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4月だ! 読書の春到来!(という常套句はないけれど)
このところ偶々、共通性のある本を2冊読んだ。
『名作写真と歩く、昭和の東京』(川本三郎著、平凡社刊)と、
『ぼくの昔の東京生活』(赤瀬川原平著、筑摩書房刊)だ。
別に意識したわけではないが、題名に「東京」と名の付く本を、
つづけざまに読んだことになり、共に心が震えるようであった。
前者は解説入りの写真集のようなもので、
昭和20年代から30年代を中心にした東京の風物がモノクロで描かれている。
東京で50年以上も暮らした者にとっては、懐かしいったらありはしない。
戦後焼け野原の時代から復興〜再開発〜バブル景気の流れが、
木村伊兵衛や土門拳を始めとする名カメラマンの作品によって語られている。
それを昭和19年生まれの評論家、川本三郎が正確な添え書きを付けている。
さっと見ただけで、「東京ってこんなに変わったんだなあ」と思わせる。
平べったかったこの大都市の昔に郷愁を覚えると同時に、
「いまの東京はこれでよいのか」とも痛感させられる。
無色の写真だけれど、いかにも澄み切った青空が広がっているようで、
汚染された近年の空は、そのなれの果てに感じられて哀しい。
解説文のなかには「焼け跡闇市」「マーケット」という言葉が散見されるが、
もはや、この実体を知る人たちは少ないだろう。
後者の『ぼくの昔の東京生活』は、いわば随筆集だ。
本の帯に「昭和30年、ぼくは東京に出てきた。サンドイッチマン、
装飾屋の文字描きなどのアルバイトをしながら、芸術を志していた。
貧しくも濃密な生活を描くしみじみエッセイ」とある。
昭和12年生まれの赤瀬川原平は、いまでこそ分筆で大をなしているが、
上京したてのころは、画学生として貧困を極めていたらしい。
その当時の様子が、氏独特のユーモアを交えて書かれており、
同年代の者にとっては、身に覚えがあるか、身につまされる話が多い。
それだけに、いまの世の中との変わり様を実感させられる。
苦学生なんて単語はほとんど聞かれなくなったが、
つい数十年前は苦学していた若人がたくさんいたんだと改めて知らされる。
この2冊を呼んだあと、
「現在は果たして幸せなんだろうか」と考え直させられた。
物心両面に恵まれたようにみえるこの世の中、そして、この東京は、
逆に混迷の時代にあるといっていいのではないか。
ちょうど東京都知事選のレースが始まった。
自分は今、神奈川県人だけど、この行く末も気にかかる。
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