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『恋女房染分手綱・重の井』
『恋女房染分手綱』の粗筋を簡単に述べると、主人公の重の井が産み落としたまま別れていた我が子三吉と折角出逢いながら、主家の名誉とそれに対する義理の為に敢えて再び別離に思い切ろうとする悲劇を描いた物語である。
そこでは重の井の、子に対する思いと今の自分の身との葛藤に苦しみ、それでも最後は気丈に振舞い別れる我が息子を愛おしく思い、その気持ちを扇子で表現する様と三吉の本当は実の父と母と一緒に暮らしたい気持ちをおいらは舞台を通してつい感情移入してしまった。本当に切ない心打たれる物語であった。
三吉演ずる中村児太郎の幼いながらも『自然薯』と呼ばれるほどの野生児を見事に演ずる様はただただ感心するばかりであった。それと何と言ってもこの物語だけでなく、中村福助の女形は見事としか言いようが無い。
なぜなら、今回の物語では妖艶ではないけれど、女の本能である母性を見事に表現できる様は「この人本当は女性ではないのか?はたまた女性の資質を元々お持ちなのか?」と錯覚させるほどの演技を見せてくれる。
現在で『真の女形』を演じられるのは玉三郎か、福助しかいない、と思わせるほどの名演技であった。今月は勘三郎、橋之助など好演者が出ていたが、次回の福助の女形を是非とも諸氏にも生で見て頂きたいものである。それだけ圧巻であった。
来月はいよいよ歌舞伎座で『坂田藤十郎』襲名披露であり、チケットも手配いたしたので(ヤッター!)、その感想をここで紹介したいと思う。
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