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テレパス前編をまだお読みでない方は、下のURL(前のページ)から先にどうぞ。 ・・・・・・・テレパス後編・・・・・・・・ 煙草を吸わなくなったM男たちが、 「オレらは、念力で人間を操作することができると言っていた人たちを知っている。」 と触れ回っていた。 「あるオバサンの部屋に隠しカメラを仕込んでいて、念力を送ってそのオバサンを操作するところを見せてもらったんだ。」 (何を吹聴する気だ。)と睨みつけたが、M男はこっちにまったく気づかずに、数人の友人の前でポリッと頭を掻いて、 「オレも、その人の隣にいると、念力が使えるようになると言われて、その気になって・・・。」 と、すっかり思い出したようにしゃべる。 声をかけようかと思ったが、M男のセリフに足が止まった。 M男は、 「お前ら、集団ストーカーって知ってるか? なに、知らない? お前ら遅れているなぁ。今時集団ストーカー犯罪を知らないなんて。」 とほざきやがった。 集団ストーカーのカップルに加担してたのは誰だぁ? 隠しカメラで他人の生活を盗み見ながら嫌がらせを楽しんでいた奴らが、よく言うよ、エラソウに。 アホじゃないのか、テメェらは・・・。 しかし、話の腰を折る気が失せて、黙って聞くことにした。するとM男の奴、そのオバサンをどのように操作したとか、相手の心の声を聞いたとか、やっぱり危ないことを言い出す。しばしの我慢が必要だった。 「それはさ、相手の身体の内部になにかしらの通信機器を埋め込んだテクノロジー犯罪だったんだ。ハ・ン・ザ・イ。」 M男が言い終わらないうちに、学園の女王が教室に入ってきた。 確かに美人だ。 以前はつんけんと気取って冷たい顔をしているイケスカナイ女子だと思っていたが、笑え、今はオレの彼女・・・らしい。 オレの方から告白したんじゃない。 そんな度胸はない。 あの事件の翌日、一緒に下校しようと誘われたのだ。それから毎日・・・。巷では女王のご指名だとの噂だが、単なるボディガードのつもりかも。 なんでオレなのか、尋ねてみる度胸もない。 しかし、陽光をまとっているようなその白い顔を、まだ、マトモに眺めるのは気恥ずかしい。羞恥心が芽生える関係だ。 「ねぇ、B君、私、ちょっと相談が・・・」 と、オレの顔を覗き込んでくる。思わず引くと、うふふと笑う。まるで心を読まれているようだ。 ////////////// うううっ、うわぁぁ・・・と叫んで数人の男達が次々と倒れた。 男たちの耳の奥、いや脳の全体に反響する、若い女性の声。 その声がまるで脳の中を自在に駆け巡るようにラウンドしては、 「犯罪者、全部知っているぞ。お前の名前は0000だ。」 と罵るのだ。 身をよじるほどの苦痛。 集団でストーカー行為を働いているアパートの一室で、一時的に気を失った男女の耳にパトカーのサイレンが聞こえた時のことを、後に彼らは激しい頭痛から救われたと裁判で証言している。 被害者たちのブログに、近所で盗撮盗聴を行っていた集団が逮捕されて、ストーカー被害が終焉したという報告がアップされてゆくにしたがって、学校でもM男たちのことが話題になった。加担して謹慎処分を受けたアホがいると。 しかし、ストーカー逮捕記事は、被害者のブログだけでなく、一般人のブログにも事件情報として扱われるようになり、日本だけでなく、海外でもまるでブームのように集団ストーカーの摘発が続いていた。 「ねぇ、B君。私ね、加害者と被害者に分けられるのは、善悪の基準が人によって違うからじゃないかと思うの。集団ストーカーのように、やってはいけないことも分からないような人間がいるのは、世界的に善悪の基準が一致していないからだと思うのよ。」 学校前バス停から一つ先のバス停まで、川沿いの道を並んで歩く。西日で川面がきらめいていた。 彼女の話は難しくて半分しか理解できないが、大真面目な顔でうんうんとうなずく。惚れた弱みだ、仕方ない。 「B君は、最近ブームになっている集団ストーカーの摘発と裁判についてどう思う?」 「ああ、あれ、集団ストーカー規制法ができるって聞いたけど?」 何とか話題についていく。 「そうなの。法ができてからストーキングするヤツラは厳罰だって。」 西日の暑さも忘れさせてくれる清涼感のある声だ。 「今まで規制されていなかったのがおかしいほどだよな。被害者の身になってみれば。」 あのアパートでの不快感がよみがえって、思わず本気で答えた。 彼女は嬉しそうに笑った。 頬の辺りが水面からの反射光でぼやけている。 「で、相談があるんだけど、高い善悪の基準って、なんだかチキンと習ったことがないような気がするの。倫理の時間以外は生活の中で自然に学習して、それで支障がなかっただけ、みたいな・・・。B君はしっかりしているよね。善悪の基準が。それでね・・・」 え? え? あれ? いや、そんなことは・・・。 