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店主の西貢が日々考えたことや体験したことをつづるブログです!

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3、威化島(ウィファド)と北朝鮮レストラン(9月21日)後編
 
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北朝鮮側から見た中国。まるで威嚇するかのように高層ビルが立ち並ぶ。
 
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北朝鮮側の風景。崩落した護岸ブロックの上をヤギがのそのそと歩いている。水でも飲みに来たのだろうか?
 
船の上から、北朝鮮側の写真もたくさん撮ったが、中国側の写真も何枚も撮った。それは、北朝鮮側から見ると中国がどんなふうに見えるのかを知りたかったからだ。
古びた家が点々と立ち並ぶ北朝鮮に対して、高層ビルが次々と建てられている中国。
鴨緑江から両国の岸辺を眺めてみれば国力の差は歴然としている。

ふと、600年前に李成桂も同じような体験をしたのだろうか、と思った。
1388年に明の遼東攻撃を命ぜられた李成桂は威化島に陣を敷き、攻撃のチャンスをうかがった。しかし、時を待つうちに彼の心は変わり、明を討つかわりにその軍を率いて高麗の首都開城(ケソン)を襲ってクーデターを引き起こす。この「威化島回軍」事件が、その後の李成桂による王朝簒奪の起点となるのだが、李成桂が威化島で心変わりをした理由は何だっただろうか?

ひょっとすると、彼が威化島で明側の圧倒的な国力を実見していたためかもしれないと思う。現在の北朝鮮の人々が対岸の中国を見て圧倒的な国力の差を実感するように、李成桂も威化島から明側を眺めて「遼東攻撃は失敗する」と実感したのではなかろうか?
李成桂の作り上げた朝鮮王朝は、基本的に明に対して従属的な外交方針を貫いたが、その外交方針の源は、威化島での李成桂の体験に根差すものだったかもしれない。
 
船は威化島を離れて新義州(シニジュ)の製紙工場の方に近づく。製紙工場は煙突から煙を出していたことから、今でも稼動しているらしい。朝鮮戦争で破壊された鴨緑江断橋にはたくさんの人が集まっていて、北朝鮮側をバックにして観光客達が記念撮影をしていた。
 
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新義州の製紙工場。煙を上げていたから、今でもまだ稼働しているようだ。
 
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鴨緑江断橋(左)と新鴨緑江大橋(右)。左の鴨緑江断橋は今はすっかり観光地となり、北朝鮮に向かう鉄道は右の鴨緑江大橋を通っている。

この鴨緑江断橋は昔日本が造ったもので、かつては「鴨緑江鉄橋」といった。1937(昭和十二)年刊行の山崎惣與著『満洲地名大辞典』によれば、次のような説明がある。
 
該鉄橋は満鮮両地を連絡する唯一の交通路にして、其の規模の点に於いて東洋第一と称せらる。全長三〇九〇呎(フィート)、鋼桁二〇〇呎六連、三〇〇呎六連、合計一二連あり、明治四十二年八月一日起工、同四十四年十月竣工、其間二十有六ヶ月を要したりと雖も、各冬季約四ヶ月、夏期一ヶ月の休工を控除せば僅かに十六ヶ月を費したるのみ、而も其の経費一四〇六八〇〇余円を以て竣成せり、而して其中央なる一橋桁(三〇〇尺)を閘門式とし、一日四回開閉し以て船舶の航行に便す。鉄橋の両側は人車道にして中央に軌条を通す。此鉄橋の開通以来安東及新義州両地の交通に多大の利益を与え、殆ど国境を撤して一市を形成するの観あり。殊に最近此両地間に、自動車の運転するに至りし為め更に其度を深くせり。
(同書十六頁。句読点や漢字・送り仮名は現代風に改めた)
 
かつてこの鴨緑江断橋は「東洋第一の橋」と称えられ、丹東(=安東)と朝鮮の新義州をほとんど一つの町のようにしていたというが、今はただ残骸が観光地として跡をとどめるだけである。

船を降りてから北朝鮮を背景にして記念撮影でもしようと思い、その辺りで写真を撮っていた中国人観光客にカメラを渡して撮ってもらった。彼は写真を撮り終わった後、「どこの国の人ですか?」と聞いてきたので、私はすかさず「韓国」と答えた。これが私の記念すべき国籍詐称の第一回目だった。この後、私は同じ質問を受けるたびに「韓国人」と詐称し続けることになる。
 
 
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鴨緑江の中国側沿岸は公園になっており、北朝鮮をバックにして記念写真を撮っている観光客が多かった。緊張感の無いのどかな国境である。
 
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鴨緑江を遊覧する北朝鮮の観光船か?手を振ってみたら振り返してくれた。乗っているのはおそらく北朝鮮の富裕層であろうが、地味な色の服を着ている人が多いのが北朝鮮らしい。
 
