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彼がウチに来たのはまだ寒い3月の末だった。
彼は風の様にフラッとやって来た。
彼自身定住する気がないのはさらさらわかっていたけど、
彼が出ていく事なんて考えられなかった。
彼がここを後にすることを言い出した時、
それを受け入れざるえないのはわかっていたから、
自分の立場をわかっていたから、
何故か妙なくらいに話を飲み込むことができた。
いろんな出来事がたくさんあった。
自分の中で、無意識に心を整理していたのだろうか。
今日、彼は出て行った。
ウチに来たときのように風のようにフラッと、
そしてあっさりと。
彼の背中見守った時、
以前毎夜彼女のもとへ帰って行く背中を
見守った日々を思い出した。
同じ背中だけど、また違う背中。
じゃあね…
彼は以前と同じ言葉を残して行った。
同じ言葉だけど、違う言葉。
背中とその言葉を噛み締めた。
妙なほど落ち着いていた自分は何だったんだろう
哀しくて、
淋しくて、
苦しくて、
悔しくて、
わけわからない涙が溢れ出した。
止まらなかった。
ちょうど半年間。
短いようで長かった。
長いようで短かった。
部屋にできた空間
心にできた空間
彼が残していった空間に
ただじっと立ち尽くした。
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