ヴィーの隠れ家

だいちゃん!!みんなでいっぱいいっぱい笑お♪イタさん盛り上げ♪(笑)

開店前日の夜

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開店前日の夜9 

念願のバー開店の前日の夜、突然現れた男の話を全て聞き終えたとき空は白み始めていた。
「リディアが着信に気づいて、死んだ母親のもとへ急いだから助かったってことなの?」
「そうみたいだ」
男―――ヨアンが手に持った酒を見つめているおかげで、私の疑いの表情は見られずにすんだ。
「天国に行ったはずのあなたがなぜここに?」胡散臭さを感じて、自分の言葉が嘲笑を含んでいるのに気づいた。
「天国へのチケットは手に入れたんだが、もともとのノルマがあるんだ。俺は死なせた人間と同じ数だけ、魂を迎えにいかなくちゃいけない」
それでも私は、面白い冗談ね、と一笑に付した。
ヨアンは私の言葉を無視して私に顔を近づけ囁いた。
「君で最後なんだ、ヴィアンカ」
私の笑顔が固まるのがわかった。
「振り返って部屋の奥を見てごらん」
言われたとおりにバーカウンター横の扉の奥に目をやると、そこには誰かが机に突っ伏した姿がある。
「…私?」声が震えているのがわかった。
いまだかつて感じたことのない恐怖。
私という存在がこのまま消えてしまう恐怖。
「大丈夫だ。俺と一緒に“上”に行こう」
「…私の体はもたなかったのね…癌に…勝てなかった…」私はぽつりとつぶやいた。予想はしていたがその衝撃は計り知れないものだった。
「残念だ…」
「…もう少し…もう少しだけここにいてもいいかしら…」
「ああ」
「少しだけ夢を見させてちょうだい…」
「…じゃあ酒でも作ってもらおうか」ヨアンは優しく微笑んだ。
「ええ、最高においしいのを」

こうして私のバーは開店を迎えることはなくなった。


END

開店前日の夜8

リディアは急いで身支度を済ませると携帯をバッグの底に押し込んだ。
ああ、だからリディアは携帯の着信に気づかなかったのか?
リディアは部屋中の窓の鍵を締めたのを確認していた。俺は部屋の真ん中につっ立って彼女を見ていた。
「…だめだ…行くな、リディア」
リディアはアパートの鍵を握った。
「…お願いだ…」
リディアは俺に気づかない。
「リディア!!!!!」俺が叫ぶと、今まさに出て行こうとした彼女が立ち止まり、俺を見た。
俺も彼女を見つめた。
まるで時間が止まったようだった。
ありえないとわかっていた。でもこの時俺は彼女に俺が見えていると信じたかった。
「…リディア…行っちゃいけない…」俺がやっと絞り出した声でそう懇願すると、ふとリディアは眉をしかめた。
何かが震えるような音がどこからかかすかに聞こえていた。
リディアは一瞬考え、思いついたようにバッグの中に手を入れた。
目当ての物を見つけると、急いで耳に押し当てた。彼女は母の死を告げる着信に気づいたのだ。
「もしもし?」
「リディア?…落ち着いて聞いてね―――――」リディアの頬を涙が静かに伝った。
「…そんな…」電話を切ったリディアは力なくその場に座り込んだ。

静寂はドアの外にいる男たちによって破られた。
「早くしろ!!ボスは機嫌が悪いんだ!!これ以上かかるならドアをぶち破ってひきずり出すぞ!!!」
「待って!!…今行くわ!」リディアは一瞬考えた後涙をぬぐって叫ぶと、トレンチコートを着て玄関のドアに椅子を立てかけつっかえをした。
彼女は窓へと走ると、アパートの裏にマフィアがいないのを確認して非常階段へ飛び降りた。
階段を駆け下り、すぐにタクシーを捕まえた彼女は母親の施設に向かった。
俺はその間言葉もなく茫然と立っていた。

施設ではリディアが死んだ母親と並んでベッドに横になっていた。母親を抱きしめるその手に手紙が渡された。
「あなたが帰ってから意識がはっきりした時間があったの。その時に書いていたわ。そしてその後苦しまずに息を引き取ったの」看護師は静かに立ち去った。
広げてみるとそれは読むのが難しいほどの震える文字で書かれた短い手紙だった。
「愛しいリディア。長い眠りから覚めたような気分よ。枕もとにあなたがいると思ったらデイジーの花だったわ。あなたもデイジーもまるで太陽のように輝くから見間違えたのね。昔から甘え上手だったあなたがいつしか甘えなくなった時、あなたに私という荷物を抱えさせてしまったのだと気づいたわ。つらいでしょう。あなたに今すぐ駆け寄って、すべて大丈夫だと言ってあげたい。ごめんなさい。愛しているわ。私の美しい花。私の愛しい光。自分の人生を生きてください」

