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(シマダが死んだ。) カイダは目の前が暗くなった。 (地区は違うが昔から知っている。ひょうきんで頭の回るやつだったが、死んだのはやはりアレが関係しているのだろうか。) (ある独り暮らしの女をターゲットにして夜這いをかけ、本人の知らないうちに売春させるというあの『懲らしめ』を。) カイダはふと閃いた。 警察に電話するにしても、電話番号が110番だということを知らなければ救いを求めることはできない。それと同じように、神のことを知らなければ救いを求めることもしにくいものだと。 カイダの脳裏にシマダの得意げな笑顔が浮かぶ。 『神だと? それは誰のことだ?』と笑っていた。 (単に深入りしたからといって殺されたりはしないはずだ。シマダは何らかの点で邪魔になったかミスをしたかで始末されたのかもしれない。)とカイダの唇の端がにんまり歪む。自殺や事故死に見せかけて始末されるのは、ターゲットばかりではない。カイダは集団ストーカーの仲間が始末されたケースもいくつか知っている。 一人は、組織にとって利用価値の高い被害者の身代わりに殺された。 一人は、これも組織にとって利用価値の高い被害者に殺されたので、隠蔽した。 一人は、組織にとってただのコマであることを自覚していず、その口の軽さによって殺された。 一人は・・・ 人が殺される理由は、たとえそれが正当な理由ではなくても、いくらでもあるものだと呆るカイダ。そして、もはやカイダ自身が瞑目するときだと。 トップの声がした。 「カイダ。お前はターゲットにバイクのナンバーを知られ、家を知られ、名前を知られ、組織のメンバーであることを知られ、行動のパターンを撮影記録され、我々との関わりを撮影記録され、どのような手口で被害者に知られずに『懲らしめ』を行ったかを知られた。」 別の声が、悲しげに呟いた。 「使えるヤツだと思っていたが、ヘマなやつ。お前よりもターゲットの方が一枚上手だったようだ。まさか我々を訴えてくるとは・・・。」 「こうなったら、道は一つ。君には海外へ飛んでもらうよ。」
カイダは知っている。海外へ飛ばされるということの意味を。 パスポートもいらず、お金もいらず、旅行鞄を準備することもなく、航空券の予約もなし・・・ただ、この地面の外に飛ばされるのだということを。 |
★怖い短編小説
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