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物足りなさを感じた第45回スーパーボウル
グリーンベイ・パッカーズがNFL45代チャンピオンに輝いた。
ビンス・ロンバルディ杯の奪還、NFL唯一の市民球団、NFC第6シードから快進撃と話題は尽きない。
でも、なぜか今回のスーパーボウルはここ10年で最も見応えのないゲームに感じたのは、思い過ごしだろうか。
31対25というスコアだけで考えれば、“ナイスゲーム”と言いたいのだが、例年のような心臓に鳥肌がたつような感慨はなかった。
勝者と敗者の間にあったもの
勝負を分けたもの。
このゲームにかんしては、100人中90人以上が「ターンオーバー」と考えるでしょう。
異論なし。
むしろ正解中の正解だと思う。
アメフトという競技でターンオーバーが3(スティーラーズ)対0(パッカーズ)という数字は、何事にも変えがたい意味を持つ。
ターンオーバーを相手より3つも多く喫して、勝利を手にすることは皆無と言っても過言ではない。
チャンピオン決定戦という超ハイレベルで実力も均衡している中ではことさらである。
じゃあ、「ターンオーバー数が同じ、もしくはひとつふたつ差くらいなら勝者は変わっていたのか(得点差から考えて)」と考える。
“たら、れば”の話は意味がないしきりがない。
事実スティーラーズは2つのインターセプトと1ファンブルを喫したのだから。
それでも無理から想像する。
私は、もしターンオーバーというファクターがなくとも、パッカーズが勝利していたと思う。
このゲームの勝敗を分けたものは、もっと目に見えづらい、数字では表れないものだったのはないか。
それは3つのターンオーバーを喫したスティーラーズオフェンス陣(褒められたものではないがその程度の実力だったようにも感じる)ではなく、ディフェンス陣である。
スティーラーズの強み・恐さとは
スティーラーズディフェンスは名実とも現在NFLナンバーワンである。
それはNFLファンなら皆知っているし、スタッツにも表れている。
だがスティーラーズと同等の、レイブンズ、ジェッツ、ベアーズ、パッカーズ、ジャイアンツ、ファルコンズのように優れた守備力を持つチームは多い。
それでもなぜ、スティーラーズディフェンスが最強なのか。
それは、このチームだけがもつ「凶暴性」にある。
彼らは、OLBのジェイムズ・ハリソンやSSトロイ・ポラマルを中心とした11匹の獣たちの群れだ。
相手オフェンス選手、特にQBやRBというボールを持つ選手の「心を折る」。
これが彼らの最大のミッションなのである。
「心を折る」とはどういう意味なのか。
簡単に言ってしまえば「敵に恐怖心を植えつける」。
というか、そんなことが容易にできるのか?
でも彼らはそれを遂行してきたからこそ、最も恐れられているのだ。
特にQBはオフェンス頭脳の中枢である。
QBの頭の中に「恐怖心」というウィルスを植えつければ、そのチームのオフェンスは間違いなく崩壊する。
それが例え有能な頭脳であっても、そのウィルスに冒されればひとたまりもない。
実際NFLのQBは、試合前日からその恐怖心苛まれ眠れないらしい。
事実、スティーラーズはスーパーボウルに勝ち上がってくるまで、多くのQBやRBの頭脳や心を破壊してきた。
野獣たちからエースを守り続けたいぶし銀たち
では、なぜスーパーボウルでスティーラーズディフェンスは、パッカーズQBロジャーズに恐怖心というウィルスを植え付けることができなかったのか。
MVPを取ったロジャーズの精神力が強靭であったことは言うまでもない。
彼の成長なしに今回のスーパー制覇は語れない。
でもそれ以上に彼のハートと頭脳を守り続けたオフェンスライン、そして四方から襲い掛かるスティーラーズのブリッツをピック(ブロック)し続けたRB陣たちが、パッカーズのスーパーボウル制覇の立役者だった。
この試合の勝負を分けたもの、それは間違いなくパッカーズの「パスプロテクション」。
彼らは、ゲームを通して名前を呼ばれることすらない。
そして中継(1ショット)で映されることもない。
もし紹介されるようなことがあれば、彼らがミスをしてQBがサックされたり、怪我をしたときだ。
そして、彼らがヒーローになることは絶対と言っていいほどない。
つくづく損な役回りである。
どんな競技でも、強いチームには素晴らしい「汚れ役」や「影の職人」がいる。
このスーパーボウルでは「最強・最凶・最狂」のスティーラーズディフェンス陣から、自軍のエース(QBロジャーズ)を守りぬいたパッカーズオフェンスライン陣にもっと賞賛の声があってしかるべきだと思う。
ちなみに昨年のパッカーズの被サック数は31(リーグ30位)という散々なものだった。
この1年で最も成長したのはオフェンスライン陣なのかもしれない。
ロジャーズはこの試合で3度もサックを受けた。
この数字は決して少なくない。
だが、そのどれもロジャーズの心を折るほどのものではなかった。