廊下にはリディアの嗚咽が長い間響いていた。

翌朝、リディアは施設に残った少ない遺品整理を始めた。
彼女はアパートには帰らなかった。マフィアのボスの女である以上、その手から逃れたリディアは自分の身が安全ではないことに気づいていた。マフィアとの関わりが危険なことだとはじめから意識していたので、彼女はあらかじめ小さくまとめておいた貴重品を、近所の子どもに取りに行かせた。ベッドの上のテディ・ベアを持ってこさせるのも、リディアの部屋への子どもの侵入をごまかすのに役に立った。

慌ただしく一日が過ぎた夕暮れ、リディアは施設の花壇に、母親の部屋にあったデイジーを植えた。
俺もリディアの目の前に座り込んで彼女を見ていた。
「リディア、君をこの街にしばりつけるものはもう何もないんだ。君は外に出て、生きてゆける強さを持っている」俺はリディアをまっすぐ見つめて言った。
リディアは一粒涙を落したあとデイジーに微笑みかけた。
俺はそっと彼女の頬に触れた。彼女を照らす光さえも愛おしかった。
ああ、本当にデイジーの花のようだ。
リディアの母があの花を愛した理由がわかった気がした。



―――タクシーに乗って街を出るリディアを見送った後、俺はまた海の波打ち際を歩いていたんだ。
「ヨアン」
女の声がした。だがあたりには誰もいなかった。
「ヨアン?」俺が繰り返すと“声”が答えた。
「生きていた時のお前の名だよ、ヨアン」
声の主は姿を見せず、俺には声が空から降ってくるように感じた。
「彼女を助けたのだね。…なぁ、ヨアン。お前は自分の治世を築くために多くの血を流したね。だがその治世で助かった命もあるのもまた事実だった。優れた統治者ではあったが、時代が悪かった。お前はもう十分罪を償ったと思う。そろそろ“上”へ来ないか?」
「“上”?」
雲の合間から黄金に輝く光が差し込んでいた。
「“上”で一緒にリディアを待つといい。すぐに時間は過ぎる」
俺は空に続く階段を上って行った。


続く。。。

開店前日の夜7

地上へ戻ると、もうリディアの死は3時間後に迫っていた。
俺に何ができる?俺はどうしたいんだ?
このままだとリディアは死んで地獄にやってくる。
俺は彼女に会えるだろう。彼女に触れることができる。
だが地獄でリディアは終わりなき苦しみを負うことになるだろう。

…俺は一体どうしてしまったんだろう?
夕暮れの海を一人歩きながら考えた。
かつては人間などどうでもよかった。人が死のうが生きようが興味無かった。
それは俺が生きている間も、死んでからもだ。
そうして俺は今報いを受けている。
だがリディアは?
彼女は老いた母をたった一人で必死に守ろうとしている。自らを犠牲にしてまで。
彼女は地獄に行くべき人間じゃない。
…リディアにとっての幸せはなんだろう。
俺の頭は混乱していた。

リディアのアパートに行ってみると、ちょうど彼女は母親のいる施設から帰って来たところのようだった。
彼女の落ち込んだ様子から、母親の調子は良くないのがわかった。
俺も呆然と立ち尽くしていた。
彼女は服を片づけるとシャワーに向かった。
彼女がバスタブに入浴剤を入れてのんびりつかるので、俺はバスタブにもたれて、ドアを見つめながらリディアに話しかけた。
「俺はどうしたらいい」
「君を救えないのか」
リディアに話しかけているのか、それともひとりごとなのか俺にはわからなくなっていた。

リディアが風呂から出て晩御飯の支度をしていたら、彼女のアパートの扉を叩く音がした。マフィア達だった。
「フレッドが待っている。早く支度をしろ」
リディアは頷きながらも、その瞳は怯えていた。虐げられる者の目だった。
俺が見たリディアへの暴力の光景は珍しいことではないのだとわかった。
ああ、くそ。
運命なんてくそくらえばいい。


