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さて、韓国さんの話だけを聞いて、話を終わらせてしまうのは甚だ一方的だろう。
男女関係のもつれというものは、大抵男性の方にも言い分があるはずだからだ。
私は韓国さんの三時間以上に及ぶ愚痴を聞いた後、日本さんにも会うことにした。
私は日本さんとも知り合いなのである。
日本さんは仕事上のパートナーとしてはとても理想的な男性である。仕事が丁寧で、いやな仕事でもすすんで引き受けてくれる人だ。
ただ、若い頃は結構粗暴なところがあったそうで、激すると暴力に訴えることもしばしばあったという。
日本さん「西くん、こんにちは」
私「どうも、お久しぶりです」
日本さんは笑顔で私を迎えてくれた。
「さっき韓国さんと会ってきたんですけど・・・」と私は意地悪く言ってみる。
日本さんがどういう顔をするか試すためだ。
さっきまで笑顔だった日本さんの顔が急に曇った。やっぱりこの話はされたくないみたいだ。
「あの女・・・また俺のことを悪く言ってたかい?」
「ええ。」
「全くいい加減にしてくれって話だよな」と日本さんが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「たしかに俺も・・・十年前は色々と荒んでから、悪いこともしたとは思うよ。・・・だけどいつまでもネチネチネチネチ昔の怨み言を言われたって、どうしようもねえじゃねえかよ。」
日本さんは口をゆがませて、吐き捨てるように言った。
「こないだなんか、あの女から夜中に突然電話がかかってきて、『私はあんたに負わされた心の傷のせいで夜も眠れないんだ。どうしてくれる』って言って、昔の愚痴を聞かされたんだぜ。自分が眠れないからって他人の安眠まで妨害しないでほしいよな」
そういえば、そんな話も聞いたことがあるような。
韓国さんは、「あの男が昔のことを正当化しようとしているから、それに抗議しようと電話をかけたのに、まともに取り合ってくれなかった」と言っていたな。
それにしても韓国さんも話があるなら夜中じゃなくて他の時間にすればいいのに。何も嫌がらせのような時間を選ばなくてもいいのに・・・と私は思った。
日本さんの言い分は単純だ。
自分はたしかに結婚当時に色々とひどいことをしたと日本さんは一応認めている。
だから、離婚のときに相当額の慰謝料を払ったのだ。
そして昔のことはその時の慰謝料でカタが付いたはずだ、という。
昔のDV被害に関しては慰謝料という形で償ったのだから、韓国さんは日本さんに対してこれ以上の要求をしてはいけない。むしろ韓国さんが日本さんのことを悪く言うのは名誉侵害にあたる、というのが日本さんの意見。
それに十年も経てば、「もう時効だろ」と日本さんは言う。
「早くまた別のいい相手を見つけて楽しく暮らせばいいのに、それもしないで、いつまでも俺に突っかかってくるのは正直うざい」のだそうだ。
日本さんが自分の過ちを認めて慰謝料という形でそれを償ったのは事実である。
しかし韓国さんの気持ちはそれではおさまらないのだろう。
「人の心に時効なんて無い」と韓国さんは以前に言っていた。
だから今でも心の傷が癒えないと言っては、日本さんの悪口を言うのだろう。
しかしそんなことをして、韓国さんの心の傷は癒えるのだろうか?と私は思う。
「人を呪わば穴二つ」というように、日本さんを憎む心がむしろ韓国さんの心の傷を深くしているのではないだろうか?
韓国さんが日本さんを憎み、彼の悪口を言うことで、周囲の人は彼女のそばから離れていってしまう。
そりゃそうだ。誰だって、人の悪口を言う人とは一緒にいたくないだろう。人の悪口を聞くと気分が悪くなるからだ。
そうやって孤立を深めた彼女は、その不幸の原因をまた日本さんに向けてしまう。
そして余計に日本さんの悪口を言っては、さらに孤立を深めてしまうのだ。
結局、他人を怨む心が自分をも不幸にするのだ。
過去に起こったことはもう取り返しがつかないのだから、結局は許すしかないのではないかと思う。
でも、そんなことを韓国さんに言おうものなら、「あなたはDVの被害にあったことがないから、私の気持ちなんかわからないのよ」と言われてしまうんだろうなあ。
日本さんと話をしながら、私はそんなことをぼんやり考えた。
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以上の物語は全てフィクションです。
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