丑の戯言 栗田英二

体調不良につき、プロク゜投稿も途絶えがち

読書

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全7ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7]

[ 前のページ ]

 4月だ! 読書の春到来!(という常套句はないけれど)
 このところ偶々、共通性のある本を2冊読んだ。
 『名作写真と歩く、昭和の東京』(川本三郎著、平凡社刊)と、
 『ぼくの昔の東京生活』(赤瀬川原平著、筑摩書房刊)だ。

 別に意識したわけではないが、題名に「東京」と名の付く本を、
 つづけざまに読んだことになり、共に心が震えるようであった。

 前者は解説入りの写真集のようなもので、
 昭和20年代から30年代を中心にした東京の風物がモノクロで描かれている。
 東京で50年以上も暮らした者にとっては、懐かしいったらありはしない。
 戦後焼け野原の時代から復興〜再開発〜バブル景気の流れが、
 木村伊兵衛や土門拳を始めとする名カメラマンの作品によって語られている。
 それを昭和19年生まれの評論家、川本三郎が正確な添え書きを付けている。
 
 さっと見ただけで、「東京ってこんなに変わったんだなあ」と思わせる。
 平べったかったこの大都市の昔に郷愁を覚えると同時に、
 「いまの東京はこれでよいのか」とも痛感させられる。
 無色の写真だけれど、いかにも澄み切った青空が広がっているようで、
 汚染された近年の空は、そのなれの果てに感じられて哀しい。
 解説文のなかには「焼け跡闇市」「マーケット」という言葉が散見されるが、
 もはや、この実体を知る人たちは少ないだろう。

 後者の『ぼくの昔の東京生活』は、いわば随筆集だ。
 本の帯に「昭和30年、ぼくは東京に出てきた。サンドイッチマン、
 装飾屋の文字描きなどのアルバイトをしながら、芸術を志していた。
 貧しくも濃密な生活を描くしみじみエッセイ」とある。

 昭和12年生まれの赤瀬川原平は、いまでこそ分筆で大をなしているが、
 上京したてのころは、画学生として貧困を極めていたらしい。
 その当時の様子が、氏独特のユーモアを交えて書かれており、
 同年代の者にとっては、身に覚えがあるか、身につまされる話が多い。
 それだけに、いまの世の中との変わり様を実感させられる。
 苦学生なんて単語はほとんど聞かれなくなったが、
 つい数十年前は苦学していた若人がたくさんいたんだと改めて知らされる。

 この2冊を呼んだあと、
 「現在は果たして幸せなんだろうか」と考え直させられた。
 物心両面に恵まれたようにみえるこの世の中、そして、この東京は、
 逆に混迷の時代にあるといっていいのではないか。

 ちょうど東京都知事選のレースが始まった。
 自分は今、神奈川県人だけど、この行く末も気にかかる。
 
 

速読家と遅読家

 書店で『速読の極意』なんて本を見受けることがある。
 こんな題名の本は実際にはないかもしれないが、この種の本が著されているのは、
 遅読の人間がたくさん存在していて「速く読めたらいいなあ」と願ったり、
 のろま読みの自分に劣等感を抱いているからだろう。

 書評家や読書を一種の仕事としている人が「月に20冊以上は読みます」
 などと発言するのを聞くと、恐れおののいてしまう。
 果たして一日に何時間、読書に充てているのだろうかとか、
 どういう読み方をしているのだろうかなどと疑いつつも。

 ぼくは遅読家(こういう言葉があるかどうかはともかく)である。
 幼いころから本でも雑誌でも新聞でも、読むのが好きだった。
 だけど、そのころから自覚していたのは、他人より読むのが遅いということ。
 明らかに遅いのだ。食いついたら離れないみたいに。

 頭の回転が鈍いからか、ほかに気を取られているからか、
 それとも文章を味わいすぎるからか、いろいろ思い悩んでいる。
 悩むだけで、いっこうに速読できやしない。

 読むのが遅いのは、一字一句見逃したくないからだと気が付いたのは、
 ずっとおとなになってからだった。
 上手下手は別として、文章を出来るだけ味わいたいからだとも気が付いた。
 それだからか、気に入った箇所を読み直してしまったりする。
 心に触れた用語使いやフレーズを記憶しておこうと思ったりもする。
 そんな楽しみを棚上げして一気呵成に読みきってしまうのは、無理な相談だ。
 かくして一冊の単行本を読了するには2日や3日では済まなくなる。
 でも、自分の習性を直そうなんて気持ちにはとてもなれない。
 
 それはともかく、モノを読むことに関して前から気になっていることがある。
 知合いに大秀才の先輩がいて、この人は「一度読んだことは2年間は忘れないね」
 と話してくれた。
 旧制の一中、一高を出て、東大法学部では金時計を授与されたというこの人、
 どんな読書術を駆使しているのだろうか。
 知りたくても訊けなかったけれど、記憶術にも驚嘆したものだ。
 ただ、速読したら細部まで記憶するわけにはゆかないだろうと推察した。
 ぼくと同じ遅読家にちがいないと勝手に決め込んで自らを慰めるのだった。

 速読か、遅読かは、遺伝によるものかなと思うこともある。
 むろん、明確な答えは見出せないが、ぼくの姉はびっくりするほど速読家だ。
 図書館で一抱えも本を借りてきて、アレッと思う間に読破してしまう。
 まるでページを食べるようにして読んでいる姿を見たこともある。
 もう他界してしまったが、兄弟のよしみで「なぜ、そんなに速く読めるの?」と
 単刀直入に訊いておけばよかったと思うきょうこのごろだ。
 速読みと遅読みが遺伝でないことを証明するためにも。

全7ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7]

[ 前のページ ]


.
eiji
eiji
男性 / A型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Yahoo!からのお知らせ

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン
ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事