しかし、なぜオレのことを善悪の基準がしっかりしているなんて思うのだ? 「B君、待って・・・ああ・・・。」 彼女の表情がみるみる凍り付いてゆく。黒目が見開かれ、唇がかすかに動いたが、何を言っているのかまったく聞き取れない。 彼女は耳を塞いでうずくまった。鞄が投げ出される。 「どうした?」 オレもしゃがみこむ。 苦しそうな顔が紅潮していくのが見て取れた。 それとほぼ同時くらいに、 「「「うわあああ!!」」」 近所から、凄まじい叫び声が聞こえる。 すぐ傍のアパートの上の階だ。 オレは一瞬、とまどった。 うずくまったままの彼女を置き去りにして叫び声の方へ行くわけにはいかない。だが、ただならぬ叫び声だった。何事かが起きたのだ。 「B君、警察を呼んで・・・。」 彼女が苦しげに嘆願する。 しかし、何故警察? アパートの上の階を目線で示されて初めて、オレは自分の勘の鈍さに眉をしかめながら携帯を開いた。 「もしもし、パトカーを要請します。」 と言うか言わないうちに、立ち上がった彼女が 「お前らは犯罪者だっ。全部知っているぞ。お前の名前は0000だ。お前は000.お前は0000だ。その女から手を引けーっ。」 と、怒りの気を発するように両手を掲げて唸り始めた。 緑の黒髪を逆立てた、学園の女王とは思えないほどの凄まじい形相で。 尻餅をついたオレの携帯から、そこはどこですか、と婦人警官の声がする。 あれは夢だったのだろうかと、時々思う。 あの後、彼女は海外留学、相談したいこととはそのことだったらしい。オレはどこでもいいから取り合えず大学には入っておこうと、必死の受験勉強だ。将来は地方検事局で働ければ・・・と夢想中。 そして何度も思い出す。最初に聞いたテレパスの声。 まるでジグソーパズルのピースをつなげるように。 ・・・私は今まで自分の悪霊的な力を封じていたの。・・・ ・・・でも、今日やっと、自分の役目に気付いた。邪悪なストーカーたちを退治するのが、私の役目だということに。・・・ 彼女は誰にも言わず、一人で闘っていたのだろうか。 集団ストーカーから被害者を救い出すために。 ところで、M男は「悪いことをするのが死ぬほど怖い」という題で、校内弁論大会で喝采を勝ち得た。大爆笑の後の、正直な懺悔にホロリとさせられた。その場にいた全員が、悔い改めの弁論主旨を納得する出来だった。 ただのアホかと思っていたが、見直したよ。 夕暮れに、着信があった。 「B君?・・・私よ。お久しぶり。今、話せる?」 なんて携帯にかけてくるのは、うちの母親にもできない芸当だ。 オレは彼女の涼しげな声にずっと憧れていた。 「驚いた・・・。久しぶりだね。」 迂闊にも、妙に明るい声が出た。 「あれ以来、B君とはなんだか疎遠になってたね。 私、聖書研究クラブに入ったの。 学校の部活。実は、ほとんどが世界中から集まった留学生で・・・ 部員全員が元は私と同じ・・・テレパスなの。」 「テレパス?・・・やっぱり・・・。」 目の前が暗くなる。 「聞いてくれる? 私と同じように助けを求めていた人たちなの。 誰の心も読めなくなる方法を探していたの。」 「テレパスだってことを悩んでいたの?」 思いがけない話に面食らったが、彼女が長いこと悩んでいたことに気付かないでいたことにもショックを受けた。 「ええ。でも、今は大丈夫よ。 ここにはテレパスが聖書研究を通して異常な能力を捨て去ることでは歴史があるのよ。代々続いているの。 それで、ここの高校に集まってくるのよ、世界中のテレパスが。 どこの高校って言えないけど。 だから私も、研究が進めば人の心にメッセージを伝えることは出来なくなるわ。」 そう言われるとなんだかもったいないような気がするものなんだな。 でも、そういう能力は危険だ。高い善悪の基準をもっていなければ。ああ、それであの時・・・。 ジグソーパズルのピースが繋がった感じだ。いやに回りくどい相談事だと思っていたが、そうだったのか。 「B君、電話をきったら、私のテレパスとしての最後のメッセージをあなたに送るわね。元気でね。次からはメールするから、」 その言葉を最後に電話は切れ、オレは携帯を閉じた。 すかさず、耳元で涼しげな声が。 その声は 「・・・・・」 と囁くと、うふふと笑ってさわやかな風のように消え去った。 え? なんと囁かれたのかって? それは、大切なヒ・ミ・ツ・にしておく。 オレだけの宝物だ。 ぎぇ〜っ、照れる。
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2008年08月27日
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ハーフのA子ちゃんは見るからに可哀そうな子だったので、子と言っても30半ば。もう立派な大人の女性なのですが、細くて美形なので、若く見えるのです。 |
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