しかもひとつ目が、後半の第3Q残り9分という、かなり遅い時間帯である。
それまで(36分の間)にロジャーズは完全な自信を獲得していた。
そして、60分を通して1度も心が折られることはなかったのだ。
パッカーズが他の31チームより優れていたもの
もうひとつパッカーズの勝因を挙げれば、彼らのチーム力と結束力である。
この試合でもオフェンスのキャプテンWRドライバーとプロボウルCBウッドソンが怪我で試合途中に退いた。
かなりの戦力ダウンになる、はずだった。
しかし、そうはならなかった。
2人のベテランはサイドラインでチームメイトを鼓舞し続け、支持を出し続けた。
本来なら、こういう大舞台で怪我によって退く選手は、その無念さで心ここにあらずというケースも少なくない。
ドライバーに関してはゲーム序盤早々に怪我をしたのに、最後までショルダーパットを外さなかった(フィールドに出られない選手はつけていても意味がないので外すのが普通)。
彼は足にギブスをつけながらも「最後まで俺はオマエたちと一緒に闘っているぞ」という意思をチームメイトに伝えていたのではないだろうか。
こういう姿勢が若い選手のハートに火をつけ、交代選手もそれを粋に感じずにいられなかった。
もうひとつ、パッカーズがNFLの定説を覆したことがある。
NFLで勝ち残る(優勝する)には、怪我人がでないことが絶対条件と言われる。
しかし、今季のパッカーズはシーズン中から怪我人が続出した。
そしてスーパーボウルでも中心選手が相次いで怪我をした。
それでも、日替わりヒーロー、多くのシンデレラボーイやラッキーボーイがその都度出てきた。
しかも無名の選手やドラフト下位指名の新人選手が活躍。
なんか、昨年のロッテ・マリーンズを思い出す。
アップセットの連続という意味でも似ている(パリーグ3位から日本一)。
サッカーアジアカップを制した日本代表のかぶる部分が多い。
共通するのは、怪我人が出ても、他の選手がレギュラー選手に勝るとも劣らないプレイで貢献したことだ。
お互いが100%の力を発揮したスーパーであってほしかった
最初に書いた、この試合がなぜ凡戦に感じたか。
スティーラーズは「らしさ」をみせられずに終わったこと、パッカーズは「らしさ」どころか実力以上のものをみせつけたことにあるような気がする。
パッカーズはチャンピオンに相応しいチームだった。
でも、どうせなら強くて「らしい」スティーラーズを倒してのものであってほしかった。
大舞台では体力・知力・気力どれがもっとも大事なの?
結局最後まで戦術やプレイをそっちのけで、精神的な部分やメンタル面ばかりピックアップしてしまった。
戦術的なところを少し言えば、スティーラーズは最初からランでゴリゴリやってれば(それがこのチームの伝統でもある)、何の苦もなく勝利していたのでは?
わざわざ派手なショットガンやノーバックのようなフォーメーションを繰り返すのは、自分たちの長所を消してしまったような気がしてならない。
最後の明暗を分けるのはやはり気力
で、結局のところ、毎年勝負を分けるあやは、勝利への貪欲さであったり執着心であったりするんですよね。
20年近くアメフトファンをしているが、最終的にはここに落ち着いてしまう……
それくらい、近年のNFLは戦力が均衡している。
実力的に、20チームくらいには優勝の可能性を秘めている。
それにしても、あのスティーラーズがメンタル合戦で負けるとは思わなかった。
ここ5年で3度目のスーパー進出。
しかも、今回を除く2回がチャンピオン獲得。
自分たちでは気付かないくらいの慢心があったり、勝利への執着心が薄れていた部分があったような気がしてならない。
アメフトとは「準備のスポーツ」とも言われる。
パッカーズは「準備力」という意味でもスティーラーズを上回っていた。
長々やったのに薄っぺらい……
今回はこれでおわり。
でも、今季のNFLは非常に充実したシーズンであった。
次回にて。
そして、日本のアメフト中継・放送についても考えたい。
今回観ていた視聴者の気持ちを代弁できるとまでは思っていないが、ちょっと救いようがないものだった。
日本のスポーツ報道や中継は本当にあれでいいのだろうか。
作り手の自己満足やエンターテイメント性だけ追求してしまう姿勢が残念に思えてならない。
第45代チャンピオンは
人口10万の小さな町にあり
そんな朴訥さ表現したような緑と黄色の地味なユニホーム
NFLで唯一特定のオーナーを持たない市民チーム
チームと市民の距離がもっとも近く
下町情緒あふれるホームスタジアム(ランボーフィールド)
20年近く君臨し続けた英雄(ブレッド・ファーブ)から新たな英雄が誕生
NFL随一の伝統と格式があり(初代スーパーボウル優勝チーム)
チームに和と温かみがある
攻守のバランスがもっともとれたチーム
今年のチャンピオン、グリーンベイ・パッカーズは、そんな誰からも愛されるチームだ。
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