鴨緑江岸辺をウロウロ歩きまわって疲れたので、温泉にでも行ってゆっくりしようかと思った。丹東の近くに五龍背(ウーロンベイ)という温泉地があるのは知っていたが、市街地からかなり離れているのでタクシーで行くと高くつく。お土産屋さんで買った丹東地図で五龍背温泉行きのバスが無いか探してみる。
すると駅前から出ている218番バスに乗ればいいということがわかった。そこで早速丹東駅まで行って、218番バスを見つけて飛び乗った。乗車する際、いくら払えばいいのかわからなかったので、前の客の真似をしてとりあえず2元払っておいた。
バスは市街地を離れて少しずつ農村に入っていく。周囲はコウリャン畑ばかりで、堆肥の匂いが鼻をつく。一体、この先に温泉地などあるのだろうかと不安になりながらバスに揺られてガタゴト進む。
しばらく走ると、ある程度大きな市場のある町に入り、大きな駅舎が見えてきた。それが五龍背駅で、バスはその駅前で停まった。私もそこでバスを降り、駅前をウロウロしながら、目的の温泉を探す。ここはかつて満鉄の社員たちの保養所にもなっていたところで、日本人ゆかりの露天風呂が残っていると聞いた。その露天風呂を探してやって来たのだが、どこをどう行けばいいのかわからない。
 
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五龍背温泉の風景。この赤字の看板が鉄路療養院に入る目印。

すると、「鉄路療養院」と書かれた赤い看板が見えた。これだ!と思った私はその看板の導くままに進んだ。すると左手には「日式露天風呂」、右手には「鉄療」と書かれた施設が現れた。どっちに入ろうか悩んだが、今回の目的はあくまでも露天風呂に入ることだったので、日式露天風呂の方に入ることにした。
露天風呂は50元、タオルと水着も合わせると80元だった。露天風呂は男女混浴になっていた。なるほどだから水着着用なのだな、と思った。まあ男女とも全裸で混浴に入る日本の感覚の方が世界的に見れば一般的ではないだろうが。お湯はぬるくなく、熱くもなく、ちょうどいいくらいの温度だった。ただ、従業員が常駐して湯船を見守っている(監視している?)のが落ち着かなかった。

温泉を出た後、またバスに乗って駅前まで戻った。駅前から今度は文化公園の近くにある「世界最大」らしい北朝鮮レストランに行くことにした。名前は「平壌高麗館」。散々迷ったすえにたどり着いた時にはもうすでに北朝鮮歌謡ショーは終わっていた。
残念に思いながらも、ビビンバと冷麺とヤンマリキムチ(양말이김치)と鴨緑江ビール(丹東で作っているビール)を頼んだ。しめて97元。到底一人で食べきれる量ではなかったので、余った分は包んでもらって翌日の朝食にすることにした。
中国内の北朝鮮料理店に行くのはこれで二回目なので、どうしても一回目に行った平壌玉流館(上海にある)と比べてしまうのは仕方ないことだろう。どちらも北朝鮮出身の女性店員が接客してくれるのは同じなのだが、玉流館はチマチョゴリ姿でお出迎えしてくれるのに対し、高麗館は洋服である。洋服ならせめて北朝鮮国旗の色に合わせて青と赤の組み合わせの制服を着てくれるとうれしかったのだが、赤と白の服でガッカリした。これではどうしても玉流館の方に軍配をあげたくなる。
ただ、玉流館の店員がなるべく高い料理をすすめようとしつこかったのに対し、高麗館の方は特にそんなことなかった。この点は高麗館の方に軍配をあげたい。思うに国境の地方都市丹東より、中国第一の大都会上海の方が圧倒的に金持ちが多いので、玉流館の店員も稼ごうと必死だったのかもしれない。
 
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ビビンバ(左)とヤンマリキムチ(右)、冷麺(奥)。素朴な味でなかなかおいしかった。緑色の瓶は鴨緑江ビールという丹東地元のビールだった。
 
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平壌高麗館。歌謡ショーが終わってしまったせいか、客は少なかった。客の言葉づかいから見て、中国人客が大半のようだ。

ここの料理は北朝鮮らしく、韓国ほど洗練された印象はないのだが、キムチなどは地味にうまい。大体朝鮮半島は南に行けば行くほど料理が辛くなると言われているが、北朝鮮料理は韓国ほど激辛に走らないので、ほどよい辛味とほんのりした甘みのハーモニーが絶妙である。特に冷麺とヤンマリキムチはピリッと辛いながらもほのかな甘みが非常においしく、ついつい食べ過ぎてしまった。韓国より北朝鮮の味付けの方が日本人向きかもしれない。
この店に来る客はほとんどが中国人なのだろう。こちらが朝鮮語で話しかけても、店員さんは中国語で答えてきたりした。店員さんから見れば、中国語でなく朝鮮語(しかもネイティブほどうまくない)で話しかけてくる私なんぞは実に奇妙な客だったに違いない。
北朝鮮の女性店員さんは、開城で会った人も上海で会った人も、さらにここで出会った人もみな等しく、ほとんど感情をあらわにしない。いつも微笑みを浮かべた顔を崩さず、決して大声を出さず、はしゃがず、怒らない。感情をすぐあらわにする韓国女性に慣れている私からすると、本当に不思議な存在だ。きっと感情を表に出さないような特別な訓練を受けているのだろうが、同じ民族でここまで違うのかと思わざるをえない。
しかし、帰りぎわに記念撮影を頼んだ女性店員(この人だけは何故かチマチョゴリを着ていた)はやたらにハイテンションで「ええ、私が撮ってさしあげますよ!」とカメラを手に取り、「そんなふざけないでシャキッと立ってくれないと撮れないじゃないですか!(ピースしてただけなのに・・・)」とはしゃぎながら撮ってくれた。こんなにはしゃぐ北朝鮮女性を初めて見たので、少し安心した。やはり彼女らもきちんと感情のある普通の人間なのだと再確認できたからだ。
(つづく)

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