酒・女・歌

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日本のお正月と言えば、この曲。
 
<曲名>
春の海(宮城道雄/シュメー編曲)
 
春?お正月と関係ないじゃん。と思ったら、この曲は1930年(昭和5年)の歌会始の勅題「海辺の巖」にちなんで1929年に作曲されたそうです。なんとなく、もっと昔の曲かと思っていたけど、意外と最近。しかも、鞍の浦(とものうら:広島県福山市)の風景をイメージして作曲されたらしい。宮城道雄(1894〜1956)は神戸生まれですが、8歳で失明する前、福山の祖父母に育てられていたそうです。広島ゆかりの曲だったのか〜!知らなかった
 
<演奏>
ルネ・シュメー(ヴァイオリン)、宮城道雄(筝)【1932年録音、日本ビクター】
https://www.youtube.com/watch?v=oZSnaOxxKUY (6分19秒)
フランスの有名な女流ヴァイオリニストであるシュメーが、かつてわが国にやって来たとき私はある人の紹介で彼女に会った。私は自作のものをはじめ古典などを弾いて聞かせた。シュメーはその中でも「春の海」が大変気に入ったようであった。私たちは言葉は通じなかったが琴とヴァイオリンと合奏をして音楽の上で美しく会話することができた。言葉は通じなくとも音楽を通じて話は出来るものだと思っている。(宮城道雄「無絃琴抄」、読売新聞、1945年(昭和20年)9月16日)[漢字と仮名遣いは一部変更しました]
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ルネ・シュメーはフランスの女性ヴァイオリニスト(1888年生まれ)。当盤は1932年の来日時に録音されたもので、シュメー44歳。すでに世界的な名声を得て、演奏家としてもこれからという年齢だと思うのですが、ローム・ミュージック・ファンデーションの解説によると、フランスに帰国後の消息は分からず、これが最後のレコードとのことです。(Loree注:その後、1947年の録音がCD復刻されました)
「春の海」のレコードは海外でももてはやされた。その後「春の海」は大変多くの人に愛好されるようになった。(中略)シュメーはフランスへ帰ったあとでも、このことを、よいことをしたといって喜んでいたそうである。昭和二十八年「国際民俗音楽舞踏祭」に参加のため、道雄はフランスへ行った。その時道雄はパリで、たえて久しいシュメーに会って、なつかしい昔話しをした。(村松梢風「春の海」、読売新聞、1956年(昭和31年)11月8日)
宮城道雄とシュメーが1953年(昭和28年)にパリで再会したということはピアニストの吉田秀晃さんのブログで知りました(→ http://y2p1973.blog.fc2.com/blog-entry-9.html )。村松梢風の「春の海」は1956年(昭和31年)に読売新聞に連載され、シュメーとの共演と再会に関するエピソードは同年11月7〜8日の紙面にあることが「ヨミダス歴史館」(読売新聞のデータベース)で確認できました。宮城道雄は同年6月に事故死しています。
 
村松梢風の「春の海」は翌年に大日本雄弁会講談社から出版され、その巻末の補遺によるとこれは「小説的」であり、実際、具体的なエピソードを挙げて「あのくだりは全部私の創作」と書いたりもしていますが、おおむね事実に基づいているようで、シュメーとの再会のエピソードも信憑性は高いのではないかと感じました。本書も国会図書館のデータベースで閲覧できます。
 
戦後来日した若きアイザック・スターンも宮城道雄と共演し、そのツーショット写真が中学校の音楽の教材に載っていた記憶があります。現役奏者ではギドン・クレーメルも吉野直子さん(ハープ)との共演で「春の海」を録音しています(編曲者不明)。
 
シュメーの芸風については、あらえびす(作家の野村胡堂の音楽評論家としてのペンネーム)が当時、次のように書いています。
シュメーのヴァイオリンは、そのフランス人らしい豊満な美貌と同じほどに妖艶なものであった。媚態という言葉は不穏当だが、少くともシュメーの演奏に接するものは、なんかしら、むずむずするような、極めて官能的な感銘を受けたものである。(中略)宮城道雄の琴と合奏した『春の海』は宣伝ほどは面白いものでない。この曲はむしろ、宮城道雄の琴に、吉田晴風の尺八で合奏したレコードの方が遥かに面白い。(あらえびす「名曲決定盤」中央公論社、1939年(昭和14年))
あらら、そうですか。そうは言ってもなかなかの聴きもの。シュメーのレコードはCD復刻がほとんど進んでいません。今後のリバイバルを期待したいヴァイオリニストです。