続く。。。。

開店前日の夜6

地獄へ降り立つと、そこは見慣れた風景が広がっていた。
荒廃した街のそこらじゅうに骸骨が転がり、激しく燃え盛る炎の中を俺は一点を目指して歩いた。

「死ぬ運命の人間を見るのは楽しいか?」くっくっという笑い声とともに俺は出迎えられた。地獄の権力者だった。
「俺が誰だか知りたい」
「そんなこと聞いてどうする」
「聞いても問題はないだろう?」俺が奴を見上げると、奴はにやりと笑って自分の手に火を灯した。火は大きく燃え上がり、俺の身長の半分くらいの大きさになると、一人の男の影が映った。玉座に座る俺の姿だった。
「お前は古代王国の王だったんだ」
俺は黙って奴の顔を見た。
「自分の治世を築くためお前は戦いに明け暮れ、多くの人間を殺した」
炎には俺の戦う姿が映っていた。
「せっかく勝ち取った王国も家来の裏切りによって滅び、短命な王は大勢の人間を殺した罪により俺の使い魔としてここにやって来た」
奴は顔をひきつらせ皮肉な笑いをもらした。
「お前は人間の魂を狩り続けるんだ。生きていた時にしたように」
「…リディアは…何故死ぬんだ」俺が問いかけると奴は今度こそ顔に不快を露わにした。
「どうせ死ぬんだ、見ていればいいだろう」
俺は何も言えなかった。
「…女に惚れたのか」奴は驚き、続いて腹を抱えて大笑いした。
「それなら―――」奴は俺の襟首を掴むとぐいっと引きよせ、顔を近づけた。
「惚れた女の死を二度見るがいい」
奴の黄色い瞳を覗きこむと、そこにはいつものように着飾ったリディアが映っていた。数時間後――未来のリディアだ。ホテルの部屋で落ち着きなくうろうろと歩きまわるリディアは、ふと、携帯が光っていることに気づいた。
携帯を開いた彼女は驚き、血の気を失った顔で留守電を聞いていた。
「リディア、落ち着いて聞いてちょうだい。お母さんが亡くなったの―――」
留守電の声は俺にも届いた。
リディアは小さい鞄を持つと急いで部屋を出ようとドアに向かって走った。
だがそこへ、背の高い男が葉巻をくゆらせながら入って来たのでリディアは勢いよくその男の胸にぶつかった。
「おっと、どこへ行くつもりだ?」
「フレッド…!お願い行かせて!!…ママが…ママが死んだの」
マフィアの若きボスは驚いたふりをすると、リディアを抱きすくめ耳元で囁いた。
「もう死んだんだろ?今行っても後で行っても変わらん」
手下たちを出て行かせると男はドアに鍵を閉めた。男はリディアをベッドに押し倒し、上からのしかかった。
「いやっ…!!おね…がい…離して!!」
激しく抵抗するリディアの両腕を難なく押さえつけると、男はリディアのドレスを引き裂いた。
「いやあぁぁぁぁっ!!」リディアが男をひっかくと男は怒ってリディアを殴った。それも顔をだ。
数回殴られておとなしくなったリディアは、ぐったりしながらも男のベルトに銃が入っているのを見つけた。
そのあとのリディアの行動は素早かった。あとのことは何も考えていなかったのだろう。彼女はためらうことなく引き金を引いた。

「くそっ!!銃声だ!!」
「ここを開けろ!!」
静かになった部屋の中では外にいる男たちの怒声とドアを叩く音が大きく響いていた。
マフィアのボスを撃ち殺して我に帰ったリディアの目には絶望の色が浮かんでいた。
「ああ…」俺は思わず声を漏らした。俺はリディアが自分の頭を撃ち抜く瞬間目をそらした。
「これがあの女の未来だ。殺人に自殺。どうしたって天国には行けないのさ」
奴の不快な笑い声が響き渡った。
「だが心配するな。ここで女と会える」
今、楽しくてしょうがないというように奴の目は赤く輝いていた。

続く。。。。

開店前日の夜5

翌日の昼過ぎ、白いVネックのシャツに、茶色のスカートを合わせただけのラフな格好でリディアは街に買い物へと出かけた。
彼女はオープンカフェで遅い昼食にサンドイッチとグレープフルーツジュースを頼んでいた。
俺は彼女の前の席に向かい合うように座り、本を読みながらサンドイッチをほおばる彼女を見つめていた。その時俺はただ願っていたんだ。
彼女が一度でもいいから俺を見て微笑みかけてくれればいい、と。
太陽の光をまとったリディアは優しく輝いていたよ。
死とともに人を迎えに行く俺とは正反対の存在に思えた。
俺はその時初めて自分が誰だか知らないことに違和感を感じた。この仕事をしている以外の記憶は全くないが、不思議と今まで興味を持たなかった。

スーパーで食材を買い込んだリディアはアパートに戻ると晩御飯を作った。
手早くサラダとパスタを作った彼女は、満足げに食べ始めた。
二日間彼女を見ていて、言葉も交わさず目が合うこともないが、彼女の正面に座って彼女を眺めているだけでともに生活しているような気がした。
シャワーを浴びて、髪を乾かし終わった彼女は鏡を見ながら髪を整えた。
彼女はふと手を止めると、ぼんやり鏡を見つめた。すぐ後ろに立つ俺に見えたのは、鏡の中で彼女の体に両腕を回す俺の姿だった。
だが彼女の見る鏡には彼女以外は誰も映っていないのだろう。
彼女の洗いたての髪の匂いがした。
リディアがベッドに潜り込むのを見守ってから、俺はいつも持っている書簡に目を通した。

そこにはリディアの名前と死ぬ日時、地獄に連れて行くことだけが書いてあった。

彼女はなぜ死ぬのだろう。なぜ地獄に?そして俺は誰なんだ。
俺は事実を知るために地獄へ下りて行った。俺を雇っている男に会ってきたよ。
黄色い目の男だ。

リディアが死ぬ前日の夜だった。

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