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<オーストラリア北部沖の海に生息するウスイロイルカが新種と判明した。>
哺乳類の新種の発見は、非常に珍しいということになるが、今回の発見は、誰も見たことの無い新種を発見したというのではない。オーストラリア北部沖にウスイロイルカが生息していることは、よく知られていることなのだ。つまり、今まで知られていたイルカが、新種であると断定されたということだ。
ウスイロイルカの分類は、何十年もの間専門家の間で論争が続いてきた。今回、その論争に決着を付けるために大規模な調査研究が行われ、新種の発見、いや、新種の認定となったのだ。
新種の認定の大きな鍵となったのが、遺伝子解析だ。この新技術により、何十年もの論争に決着が付いた。遺伝子解析という手法により当分の間は新種の発見や、その逆に、今まで別種と思われていたものが同一種であったなどのニュースが続くのかもしれない。
以下、ニュース 一部、フォントを変えてある。
豪沖のウスイロイルカ、新種と判明
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 10月30日(水)18時52分配信
オーストラリア北部沖の海に生息するウスイロイルカが新種と判明した。
ウスイロイルカ属の分類については、海洋哺乳類の専門家の間で何十年も論争が続いている。その決着をつけるために、非営利の自然保護団体「野生生物保護協会(WCS)」が大規模な調査に取り組んだ結果、今回の新種発見に至った。
WCSで大型海洋生物の研究プログラムを率いるハワード・ローゼンバウム氏は、「2種から始まって4種説まで、何年も前から研究者の意見が割れていた」と話す。
しかし、確かな結論に至る十分な根拠は存在しなかった。およそ10年前、「追加情報が手に入るまでは、“アフリカウスイロイルカ(学名:Sousa teuszii)”と“シナウスイロイルカ(学名:Sousa chinensis)”の2種のみを独立種として認定する」と学会が決定。
◆新たな知見
ローゼンバウム氏らのチームは、長く続く論争をあらためて問い直そうと、アフリカ西部やインド洋、太平洋、オーストラリア沖など、世界各地に分布するさまざまなウスイロイルカ属を対象に、個体と遺伝子両方のサンプル収集を開始した。
「独立した種として海洋哺乳類の学会が認定するには、少なくとも2種類の証拠が必要となる」。
論争に終止符を打つため、研究チームは、可能な限り包括的なデータセットを集めようとした。通常、新種発見に向けた遺伝子分析では、「細胞のバッテリー」ミトコンドリアから取得したDNAだけが対象となる。
WCSでラテンアメリカおよびカリブ海プログラムの副代表を務めるマルティン・メンデス(Martin Mendez)氏は、「母親だけから受け継がれるミトコンドリアDNAは、細胞核のDNAよりも扱いやすい」と話す。
しかし、確定的な証拠を得るため、WCSの研究チームは、ミトコンドリアと細胞核の両方からDNAを抽出。「クチバシの長さ」や「歯の数、歯の位置」といった個体の特徴と組み合わせて、「2種ではなく、4種に分類できる」と結論付けた。
4種のうち3種は、以前にも提案されている分類法に則っている。アフリカ西部沖の「アフリカウスイロイルカ」、インド洋中西部の「ウスイロイルカ(学名:Sousa plumbea)」、インド洋東部から太平洋西部に分布する「シナウスイロイルカ」だ。
「 “第4の種”として独立した種と確認できたのは、オーストラリア北部沖のイルカだ。やっと決着したかと思うとほっとしたよ」と、WCSのローゼンバウム氏は話す。まだ学名は決まっていないという。
WCSのメンデス氏は、「新種ではあるが、それほど“新発見”という感じではない。オーストラリアに生息していることは誰もが知っている。独立種と分類されていなかっただけだ」と話す。
メンデス氏によると、哺乳類の新種発見は非常に珍しいケースだが、現代の遺伝子分析技術の発達を考えればそれほど驚く話ではないという。
「遺伝子解析という新しい“道具”が手に入ったおかげで、種の分類というやっかいな問題に突破口が生まれた」。
◆保護に向けて
メンデス氏は、「今回の発見は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストの精緻化に貢献するだろう」と評価している。現時点では、アフリカウスイロイルカは絶滅危惧II類(危急)に、シナウスイロイルカは準絶滅危惧(NT)に分類されている。
このように、絶滅危惧種の保護に向けた法的枠組みは、種の分類を前提としている。「したがって、新たな独立種の判明は適切な保護戦略の策定に大きな意味を持つ」。
WCSのローゼンバウム氏は、「漁獲対象以外の生物を捕らえる混獲で、大量のイルカが毎年犠牲になっており、ウスイロイルカは特に影響を受けやすい。また、イルカ漁が盛んな地域さえある」と危惧している。
「正確な分類が適切な保護措置を各国が導入するきっかけとなり、混獲の減少につながるよう望んでいる」。
今回の研究結果は、「Molecular Ecology」誌オンライン版に10月29日付で掲載されている。
Jane J. Lee, for National Geographic News
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