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2005年10月26日
「何かつかんだ」。。。そう思った最後のクレーから10日が過ぎた。
その間何度か雨が降り、風が吹いた。
自営業やっていると、忙しいときとヒマなときの差が結構ある。
そして今日は午後イチの1件往診が終わると、夕方の往診まで時間があった。天気もすごくいい。
「今しかない、行くなら今だ」
そう思って射撃場へ出かけることにした。
猟銃所持許可証をポケットにいれて、散弾銃を往診車に突っ込んで、街をぬって車を走らせているとスゴク不思議な気分になる。自分の住んでいる場所が、鉄砲だの射撃場だのぶっぱなつだの結構こんなことをヤラセテもらえる国だなんて、今まで思わなかった。持っちゃいけない国だと自然に思っていた。それが、すぐ隣りに実銃を携帯して、こうして車を走らせている。何だかにわかには信じがたい。手続きに手間はかかったけど、「持つ、持たない」の選択の自由が日本にはある。なんだか自分の住むところがイイ国に思えてきた。
猟銃等取扱読本にはこう書かれている。
「猟銃等を所持する方には、厳しい条件の中から特別に許可された者であるとの誇りと、社会に対する責任を自覚するとともに、十分な練習を積み、射撃技術の向上に努めていただきたい」
プライド持て。。。か。そうだな、そうかもしれない。とりあえず、他のくるまに道を譲ろう。あ、おばちゃん、駐車場から出てきたいんスか、いいっスよ。入って入って(ぷ、プライドなのかっ!?)。
おほん。さて、射撃場に到着すると、教習射撃でお世話になった講師の先生がいた。僕のことを覚えていてくれて、クレーの申し込みをしていると「うし、ちょっと見てやるか」そう言ってくれた。素直にうれしい。
ここ10日のブランクがどう響くか心配していたが、そういう変な心配は射台に立つと全部吹っ飛んだ。
調子よく前半は撃破するところからゲームは始まった。
しかしちょくちょくクレーを外す。
「俺は教習のとき、そんなふうに教えてないぞー。」と後ろから声がした。
僕はびくっと首をすぼませ、それから頭の中でクレーの基礎が暴走して、体が凍りついた。結局何が悪いかさっぱりわからない。
「ヒザが伸び上がっているぞ、スイングはヒザだと言ったはずだ。」。。。そうだった。
「クレーが左に飛んだら右ヒザを折り込んでつかみにいく!右へ飛んだら左のヒザだ」
「はい。」と短い返事をした。
たぶん、言ってもらえなかったら僕はすごく遠回りをしていただろう。ありがたい忠告だった。
「まっすぐのクレーでもヒザを伸びあげてはダメだ!頬も離れていくぞ」
「はい。」とまた短い返事をした。
ぎっちぎちに集中した1ラウンドだったが、結果は16/25。前回と同じ結果のままだった。
タバコを一服いれ、講師に礼をいった。
「あの、満射(満点)捕るときって、どんなコンディションなんですか?」思い切って僕は聞いてみた。
「普段も出るときは出るけど、大会とかで満射やるときは、射台に入った瞬間にわかるぞ」と、講師は思いがけないことを言った。
「射台に足をつけると、頭の先からつま先、地面までビリビリ電気が走るようになる。全身全霊で集中できる状態だ。そして気迫を込めて、クレーをやっつけにいく。」僕はぽかんとしてその答えを聞いた。言ってることがすぐにはよくわからない。でもひょっとしたら、それがわかる日が来るかもしれない。
うーん、楽しみだ。
「若いんだからさ、もっと自信もて。覆いかぶさるようにイキオイでクレー捕っていけ!」
その一言で、僕の中に闘争心がともった。大型のネコ科動物のような猛々しい気持ちだ。
2ラウンド目に入った。
1ラウンドのときに講師から言われながらリズムをつかんだ動きが、無理なくできた気がする。前回のようにぎっちぎちに集中していなくても、クレーが撃破されていく。
射台を変えると、僕はまず銃を小脇にかかえてピョンピョンと軽くジャンプして力を抜く。
つま先の方向を合わせて、ヒザのクッションを確認する。
しばらくバックストップを眺める。
広葉樹が赤く染まり、また黄色く染まって、温泉の噴煙が立ち昇っている。夕陽が赤く差し込み、硫黄の香りと硝煙の香りが鼻をかすめる。なんて素敵な景色なんだ。
12番ゲージの散弾を上下にすこんと入れて、銃身を持ち上げて機関部と結合させる。
銃床を肩にしっかりと当て、頬をつけながら狙いをゆっくり下の射出口へと落としていく。
照星の位置、銃が斜めにかたむいていないか確認する。
クレーはどこに飛んでいくかはわからない。
わからないなりにどこでも銃身を持っていけるよう心をすこし空白にしてみる。
「あいっ」
合図を言い終わる前にオレンジが視野の片隅へとすっ飛ぶ。
気づくと心地よい衝撃とともにクレーが粉砕される。
2ラウンド目の成績は19/25。新記録だ。素直にうれしい。
「当面は20をコンスタントにだせるよう目標を持て。」と講師が言ってくれた。
あれ?そういえば、このラウンドは注意されていない。何故かわからないが、とにかく胸の中にジンジンと希望があふれていく。
サロンの古いソファーに腰を下ろしてボーッとしていると、場長がコーヒーを入れてくれた。
「また来いよ。ここにはオモシロイ話が沢山あるんだ。俺と講師が鍛えた奴らには県大会優勝選手が沢山いるんだぞ。この射撃場でみんな揉まれて強くなっていく。」低い、力強い声で言った。
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