて、この日まず頼んだのは、紹興酒。
 昼間ながらイッパイやりつつ中華風の肴でもつつこうというわけ。

 ついでに海鮮小盆なる一品も注文。

 こうしてひっそりと昼餐を楽しんだわけだが、
 店内を見回すと、台湾を思い出さずにおれない風情。

 「ここは台湾料理ですか?」と店のおばさんに尋ねたら、
 「うちは広東料理ですよ」とのこと。

 まあ、どっちでもいいや。

 ふと壁に貼ったポスターが「上海蟹あります」とある。
 そうか、秋も深まると、香港などでは上海蟹が出回るのを思い出した。

 あれは滅法、美味い。
 一匹3千円ほどというから、仲間と連れだって食べたい一品だ。

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 さて、呑み終わって注文したのは餃子。

 焼き餃子と相成ったが、本心は水餃子を食べたかった。

 というのもその昔、おふくろがよく作ってくれたのが水餃子だから。
 北京仕込みで、自ら手早く包み、熱湯にくぐらせて食べさせてくれたものだ。

 ともあれ、すっかり満腹して店を出たら、ちょうど電車がやってきた。
 店の裏の由比ヶ浜駅に入ってきたのだ。

 すばやくホームに上がれば間に合うだろうが、見送った。
 何も急ぐことはないから。

 むしろ線路沿いに歩いて次の駅まででも散歩しよう。
 腹ごなしにちょうどいいから。
 昨今、やたらに蕎麦を食べたくなる。
 言うまでもなく新蕎麦が出回る時期だから。

 今秋も一度や二度は蕎麦屋の門をくぐったけれど、
 まだ満たされたわけではない。

 そこで「蕎麦を食うならあそこへ」と思っている店へ行った。

 鎌倉山のひっそりとした林の中に佇む〈檑亭(らいてい)〉へ。

 家からクルマで10分余りの距離だから、遠出とは言えない。

 でも、そこに着くや幽玄の世界に迷い込んだ気になれる。

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 古風な山門をくぐり、山道を下ったり登ったりすると、
 やっと本館の下に出る。

 木造2階建てで、蕎麦、会席料理、一品料理を供する場だ。

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 定席に着くや熱燗と天麩羅蕎麦を注文。

 この窓際の席は、眺めが素晴らしい。
 山の上だけあって眺望が効くのだ。

 遠くは箱根連山を望み、右側に富士山が浮かびあがる。
 もっとも、この日は薄曇りなので、影絵のようにしか見えないが。

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 そうした窓外をぽんやり眺めていめうちに蕎麦が運ばれてくる。

 竹製の蒸籠(せいろ)に盛られているので食欲を刺激する。
 蕎麦は太めで、だからこそ新蕎麦の香りが立ち昇ってくるようだ。

 こうして腹も満たされ外へ出ると、心なし風がひんやり。
 山の上にいることを思い出させるのだ。

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 広い庭園をぶらつくと、次々に石像など古びた置き物が目に入る。

 いずれも数百年前に制作されたもののようで、
 九州を始めとして遠方から運び込まれたと記されている。

 この広大な庭園を誰が設計し建設したか、知らないが、
 基本的には日本古来の在りようを基本にしているようである。

 また、春夏秋冬さまざまな樹木や草が花を咲かせるそうで、
 いっそう風雅な佇まいになるだろう。

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 いつも立ち止まって、しげしげと眺めるのが上の物体だ。

 古びた桶のような物に清水が湛えられており、
 約5百万年も昔の栢(かや)の木の化石だそうだ。

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 その後ろにはまた、目を引く個性的な建物がある。

 庭内では最も高い位置に建てられた〈八角堂〉で、
 法隆寺の夢殿を模して造られたと看板に記されている。

 その他、仏像やら何やらの像が数限りなく目に入る。

 そんなこんなで、この広い庭をぶらつくだけで、
 別世界に迷い込んだようである。


 蛇足だが、檑亭には私的な思い出がある。

 11年ほど前、母が亡くなって鎌倉霊園に納骨しての帰り際、
 一族そろってここに寄ったのだった。

 初めて檑亭に入ったのはそのときで、
 2階の宴会場に陣取り、会席料理を満喫した。

 そんなことがあったものだから、元気でいる限り折々、
 ここに足を運びたいと願っている。

ヒマラヤ岩塩の贈物

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 口に入る塩には妙に愛着があるとは、以前にも書いた。

 沖縄の宮古島で買った〈雪の塩〉や、最寄りの薬局で見付けた越後岩船産〈塩の花〉が、
 近来の収穫というわけ。



 そんな嗜好を知ってか知らずか〈ヒマラヤの岩塩〉なる一品を頂戴した。

 マレーシア領に永住している知人から贈られたものだ。

 どうやらネパールの産物と思われるが、ただものではない。


 40億年もの大昔、ヒマラヤ山脈の地殻変動で海水が陸に閉じ込められ、
 塩湖になったのが始まり。

 その塩湖の水分が蒸発し濃縮されて結晶し、
 3億8千万年の昔から岩塩層が形成されたとか。

 そんな岩塩がヒマラヤ山脈の周辺で採掘され、販売されるようになったらしい。


 それが流れ流れて我が家に辿り着いたわけで、
 〈HIMALAYA LOCK SALT〉と記された袋には、桃色がかった塩がずっしり。

 さっそく、ぺろぺろ舐めてみたら、塩辛いのは他の塩と同様。

 一般の食塩との違いはよく分からないが、
 上記のような謂われを予備知識に入れていたせいか、ありがたみが感じられた。

 この岩塩に限らないけど、食塩は化学的に精製されたものよりも天然に限る。

 それでこそ小さな料理、例えば魚の塩焼きや焼き鳥、
 さらにはカレールーの隠し味などに旨味を出せるようである。

 秋が深まると、寄せ鍋やチリ鍋が食卓を飾るようになるが、
 この種の鍋物にも塩は欠かせない。

 濃淡を加減しつつ、あれこれ塩の味わいを楽しむのも一興だ。

 ある高級料理店で「当店はヒマラヤ岩塩を使っております」との貼り紙を見たのも、
 この塩への興味をそそられていた。


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