|
上は豊洲新市場の写真。まだ何もできていない。下は週刊ポストの記事。
3、そして鐘は鳴り響く
何の気なしにメモを取っていたら、一人の男性から声をかけられた。
「すごいメモですね。報道関係の方ですか?」
どうやらメモの緻密さを誉められたらしい。悪い気はしないがこの人は誰だ?
「私は週刊ポストの記者なんですが、築地は初めてなんですよ。よくここには来られるんですか?」
なるほど、私は同業者だと思われたらしい。私は趣味で来ただけで、築地のせりを見に来るのは初めてであると正直に答えた。質問されるだけでは面白くないので、こちらからも質問することにした。
(私)「週刊ポストで築地の記事を扱うんですか?」
(記者)「ええ、2、3週間後に特集を組むんですよ。」
このようなやりとりをしていたところ、台の上に立ったおっちゃんが鐘を鳴らし始めた。せりの開始を告げる鐘だ。
台上のおっちゃんは独特のリズムで雄たけびを上げている。初めはよく聞き取れなかったが、耳が慣れるにつれて何を言っているかだいたいわかってきた。
「エン、ゴジューロクバン、ナナゴー、ナナゴー、ナナゴー、・・・オーミスイサン」
これは56番 のマグロを75(75万円?)で売ろうとしたところ、近江水産(業者)が買い取ったということである。台上のおっちゃんがマグロの値段を連呼しながらどの業者に売るかを決める(業者は指でサインを送り、値段交渉や買う意思を示す)。おっちゃんの横では少し若い男性が、どの業者がどのマグロをいくらで買ったかということを、必死にメモしていた。
このせりは築地の卸売り業者 が仲買や仲卸にマグロを売るためのものである。仲買や仲卸業者がこのマグロを解体し、料理屋や魚屋などに売り、それからようやく消費者の口に入ることになる。私達が普段何の気無しに食べているマグロ(実はマグロに限らないのだが)が、これだけ多くの人の手を経ていることに感動を覚えた。流通というものの奥の深さを感じた。一つの卸売り業者のせりが終わると、他の業者も次々にせりを始めた。リンリンリンという鐘の音があちらこちらに鳴り響いた。私は思わず、デジカメのビデオ撮影を始めた。
4、朝焼けの下で
マグロのせりを見終わった頃には空が少しずつ白くなってきていた。午前六時過ぎだった。
昨日から一睡もしていない私達は寒いうえにお腹もすいていた。せっかく築地に来たのだから寿司か海鮮丼でも食べようということで意見が一致し、市場内の飲食店をブラブラ歩いた。午前六時過ぎには市場内の店も開いており、寿司屋の前の行列も一層ひどくなっていた。不思議だったのは、同じ寿司屋でも長蛇の列ができる店と閑散としている店があることだ。行列の店とガラガラの店の間にはどれほどの違いがあるというのか?
私達は行列に並ぶのが嫌いな根性無しなので、そんなに混んでいない海鮮丼屋に入った。1300円程度のネギトロマグロ丼を食べてお茶をすすりながらほっと一息ついた。
午前7時頃。いつもなら完全に布団の中にいる時間だ。朝焼けの空がまぶしかった。
5、それから
築地市場の見学をひととおり終えた私達は、築地市場の移転予定地である豊洲に行くことにした。
ゆりかもめには「新市場前」という駅があり、それが築地の移転先である。行って見た感想は、「無駄に広い空き地」というところである。もし築地市場移転計画が頓挫したら「新市場前」という駅名はどうなるのかと考えながら帰路に着いた。
後日、週刊ポストの記事を確認した。週刊ポスト2008年2月29日号(40巻9号)の「外国人観光客TOKYO新名所」という記事がそれらしい。その記事の一部を抜粋してみよう。
早朝午前五時半、「東京の台所」として賑わう中央区築地の東京都卸売市場(以下、築地市場)―――。
競り人たちの活気溢れるやり取りの声が場内に響く中、ズラリと集まった外国人観光客たちから感嘆の声があがる。
今や外国人観光客にとって東京でも一番の人気スポットとなった築地市場。中でもマグロの競りは特に人気が高く、見物客の約9割が外国人だ。
「ここは本当にすごい!生き生きとしてものすごい活気ですね。築地はガイドブックだけでなく、アメリカの新聞やテレビでもよく取り上げられています。今回の旅行の一番の目当てだったんです」(ニューヨークから夫婦で来た45歳男性)
昨年、日本を訪れた観光客の数は過去最高の約835万人を記録。円安傾向が長期化する中、近隣の韓国、中国はもとより、ロシア・ルーブルや欧州・ユーロなど“強い通貨”を誇る国から観光客が続々と日本にやって来ているのだ。
|