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作家の津島好一は、進まぬ筆に悩んでいた。
新作のテーマは、鹿鳴館―誰もがその名を知っている建築物。
調べてみると資料が極端に少なく、設計図さえまともに残っていない。
鹿鳴館は謎に包まれたまま建造され、その謎をまとったまま歴史から消えた建物と言えようか。
しかし津島は、ある人物との邂逅をきっかけに、堰を切ったように物語を紡ぎ出し始める。
明治十年、
日本政府に雇い入れられた若き英国人建築家―のちの鹿鳴館建造担当者―ジョサイア・コンドルは、
横浜港に降り立ち、外務卿井上馨らと対面する。
工部大学校造家学科教授兼工部省営繕局顧問としてのコンドルの多忙な日々が始まった。
日本趣味の昂じたコンドルは画家河鍋暁斎に弟子入りし、「暁英」という雅号をもらう。
一方でコンドルは、来日の仲介をした国際商社ジャーデン・マセソン社から、ある密命を帯びていた。
それは、銀座煉瓦街の設計を担当した後に忽然と姿を消した、
ウォートルスというアイルランド人建築技術者の消息を調べることだった。
コンドルはやがて、時代が大きく動く際に必然的に生じる、濃くて深い闇の中に、
自分が足を踏み入れてしまったことを知る―。
鹿鳴館とは、何だったのか。
そして明治とは、果たして何だったのか。 (内容「BOOK」データベースより)
今年の1月にお亡くなりになられた北森さんの最後の作品です。
北森さんの新しい作品が読めないと思うと悲しいですね。
もっともっと読みたいと思ってしまうほど素晴らしかったこの作品。
未完のままというのは残念なのですが、北森さんの残された最後の謎ということで一生の宿題にします。
明治と言えば、というほど代表的な「鹿鳴館」(え?違う?^^;)。
華やかな印象があるのですが、実際は闇を含んだ建物だったのですね。
どこまでが史実かどうかは分からないのですが、“連日ダンスパーティin鹿鳴館”(by中学の先生)というのを
記憶に植えつけられた私には衝撃を受けることばかりでした。
そもそも鹿鳴館ってすぐに取り壊されているんですよね。
巨額を投じて作られた建物なのに。
おまけにその設計図がないなんて。
ただの無駄遣いとしか思えないこの建物に一体どんな謎が秘められていたのか?
正直、最初は読みにくかったです^^;
一番困ったのは鹿鳴館を建てたといわれるジョサイア・コンドルの教え子たちの区別がつかなかったこと。
佐立だけはちょっと雰囲気が違ったのですぐに区別できたのですが、残りはさっぱり^^;
それから西郷どんたちの動きについてもちょっとゴチャゴチャ難しかったです(頑張れ、私!)
試験勉強のための言葉としては覚えているのですが、どういうことなのか、深くは知りませんでした。
田原坂のことなんて地元なのに(肝試しで何度も行った^^;;;)、そうなの?!ということばかり。
こうやって本で歴史を学べたらほーんと楽しくて身が入るのになぁ^^
コンドルは当時では珍しい純粋な日本贔屓の外国人でした。
他の方は日本を下に見ている節があり、嫌な方ばかりでしたけど(ベルツは除く)。
それに端々には北森さんお得意の美味しそうなブツがちょこちょこ出てきて
それを美味しそうに食べるコンドルの姿はとても見ていて微笑ましかったです。
そんな好印象のコンドルですがあらすじにもある通り、密命を帯びています(“帯びる”って言うんだ!)。
単なる日本へと招かれた講師ではないし、日本のために役に立つ建築家でもない。
いや、表向きはそうなのですが、実際は薄暗いものも隠し持っていたわけですね。
井上馨との繋がりも明るいものかと思いきや、何となしに微妙な空気。
弟子である学生たちに対しても「間者?」と疑いの目を向けなければならない。
のほほんと暮らしている私から見ると息が詰まりそうな生活ですね。
時代が時代なだけにどんな人でも緊張感があったのかも。
明治って近い時代だと思っていましたが、こうやって見ると現代からは程遠いですね。
それから日本史にも出てくる有名な外国人の方々、ベルツ医師やグラバー。
グラバーはグラバー邸でお馴染みなのですがそんな人なんだー!と思わされるほど
黒〜〜〜〜〜〜い人でした。
本当かどうかは分かりませんけど、かなりショックだった^^;;
グラバー邸も「まぁキレイ」と素直に思っていたのですが、実際グラバーは皮肉で作ったんでしょ?
今度行ったときには違う思いで見てしまいそうです。
逆にベルツ医師は申し訳ないくらいお名前しか知らなかったのですが、何ともいい人でしたね。
その腕もですが、心理的にもコンドルの心強い味方でした。
またコンドルが弟子入りを志願した暁斎、彼も独特の性格で良かったです。
豪傑のように見えて実は繊細。
実在の人物か分からないのですが(知らないのは恥ずかしいのかしら^^;;;)、
彼の絵は見てみたいものです。
ここまででも濃密な世界が描かれているんですから、きっとラストも素晴らしかったのだと思います。
とてもとても残念なのですが、ここまででも読めて良かった。
それにまだ読んでいない北森さんの作品もあるし!!
じっくり味わいながら未読作品も楽しみたいと思います。
あー、でもやっぱり悲しい。。。
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北森鴻
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