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第一章:日本初の歌謡アニメ『さすらいの太陽』

『さすらいの太陽』というアニメがある。
 1971年4月8日から9月30日の半年間、木曜日の午後7時にフジテレビで放映されていたアニメである。
 同じ時間帯に『タイガーマスク』が放映されていたため 、視聴率はあまり伸びなかったらしいが、今でも根強いファンのいる作品である。
 『さすらいの太陽』は、劇中に多くの歌謡曲 を取り入れた最初のアニメであり、日本初の「歌謡アニメ」 といえる。
 またアニメ界と歌謡界がタイアップした最初の作品でもあり、その後のアニメと歌謡界の関係を考えるうえでこの作品を無視する事はできない。
 そのような思いから、筆者はこの作品を紹介し、そのアニメ史上の意義について考えてみることにした。
 今回は『さすらいの太陽』の内容紹介を兼ねて、劇中でどのような音楽が使われていたかについて述べたいと思う。


(1)作品の概要
 アニメ『さすらいの太陽』は、『少女コミック』連載の同名の漫画を虫プロがアニメ化したものである。
 原作漫画は、藤川桂介(原案)とすずき真弓(漫画)のコンビによるものであり、1970年9月〜1971年10月まで連載された。
 当時虫プロは『あしたのジョー』を制作中であり、残りのスタッフで『さすらいの太陽』を制作しなければならなかった。そのために東映動画から高橋信也や勝間田具治などを招いて制作にあたったという事情がある。
 虫プロ作品でありながら東映動画との合作という性格が強いアニメであった。
この作品は、歌謡界を舞台にした少女向け根性アニメといわれている 。それまで少女向けの根性アニメというと、『アタックNo.1』のようなスポ根モノしかなく、歌謡界を舞台にしたという点がこの作品の新しさであった。
 歌謡界を舞台にしたアニメであるため、当然ながら歌うシーンが多く、音楽を担当した作曲家いずみたくの手腕を見せ付けられる作品である。

(2)ストーリー
 この物語の主人公は貧しいおでん屋の娘、峰のぞみ(声:藤山ジュンコ)である。彼女は生来歌が大好きで、ボーイフレンドのファニー森山(声:井上真樹夫)やライバルの香田美紀(声:嘉手納清美→平井道子)の影響を受けて、いつしか歌手になることを夢見るようになる。
 その後、作曲家の江川いさお(声:朝戸鉄也、寺島幹夫)の内弟子となったのぞみは、ファニーとの別れや美紀のいやがらせ、家計の苦しさや江川の厳しい特訓に耐えながら、次第に新人歌手としてふさわしい実力を身に付けていく。
 しかし、芸能活動に忙殺されて満足に歌の練習もできなくなっているスター歌手たちの実態を見たのぞみは、「本当の歌とは何だろうか?」と疑問を抱き始める。
 のぞみは「本当の歌とは何か?」という問題の答えを探すため、目の前にあった歌手デビューの話を断り、ギター一本を頼りにしてさすらいの旅に出かける。
 のぞみは流しの歌手として旅を続けながら、高校時代に自作した「心の歌」を歌い続ける。のぞみの歌う「心の歌」は、次第に人々の心に染み渡り、人から人へと伝わり、いつしかラジオ局にもリクエストが殺到するようになる。
 デビューもしないうちに幻の歌手として評判になったのぞみは、その後公式なデビューを果たし、スター歌手としての階段を駆け上っていくのであった。

(3)ヒット曲メドレーとしての『さすらいの太陽』
 『さすらいの太陽』では登場人物たちが歌うシーンが多く、それがこの作品の大きな見所になっている。
 『さすらいの太陽』の音楽を担当したのは作曲家いずみたくであり、いずみたく作曲のオリジナル曲が劇中で何度も用いられている。
 タイトルと歌詞がわかるオリジナル曲は以下の五つである。

