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店主の西貢が日々考えたことや体験したことをつづるブログです!

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4、九連城と朝鮮語(9月22日)前編
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北朝鮮の威化島。兵士たちがこちらを見ている。
 
9月22日は7時頃に目が覚めたのだが、この日記を書いたり、洗濯をしていたらいつの間にか遅くなって、結局宿を出たのは11時頃だった。
この日は朝から昨日より大きな爆発音が鳴り響いていた。
また結婚式か?と思っていたら、「ハッピーバースデイトゥーユー♪」の誕生日ソングが聞こえてきた。
結婚式が終わったと思ったら今度は誕生日か。
何かを祝うたびに戦争のように音をけたたましく鳴らす漢民族の風習には毎回唖然とさせられる。

宿を出る前に昨日包んでもらっていた平壌高麗館の残った料理を食べる。
冷蔵庫が無いので腐っていたらまずいなと思い、念のため正露丸も一緒に飲む。
正露丸は本来日露戦争の時、満洲の原野で戦っている日本軍の衛生のために作られたものだというが、今私はその旧満洲で正露丸を飲んでいる。
奇しくも100年前の日本人と同じ用法で使っているわけである。きっと正露丸も再び満洲の地で日本人の役に立てて喜んでいることだろう(何だそれ?)。

この日は九連城(ジウリエンチェン)という所に行く予定だった。
九連城はもともと丹東が鴨緑江下流の中心都市になる以前の中心地であり、金・元代には婆娑府と呼ばれていた。
朝鮮側の義州(ウイジュ)と相対する中国側の辺境であり、前近代においては対朝鮮外交窓口の役割も果たしていた場所である。
また、日露戦争の時の激戦地としてもよく知られている。

九連城に行くには213番か215番バスに乗ればいいので、私はバスに乗って九連城に向かう。
しかしおかしなことに、バスは行けども行けども九連城にたどり着かない。
しまいには何故か鴨緑江の中洲のような島に渡って、ひたすら農村地帯を走っていく(後でわかったことだが、この島は鴨緑江にそそぐ靉河(アイフー)の中州の島で、套里村(タオリーツン)とか河西甸子(フーシーディエンズ)とか言われているところだった)。

あれ?これは大丈夫なのか?ここはどこなんだ?ここからどうやったら九連城に行けるんだ?と内心あせっていたところで、バスは停まった。
終点にたどり着いたためらしい。

まずい、こんなところで降ろされても何もできない。
こんな農村では私みたいな外国人は明らかに不審者である。
村人に捕まって日本人だとばれたらどうなるだろうか・・・とあれこれ思い悩みながら、バスが終点から折り返すまでずっと降りないで座っていることにした。
すると終点で折り返すバスに何人かお客さんが乗ってきた。
そのおばさん達は大きな声でおしゃべりを始めたが、よく聞いてみると、中国語ではない言葉で話している人達がいた。

これは朝鮮語じゃないか!と思った私は、しめた、と思い、そのおばさんの一人に話しかけてみた。「朝鮮語を話せますか?」と。

「うん。あんたはどこに行くんだい?」
「実は私は九連城に行きたいんですが、どうやったら行けるかわかりますか?」
「九連城なら213番バスに乗らなきゃだめだよ。これは214番バスだから、このバスに乗って岔道口(チャーダオコウ)まで行って、そこで乗り換えなきゃ」

どうやら私は間違えて214番バスに乗っていたらしい。
中国語がわからず難儀していた私にとって、朝鮮語を話す人々に出会えたことはまさに天佑であった。
私はなんだかんだ言っていつも朝鮮語に助けられているような気がする。
朝鮮語を話すおばさん達は私に色々話しかけてきた。

「どうしてこんな所に来たの?」
「私は大学で歴史を勉強しているもので、ここに歴史遺跡があるから来たんです」
「遼寧大学の留学生かい?」
「いえ、旅行者です」
「アイゴー、勇敢だねえ。中国語を一つも知らずに一人でやって来るなんて。こういう所はガイドを連れて歩かなきゃ」

そこで私も逆に聞き返してみた。

「朝鮮族の方ですか?」
「いや、私らは華僑だ。年に何度も北朝鮮に仕事で行ってるんだ。でも最近はあまり行けないんだ。たくさん搾取されてね」

彼らは朝鮮族ではなく華僑と言っていたが、たしかに中国語訛りの強い朝鮮語を話していた。
だが、おばさん同士の会話を聞いていると、北朝鮮内にも親戚がいるようで、北朝鮮の経済政策を批判しているようだった。

私はこのおばさん達のおしゃべりを横で聞きながら、「あんたはどこの国の人だ?」と聞かれたら何と答えようか考えていた。
彼らは朝鮮語ができるから、私の韓国語がネイティブのものでないくらいすぐに気がつくと思う。なので「韓国人です」とは言わずに「在日韓国人です」と答えようかと思った。それが一番無理のない、自然な回答のような気がしたからだ。