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ヴァイオリン、全然違和感ないです。曲がそういう雰囲気なのか、すごく和風のヴァイオリンの音色ですね。もともとは、琴と尺八???フルートを渋く吹いてるようにも感じる…。

2011/1/4(火) 午後 1:08 [ cavalleria_rusticana73 ]

珍しい演奏をありがとうございます。
ポルタメントを使用し尺八風に聴かせる業を開発されたように思います・・・。
しかし70年も前から洋楽とのコラボがなされて
いるのは宮城道雄だからなのではないでしょうか。
生田流ではあまり聴いた事がないし箏曲の世界では
異端児として見られていたことでしょう。
しかし素敵な一枚で強く印象に残りました♪^^☆

2011/1/4(火) 午後 3:18 ココット

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このSP盤持っていました。昭和20年代後半、ヴァイオリンを習い始めた時、当時出端だった電蓄(プレーヤー)と、エルマンのSP盤と一緒にオヤジに買ってもらったのです。文字通り擦り切れるほど聴きましたよ。残念ながら神戸の震災時に消失してしまいました。

懐かしいレコードありがとうございます。

2011/1/4(火) 午後 3:39 [ jack_violin ]

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こんにちは。宮城道雄さんとルネ・シュメーのお話は、小学生向けの学習百科事典とかで、ちらっと読んだことがあります。
意外だったのは「シュメーさんがフランスに帰国後、消息が分からなくなったこと」でした。

宮城さんが東海道線の寝台列車から落ちたのは、愛知県刈谷市のあたり。
県内ではちょっと遠いけど(刈谷はだいぶ名古屋寄りになる)最期の地が私の比較的近くです。

2011/1/4(火) 午後 4:28 [ SC ]

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バイオリンのフラジオ音が、いい味出してますね〜♪
最近、こういった演奏はなかなかお目にかかれないのでは
ないのでしょうか。

昔、友人の結婚披露宴で、友人:胡弓、私:バイオリンで
「愛の挨拶」を弾いたことがありますが・・・
あのよーなコラボレーションをしたのは、後にも先にも、
あの時だけでした(^_^;

2011/1/4(火) 午後 8:35 Musica

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私の学んだ音楽の教科書では、
まさしくこのシュメーと宮城が共演している写真が掲載されていたのです。
授業で聴かせていただいたのは、無論それではありませんでしたが…
シュメーの録音は大変少ないそうですが、

ドルドラ:思い出(1926年)
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリツィオーソ(1925年)

の二曲が平林直哉氏の手によって復刻されています。(雑誌『クラシックプレス』13号付録CD)
それにしても帰国後消息不明とは。
いったい何があったのでしょう。

2011/1/4(火) 午後 10:32 [ yositaka ]

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いや〜素晴らしい
聴く前は違和感一杯のゲテモノかと(失礼!)
日本の音楽にこうもなじめるものかと驚きもあります
不思議な気持ちにさせて頂きました、ポチ

2011/1/5(水) 午後 0:31 おいちゃん

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cavalleriaさん、Wikipediaでは「筝と尺八、あるいは筝とヴァイオリンの二重奏である。」と紹介されていて、たまげます(笑)

>フルートを渋く吹いてるよう
という表現がユニーク(*^^*) cavalleriaさんらしくて素敵です!

2011/1/6(木) 午後 7:14 [ Loree ]

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ココットさん、この時代の洋楽とのコラボでは、町田嘉章という人が作曲したオリジナルの三味線協奏曲や、近衛秀麿による「越天楽」のオーケストラ編曲があります。伝統芸能の世界から見たらかなり大胆な試みだったのかも。

Wikipediaの解説では、「春の海」は西欧音楽に影響を受けて作曲した作品で、伝統的な近世邦楽ではないと書かれています。ぼくには宮城道雄とそれ以外の区別がつかないけど(汗)、ひょっとしたら作品自体に洋楽とのコラボを受け入れるキャパシティがあったのかもしれませんね。

2011/1/6(木) 午後 8:03 [ Loree ]

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jackさん、このレコードにそんな深い思い出があり、それをここでお聞かせいただけるとは感激しました。神戸の震災は16年前。それまで大切に持っていらっしゃったのに消失されたのは非常に残念です。

子どもの頃に出会った音楽には強い印象が残っていて忘れられません。最近、1枚1枚のディスクを大切に聴いていないと感じていたので、自分も最初の頃はそれはそれは熱心に、大切に、1曲1曲を聴いていた気持ちを思い出しました。ありがとうございました。

2011/1/6(木) 午後 8:07 [ Loree ]

