悪霊横丁de聖書乱読

沖縄在住、,仕事とお絵かきソフトがほしい,体重75キロ。

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テレパス・前編

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いつも隠れて煙草を吸っているM男たちが、「オレらは念力で人間を操作する人たちを知っている。」と得意げに言った。

ん? まさかだろう? 集団ストーカーじゃないのか?
と思ったが、口を開くのが面倒だったので黙って聞くことにする。

「あるオバサンの部屋に隠しカメラを仕込んでいて、念力を送ってそのオバサンを操作するところを見せてもらったんだ。」

(隠しカメラは犯罪だろうが)と睨みつけたが、M男はまったく気にする様子もなく多少興奮してきたのか、へへへと笑いをもらして、
「オレも、その人の隣にいると、念力が使えるようになるんだ。」
と、突拍子もないことを抜かす。

更にジロリと睨みつけたが、M男はあはははと大笑いだ。
挙句に、
「驚いたか、うらやましいか。オレはテレパスなんだ。一応な。」
とほざきやがった。

隠しカメラで他人の生活を盗み見ている奴らが何を言うか。
犯罪者じゃないか、テメェらは・・・。

しかし、こっちが黙って聞いているのをいいことに、M男の奴、そのオバサンをどのように操作したとか、相手の心の声を聞いたとか、好き勝手なことを言い出す。

「それが嘘じゃない証拠を、見せてやるよ。」
M男が言い終わらないうちに、学園の女王が教室に入ってきた。確かに美人だが、つんけんと気取って冷たい顔をしているイケスカナイ女子だ。

窓から差し込む陽光を反射するその白い顔から、目を反らす。
ということで、学校帰りに、人を操作できるテレパスの処に男同士連れ立って向った。

・・・・・・

ごく普通のアパートに住んでいる中年の男と若い女の2人、親子のように見える。どっちもテレパスだという。そして、テレパスには送り手と受け手がいるとも。

見せられたモニター画面に被害者のオバサンが映っていた。隠しカメラを仕込まれていることも知らずに縫い物をしている。

そこに女の方が、(トイレに行きたい。)というメッセージを送った。すると、縫い物を横に置いたオバサンは席を立ってトイレに行くではないか。

トイレの中にいるそのオバサンに、(子供の頃の失敗)というメッセージを送ると、子供の頃の失敗談を心の中で語り始めたのだ。

それが、モニターのスピーカーから少しおかしい音声として聞こえる。テレパスが拾った脳から出る電波をコンピューターで高速処理して音声化しているとうそぶく。思わず笑いそうになったが、大真面目な顔をしてうなずいてみせた。

テレパスという触れ込みのその男女は、自分たちの気に入らない話題にオバサンの思いが向くと、オバサンの部屋の天井に仕掛けた空気銃を使って音を鳴らしたり、床を踏み鳴らす嫌がらせを行う役目をM男たちに交互にやらせた。

あのオバサンが危険思想の持ち主だからだと言う。それを鵜呑みにしたのか、M男たちは喜んで従っている。貰った煙草を吸いながら。

これは、やっぱり集団ストーカーとかいうやつらだろう。
ヤバイ、加担する気はないぞ。

被害者のオバサンはだんだんいらいらが募るようだ。
無理もない。天井からドスドスと断続的な音がすれば、誰だっていい思いはしない。

オバサンは、パブロフの犬のように、強制的に調教されているのだ。
可哀そうに。可哀そうだが、オレの母親じゃなくて良かったとも思う。

しかし、オレは一体どうすればいいんだ。次はオレが嫌がらせをする番だ。なんで来たんだろう、こんな処に。仕方ないから、こいつら全員ぶちのめすか。
となると、返り討ちだよな。M男は意外と強いし、多勢に無勢だ。だが、オバサンに対して多少の気に入らない点があるからといって、嫌がらせをするような子供じみたマネをさせられるのはゴメンだ。

その時に、中年の男がううっ・・・と呻いて頭を抱え「うあああっ。」と叫んだ。どうしたのと言いかけてすぐに若い女も叫び声をあげて倒れた。M男と友人も次々に。

オ、オレじゃないぞ。オレはまだ誰も殴っていない。いや・・・オレは本当はテレパスで、殴ろうと思っただけで相手を倒せるとか・・・?  
まさかだろー・・・。まさかだろー。一体全体どうなっているのか分からずにうろたえたが、救急車を呼ぶつもりで携帯を取り出すと、目の端にヤツラの落とした煙草が目に入った。とりあえず、火の始末を先にしなくちゃ、火事が怖いぜ。

・・・呼ぶなら警察よ。・・・。・・・
どこからか囁く声がする。

モニターを見るが、被害者のオバサンの声ではないようだ。オバサンはなにやら難しそうな本を熱心に音読している。単音をつなぎ合わせたような小さな声が、スピーカーから流れている。気のせいか。オバサンとは全く違う、どこかで聞いたことのある涼やかな声。

・・・気のせいじゃない。聞いて。・・・
・・・あなたは犯罪の実態を知りたかっただけでしょう。・・・
・・・ゴメンネ、心を読んだの。いけないことなのに。・・・
・・・私は本物のテレパス。この人たちのように、悪意のあるニセモノではないわ。・・・
・・・被害者の内耳にマイクロチップを入れて人の考えを言語化したり、小型スピーカーで暗示を与えて操作したりはしないもの。・・・
・・・歩いていたら、「可哀そう」という声が飛び込んできたの。・・・
・・・人の心を詠むと苦しむものよ。人間はいい面ばかりじゃない生き物だから。心を覗くのは罪深いことだわ。だから、誰の心も覗かないように自分を律していたのだけれど。・・・
・・・私は今まで自分の悪霊的な力を封じていたの。・・・
・・・でも、今日やっと、自分の役目に気付いた。科学のチカラを誤用して人の心を覗くような邪悪な人たちが許せない。彼らが法律で裁かれないように立ち回って罪を喜んでいるのなら、その人たちの犯罪を暴くのが、本物のテレパスの役目だということに。・・・
・・・安心して。この人たちは二度と悪の喜びを思い出せなくなる。・・・

・・・・・

その声の言葉のとおりだった。
あの中年男性と若い女性のストーカーカップルは病院送りとなり、その後で人権侵害その他の罪で裁判になるそうだ。M男と友人たちは、自分達があのアパートにいた理由すらおぼろげで、しかも、隠れて煙草を吸っていたことがばれてこっぴどく叱られ、謹慎処分を受けた。

学校に出てきたM男たちは隠れて煙草を吸うこともなくなり、
「テレパシーって、プライバシーの侵害なんじゃないのぉ?」
「学生の本分は隠れて煙草を吸うことではないぞよ。」
などとのたまって、受験勉強に励んでいる。

ところで、オバサンがどうしているか気になってあのアパートに行ってみたが、曇りのない晴れ晴れとした顔で挨拶されてしまった。
当然、あの声も、聞こえない・・・。さわやかな風のように消え去ったのだ。悪を滅ぼして。
まあ、この話はなんだな、きっと。誰も信じてはくれないだろう。
だが、オレに、彼女ができたことは信じてくれるかな? 信じられない相手なんだけど。そう、あのイケスカナイ奴だと思っていた学園の女王・・・。
実は、涼しげな声が好きだ。・・・笑えよ。

しかし、なんでオレなのかな?


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