・さすらいの太陽(歌:スリーグレイセスとボーカルショップ。作詞:山上路夫。作曲:いずみたく)
・心の歌(歌:堀江美都子。作詞:三条たかし。作曲:いずみたく)
・とべない小鳩(歌:平井道子。作詞:未詳。作曲:いずみたく)
・鎖(歌:藤山ジュンコ。作詞:山上路夫。作曲:いずみたく)
・あなたに選ばれて(歌:藤山ジュンコ。作詞:未詳。作曲:いずみたく)

 「さすらいの太陽」は、アニメのオープニングテーマソングである。オープニング画面で、歌声に合わせて歌詞が一字ずつ表示されるようになっている点については制作スタッフのこだわりを感じる。
 「心の歌」は、アニメのエンディングテーマソングであるとともに、峰のぞみの持ち歌として劇中で何度も歌われている。
 「とべない小鳩」は劇中で香田美紀のデビュー曲として使われている。
 「鎖」と「あなたに選ばれて」は劇中でのぞみが歌う曲だが、実はこれは藤山ジュンコのデビューシングルでもある(詳細は後述)。
 オリジナル曲が劇中で歌われる例は、その後のアニメでもよく見られることであるが、『さすらいの太陽』の珍しい点は、既成の歌謡曲を作品中に大々的に盛り込んでいることである。
 劇中で歌われた当時の歌謡曲は以下のとおりである 。

・圭子の夢は夜ひらく(歌:藤圭子。作詞:石坂まさを。作曲:曽根幸明。1970年)
・女のブルース(歌:藤圭子。作詞:石坂まさを。作曲:猪俣公章。1970年)
・さいはての女(歌:藤圭子。作詞:石坂まさを。作曲:彩木雅夫。1971年)
・いっぽんどっこの唄(歌:水前寺清子。作詞:星野哲郎。作曲:富侑栄。1966年)
・三百六十五歩のマーチ(歌:水前寺清子。作詞:星野哲郎。作曲:米山正夫。1968年)
・1+1の音頭(歌:水前寺清子。作詞:星野哲郎。作曲:鈴木邦彦。1970年)
・恋の季節(歌:ピンキーとキラーズ。作詞:岩谷時子。作曲:いずみたく。1968年)
・知床旅情(歌:加藤登紀子。作詞・作曲:森繁久弥。1970年)
・卒業させてよ(歌:和田アキ子。作詞:阿久悠。作曲:馬飼野俊一。1971年)
・真夜中のギター(歌:千賀かほる。作詞:吉岡治。作曲:河村利夫。1969年)
・花嫁(歌:はしだのりひことクライマックス。作詞:北山修。作曲:端田宣彦、坂庭省吾。1971年)
・ふたりだけの旅(歌:はしだのりひことクライマックス。作詞:北山修。作曲:坂庭省吾。1971年)
・愛に生き平和に生きる(歌:ピンキーとキラーズ。作詞:岩谷時子。作曲:いずみたく。1970年)
・手紙(歌:由紀さおり。作詞:なかにし礼。作曲:川口真。1970年)
・白いブランコ(歌:ビリーバンバン。作詞:小平なほみ。作曲:菅原進。1968年)
・ドリフのツンツン節(歌:ドリフターズ。作詞:なかにし礼。作曲:未詳。1971年)
・遠くへ行きたい(歌:ジェリー藤尾。作詞:永六輔。作曲:中村八大。1962年)
・世界は二人のために(歌:佐良直美。作詞:山上路夫。作曲:いずみたく。1967年)
・おふくろさん(歌:森進一。作詞:川内康範。作曲:猪俣公章。1971年)
・誰もいない海(歌:トワ・エ・モア。作詞:山口洋子。作曲:内藤法美。1970年)