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coraさん、今もぼくの手元にある中学校の副教材はアイザック・スターンとの写真ですが、シュメーの名前はなぜかけっこう早くから知っていたので、きっと他の教材で読んだのを覚えていたのかも。でも、ぼくの場合は小学生の頃ではないと思います(笑)
それにしても、シュメーはヨーロッパ中で高い評価を得ていたそうですから、フランス帰国後の動向が分からないのは本当に不思議です。

coraさんは愛知県にお住まいなんですね。なぜか、ぼくのブロ友さんは名古屋から近畿圏にかけての方が非常に多いです。ぼくも今年は転勤確実なのでドキドキです(汗)

2011/1/6(木) 午後 8:47 [ Loree ]

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musicaさん、さすがviolinistの耳で聴いていらっしゃいますね♪
披露宴で胡弓とviolinですか。ぼくも負けませんよ〜。同僚の披露宴でオーボエとキーボードとエレキギターの三重奏をしました。たまたま集まった三人が自分のできる楽器を持ち寄っただけですが、あのよーなコラボは世界的にも極めて珍しいものだったのではないか…って、何の自慢大会ですか〜(汗)

2011/1/6(木) 午後 8:50 [ Loree ]

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yositakaさんの教科書ではシュメーと宮城道雄の写真でしたか。ぼくの中学校の副教材もスターンじゃなくてシュメーを載せればよかったのに、と思ってきました(笑)

シュメーの録音、何を隠そう、ぼくもクラシックプレスのCDで初めて聴きました!!
ドルドラとサン=サーンスのほか、CD復刻されているのは、
・モーツァルト(クライスラー編曲)/ロンド
・Borowsky/Adoration 【以上2曲、ARC】
・ヴィエニアフスキ/華麗なるポロネーズ第2番 【グリーンドア】
それと「春の海」を合わせて6曲しか知りません。

あらえびすの本では、ハイドンの「メヌエット」とメンデルスゾーンの「春の歌」が紹介されています。いずれ、きちんとまとまった形で復刻されるとよいのですが。買う人がいないのかも(涙)

2011/1/6(木) 午後 8:56 [ Loree ]

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ブルーさん、先入観としては違和感ありますね、確かに!
この「春の海」は、シュメーの共感が伝わってくる演奏だと思います。

2011/1/6(木) 午後 9:01 [ Loree ]

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原曲を忘れちゃうほど、違和感がないです。
バイオリンの音色って様々ですね。
先日、芸能人格付けチェックで練習用バイオリンと、ストラディバリウスの音色の聴き分けに失敗した若輩者です(ショック〜)
いい演奏を聴いて一流に近づきます(苦笑)

2011/1/9(日) 午前 10:48 [ じゅんじゅん ]

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じゅんじゅんさん、何を隠そう、「芸能人格付けチェック」はぼくも苦手であります(汗)
漆原啓子さんがストラディヴァリと一般の銘器で同じ曲を演奏して聴き比べできるようになっているCD(書籍の付属CD)が出ていますので、TV出演の際には事前に予習しましょう(笑)

2011/1/10(月) 午後 6:34 [ Loree ]

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「春の海」についてはシュメーとのバイオリンのコラボレーションも心地よくいいですが、コラムに載っていたハープのバージョンが聞いてみたいものです。

2013/11/1(金) 午前 10:54 [ pin*e*ephan**_110* ]

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pin*e*ephan**_110*さん)
昨年、大先輩からまさにシュメーの「春の海」のSPをいただいて、感激しました。
クレーメル&吉野直子さんの演奏は≪Insomnia(眠れない夜)≫というタイトルのアルバムに収録されています。これは10数年前のアルバムですが、調べてみると、その後に発売された吉野直子さんの≪ベスト・オブ・ベスト≫というアルバムにも収録されているようで、amazon(日本)のサイトで一部試聴できます(冒頭の約30秒間)。「吉野直子」&「ベスト・オブ・ベスト」で検索すると最上位にヒットしますので、お聴きになってみてください。

2013/11/1(金) 午後 11:10 [ Loree ]

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宮城道雄が1945年(昭和20年)9月16日の読売新聞に寄稿したエッセイ「無絃琴抄」にシュメーとの共演を回想するくだりがあるのを見つけましたので、記事本文に追加しました。

2014/5/10(土) 午後 11:50 [ Loree ]

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1956年(昭和31年)11月7〜8日の読売新聞に掲載された村松梢風の「春の海」から、宮城道雄が1953年(昭和28年)にパリでシュメーと再会したエピソードを記事本文に追加しました。

2014/8/17(日) 午後 10:52 [ Loree ]


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