しかし結局、「どこの国の人だ?」とは質問されず、「岔道口(チャーダオコウ)の停留所で降りたら道を渡って213番バスに乗りなさい」と親切な助言だけもらって私はバスを降りた。
大声で「カムサハムニダ!(朝鮮語で「ありがとうございます」の意味)」とお礼を言いながら。
 
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岔道口(チャーダオコウ)のバス停留所。ここでバスを乗り換えた。名前のとおり、ここで道が二つに分岐している。

岔道口とは、「分かれ道入り口」という意味で、ここで213番バスと214番バスの路線が分岐していた。
私は岔道口停留所で213番バスに乗り、1元払って九連城に向かった。
九連城は五龍背よりもっと小さな町で、農村の中に道一本だけ商店や銀行や小学校などの施設が並んでいる田舎町だった。
 
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九連城(ジウリエンチェン)のバス停を降りたところ。この道一本に学校、商店、銀行など主要施設が集中している。
 
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九連城周辺の街並み。中国の家はレンガ造りが多い。木と土で家を作る日本や朝鮮とは異なる特徴だと思う。

バス停を降りたはいいものの、遺跡に関する案内板も何も無く、どこへ行けばいいのか皆目見当がつかない。
とりあえずボーッと突っ立っているのはただの不審者なので、特に当てもなく歩き始めた。
歩いていれば何らかの手がかりが得られるのではないかと思った。

「九連城」という名前からすると、おそらく城壁が長く連なっている場所だったのではないかと想像できる。
そうなると、万里の長城のように、山並みに沿って城壁が築かれたのではないか。
したがって、九連城の遺跡にたどり着くためにはまず山を見なければならないだろう。というふうに推測して、山の方に上がっていく道を登ってみた。
 
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九連山の入り口。登るときにはこの入り口を見つけられずに苦労した。前に見える山が九連山。

道の途中で子供たちがメンコ遊びをしていたり、おしゃべりをしていたりした。とてつもなく平凡な風景である。
その平凡な風景に私みたいな部外者は明らかに異質である。
不審者だと思われているだろうな〜、と思いながら、山の方へと上がっていく。
すると道が途中で途切れ、そこでおばさん達が立ち話をしていた。

おばさんが私の姿を見つけて話しかけてきた。
「あんた、どこに行くの?」
「ええと・・・、私は外国人で、学生です。歴史遺跡を探しているんですが・・・」

「歴史遺跡(リーシーイージー)」という言葉を聞いて、向こうも納得したらしい。

「この近くにルーベンベイっていうのがあるよ。それなら、この道を降りて左に行ってもう一度登るといいよ」
それだ!と思った。

「ルーベンベイ」の「ルーベン」は「日本」のことだと思うから、「ルーベンベイ」というのは日露戦争関連遺跡だろう。
この九連城は日露戦争の古戦場だから、その遺跡が残っていてもおかしくないはずだ。
そこに行けば何かわかるかもしれないと思い、「謝謝(シエシエ)」と言って道を下った。
道を下ったところで教えられたとおりに左側に向かって歩いた。ひたすら歩いてみたが、何ら手がかりになりそうなものは見当たらない。
 
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「ルーベンベイ」を探しながら、ふと見つけた小さな祠。何を祀っているのかはわからなかったが、やっぱり中国にもこういう民間信仰の祠はあるのだろう。

「ルーベンベイこちら→」のような案内板が有れば・・・、と期待したのだが、そんなものも無く、ただひたすら田舎道が続くばかり。
仕方なく、そこにいたおじさんに「このあたりに遺跡がありますか?」と聞いてみた。
おじさんは「どこの国の者だ?」と尋ねてきたので、「韓国です」といつもの如く詐称した。
するとおじさんは「遺跡なんて無い」と答えた。さっきのおばさんの発言と食い違う。
単にこのおじさんが知らなかっただけかもしれないが、やたら意味有りげに国籍を尋ねてきたので、もしかしたら相手の国籍に合わせて答えを変えていたのかもしれない。
 
「ルーベンベイ」はあくまでも日本関連の遺跡だから、韓国人には教えないということなのだろうか?ならば「日本人です」と答えれば教えてくれたのだろうか?でも今の国際情勢を考えると正直に答えるのがいいとは限らない。
民族差別の恐ろしいところは他人を信用できなくなることだと思う。
自分が何者であるかがばれた途端に相手の態度が変わるかと思うと、相手を容易に信用できなくなる。だからこちらも嘘をついてしまうことになるのだが、嘘をつけばつくほどそれがばれることへの不安が大きくなり、相手に対する不信感も増大する。
誰だって好きこのんで嘘をつくわけじゃない。嘘をつかなければ迫害されるという恐れから嘘をつくのだ。
何故差別される民族が自分の出自を偽るのか、自分が迫害される側に立つことで今回初めてわかったような気がする。
(つづく)

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