 物語中で最初に出てきた歌謡曲は、テレビの中で藤圭子が歌う「圭子の夢は夜ひらく」である(第1話)。また、流しの歌手になったのぞみが最初に歌う曲も「圭子の夢は夜ひらく」である(第5話)。
 峰のぞみは他にも「女のブルース」(第12話)や「さいはての女」(第21話)など、藤圭子の歌をよく歌っているが、これは藤圭子が峰のぞみのモデルだからである。
「いっぽんどっこの唄」は、自転車で下校するのぞみが鼻歌程度に歌っている(第2話)。水前寺清子の歌はこの他にも「三百六十五歩のマーチ」(第3話)や「1+1の音頭」(第11話)などが用いられており、藤圭子に次いで多い。ちなみに「三百六十五歩のマーチ」はのぞみではなく、船の上で働く子供たちが歌っている。
 「恋の季節」はピンキーとキラーズのデビュー曲であり、劇中では屋台を押すのぞみがハミングで歌っている(第3話)。
 「知床旅情」は、酒場で流しの歌手として歌う場面で部分的に用いられている(第5話および第21話)。
 「卒業させてよ」は和田アキ子のシングルであり、劇中では三回用いられている(第5話、第7話、第11話)。そこまで有名な曲とは思えないが、これだけ多く用いられているのは藤山ジュンコの十八番だったためだろうか?
 「真夜中のギター」は第6話の冒頭で、BGMとして流されている。
 「花嫁」ははしだのりひことクライマックスのファーストシングルであり、のぞみが江川いさおと初めて出会ったシーンで歌われている(第6話)。
 ちなみにはしだのりひことクライマックスは、第22話の嵐山ジャズフェスティバルにのぞみの前の出演者としてゲスト出演している。その時に歌われていたのが「ふたりだけの旅」(セカンドシングル)である。
 「愛に生き平和に生きる」はいずみたくの曲であるためか、劇中で何度も使われている(第7話、第10話、第12話、第15話)。この歌を聞くと、当時がベトナム戦争中であったことを思い出さずにはいられない。
 「手紙」は由紀さおりのヒット曲であるが、これも作品中で何度か使われている(第11話、第15話)。
 「白いブランコ」は、のぞみが巡業先で知り合ったトランペッター新田明と歌の勝負をするシーンで使われている(第11話)。
 「ドリフのツンツン節」は、のぞみではなく、弟の一夫と妹のユキが内職をしながら歌うシーンで使われている(第13話)。
 「遠くへいきたい」は、のぞみが苦境のどん底に落ちたシーンで歌われている(第14話)。今までどんなに辛いことがあっても前向きだったのぞみが、初めて現実逃避願望を示すシーンである。
 「世界は二人のために」は、佐良直美のデビュー曲であり、1968年の春の選抜高校野球大会でも使われたヒット曲である。これはのぞみが素人のど自慢大会の決勝で歌った曲である(第15話)。この曲のおかげでのぞみは優勝を果たし、一度破門された江川から再び入門を認められることになる。いわばのぞみがどん底からの復帰を果たした重要な曲である。その重要な場面であえてこの曲が使われているのは、いずみたくの作曲だからであろうか?
 「おふくろさん」は第20話の冒頭でテレビの中の森進一が歌っている曲である。『さすらいの太陽』には、藤圭子、いしだあゆみ、森進一、はしだのりひことクライマックスなど実在の歌手が登場するが、唯一台詞があったのは森進一だけである(第19話)。
 「誰もいない海」は、のぞみが埠頭で悲しみにくれるシーンで用いられている(第20話)。

 以上のように『さすらいの太陽』では当時の歌謡曲が多数用いられており、これだけで1970年前後のヒット曲集が作れそうである。
『さすらいの太陽』は単にアニメとしてでなく、歌謡曲メドレーとして楽しむことも可能である。
 『さすらいの太陽』は歌謡曲を大々的に取り入れた初のアニメ作品であり、これほど多くの歌謡曲を取り込んだ作品を筆者は他に知らない。
 また、アニメと歌謡界のタイアップによって新人歌手をデビューさせるというアニメ史上初の試みも行なわれている。
これは、以後のアニメと歌謡界の関係を考えるうえで見逃せない問題であり、次回はその点について触れてみたいと思う。
          (続く)


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