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貧困と人づきあい(91)マリコさん<4>」からのつづき・・・
by ぼそっと池井多

私にはオランダという逃げ道があった

ぼそっと オランダでも、不登校は多いですか。

マリコ オランダでは、基本教育の学校へ行くことが憲法で義務として定められていて、その代わり、行く学校は各人が自由に選べる権利が保障されています。
学校へ行きたくなくなったら、行く学校を自分で変えればよいので、日本でいう不登校のようなことは起こりません。

ぼそっと へえ、そうなんですか。
それでは、マリコさんにとって日本の学校はどんなところですか。

マリコ 私は日本の学校へ行けてよかったと思っています。
友達もいたし、給食もおいしかった。
そして、何よりもああいうひどい貴重な体験ができたので、人生の勉強になりました。

ぼそっと じっさいオランダへ移住して、どうでしたか。

マリコ 日本では、自分を抑圧する体制に抵抗することにエネルギーを費やしてきました。
そういう抵抗が、私のアイデンティティにもなっていました。
ところが、オランダに移住したとたん、抵抗する対象がなくなったのです。

「これをやりなさい」
とは、誰も何もいわない。
自分の人生の責任を、すべて自分で持たなくてはならない。

そこで私の自由が完全に発揮できるようになったのですが、
そこで、
「じゃあ、あなたは何をしたいの?」
と問いかけられる感じがしてきました。

そして、「わかんない」と。

そこから自分探しがはじまり、現在に到っています。
「自分らしく生きるとはどういうことか」
ということを現在進行形で探っています。

でも、それはそうあるべきだとも思います。
人は、課題を一つ克服したら、
また新しい課題にぶつかるものではないでしょうか。

ぼそっと ご一家の中で、オランダに移住したのはマリコさんだけですか。

マリコ いいえ。
今では両親、妹を含め、一家全員がオランダです。

両親は、もう定年退職しているのですが、
福島の原発事故があってから、母親が
「もう日本には住みたくない」
といって、オランダに帰りました。

でも、うちの父は年に3回ぐらい日本に帰ってきます。
ごはんがおいしいとか、サービスがいいとかという理由で。
でも、もともとそこまで日本に執着のない人ですから。
日本の社会は好きじゃないみたいです。

ぼそっと 今回、ウイ監督が日本のひきこもりを取材するのに同行して、日本に帰ってきたわけですが、通訳という立場から、私たち日本のひきこもりはどう見えましたか。

マリコ 取材の手伝いをして、すごくひきこもりの気持ちがわかると思いました。
私には「どうせオランダへ行けばいい」という逃げ道があったし、
両親の理解もあったから、
日本での生活に耐えられましたが、
いま日本でひきこもっている人たちは、
そういうものがない。

日本での生活が人生のすべてになってしまうから、
ひきこもることになるのでしょう。
この取材を通して、ひきこもりの当事者である彼らのことを同士のように感じるようになりました。

ぼそっと どうもありがとうございました。




・・・「貧困と人づきあい(93)」へつづく

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