悪霊横丁de聖書乱読

沖縄在住、,仕事とお絵かきソフトがほしい,体重75キロ。

★怖い短編小説

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秘密のナナナ研究所

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第一話 永遠に生きるサンゴ

本土から遠く離れたトアル村には、不思議な言い伝えがあった。
それは、永遠に生きるサンゴの話だ。

そのサンゴは産卵するわけではなく、200年に一度、親サンゴの枝の一部が枝分かれして、海底に着床した小さな枝が大きく育つという。
それを繰り返して、サンゴは巨大になっていた。

戦争が起きて、トアル村のあった島はその存在を地上から消されたが、その最後の生き残りだった老人の話を、誰も貴重なものとは思わなかった。
老人は「あのサンゴは大昔から生きているのじゃ。しかし、村にできた研究所の人たちが、その秘密を調べようとして切り取ってみたが、無駄じゃったらしい。それで、自然に親別れしたサンゴの小枝を齧ってみるかと、村では噂しあったものだ。どうじゃ、今年が200年目じゃ。誰かサンゴの小枝を拾いに行く者はおらんか。」と言っていたのに。

そして今日はサンゴの枝分かれの日。
永遠に生きることのできるエネルギーが詰まったサンゴの小枝が、海底を浮遊している。


第二話 秘密のナナナ研究所

冬も間近なのに、まだ、セミの声が聞こえる。
ここは、とあるところにある秘密のナナナ研究所。

森の真ん中にポツンと建つ白亜の研究所で、年老いて腰の曲がった老人と頭の禿げ上がった老人がコーヒーを飲んでいた。
頭の禿げ上がった老人が言った。
「博士、あのセミはもう50年も生きているのですから、やはり博士の研究は成功したんですよ。永遠に生きるサンゴの小枝から抽出したエキスがセミを長生きさせているんです。」
このセリフを、助手と思しきこの老人はもう45年も言い続けていた。
博士と呼ばれた老人は、いつもなら
「そうだな。しかし、たった数十年ではまだ永遠とは言えない。」
と答えるところだ。
だが、今日の答えは違っていた。
「そうだな。そろそろ人体実験でも始めようか。」
と曲がった腰を伸ばし伸ばし言ったのだ。
年老いた助手の目が星のようにまたたいた。。
「博士、是非、私に永遠に生きるエキスを注射してください。」
熱意のこもった声に博士は驚いた。
「いやいや、ブルータス君、それはできない相談だ。それなら私が被験者に・・・。」

そのときだった。グラグラッと揺れが始まり、二人が逃げ惑っているうち島中が揺れて、ナナナ研究所は倒壊してしまった。

二人の老人はどうなったのか定かでない。
揺れが収まった後、ナナナ研究所の瓦礫の隙間から、大木に向かって飛ぶ小さな黒い影が、青空をよぎった。実りの季節を過ぎた、森の中で。


第三話 噂

トアル国の秘密のナナナ研究所が倒壊してからしばらく後、近くの村で奇妙な噂が立った。それは、冬支度を始める頃だというのに、森から聞こえるセミの声に起因する。

村人は、立入り禁止区域にあったナナナ研究所が作った長生きするセミではないかと、寄るごとに噂しあった。
「あのセミを捕まえれば、お金になるかもしれん。」
虫取り網を手にして森に分け入る村人の耳に、セミの声はいよいよ大きくはっきりと聞こえる。
「あ、いたぞ、そこだ。そこの大木の上に・・・。」
若者が一本の大木を指差した、そのときだった。
「スパイか。」
しゃがれ声ながらも鋭い語調で現れたのは、薄汚れた白衣の腰の曲がった老人二人。「あのセミはわしらの永遠の命だ。お前らには渡さんぞ。」
恐ろしい形相で杖を振り回しながら、村人を森から追い出した。

「博士、あの村人たちは虫取り網を残して逃げていきましたよ。」
「それは不幸中の幸いじゃ。どれ、ワシは腰が利かんので、お前がそれでセミを捕まえなさい。」
「博士、このごろ私も腰が痛くて伸ばせないのですが・・・。」
「ブルータスよ、お前もか。しかしワシは腹が減って死にそうじゃ。」

村を新しい噂が駆け巡る。
「秘密のナナナ研究所では怪人を作っていたらしい。その怪人は、セミが永遠の命だと言っていたそうだ。永遠の命は神が与えてくださるものでセミが与えるものではないのに。」

・・・ ・・・。

海外へ

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(シマダが死んだ。)
カイダは目の前が暗くなった。
(地区は違うが昔から知っている。ひょうきんで頭の回るやつだったが、死んだのはやはりアレが関係しているのだろうか。)

(ある独り暮らしの女をターゲットにして夜這いをかけ、本人の知らないうちに売春させるというあの『懲らしめ』を。)

カイダはふと閃いた。
警察に電話するにしても、電話番号が110番だということを知らなければ救いを求めることはできない。それと同じように、神のことを知らなければ救いを求めることもしにくいものだと。

カイダの脳裏にシマダの得意げな笑顔が浮かぶ。
『神だと? それは誰のことだ?』と笑っていた。

(単に深入りしたからといって殺されたりはしないはずだ。シマダは何らかの点で邪魔になったかミスをしたかで始末されたのかもしれない。)とカイダの唇の端がにんまり歪む。自殺や事故死に見せかけて始末されるのは、ターゲットばかりではない。カイダは集団ストーカーの仲間が始末されたケースもいくつか知っている。

一人は、組織にとって利用価値の高い被害者の身代わりに殺された。
一人は、これも組織にとって利用価値の高い被害者に殺されたので、隠蔽した。
一人は、組織にとってただのコマであることを自覚していず、その口の軽さによって殺された。
一人は・・・

人が殺される理由は、たとえそれが正当な理由ではなくても、いくらでもあるものだと呆るカイダ。そして、もはやカイダ自身が瞑目するときだと。

トップの声がした。
「カイダ。お前はターゲットにバイクのナンバーを知られ、家を知られ、名前を知られ、組織のメンバーであることを知られ、行動のパターンを撮影記録され、我々との関わりを撮影記録され、どのような手口で被害者に知られずに『懲らしめ』を行ったかを知られた。」

別の声が、悲しげに呟いた。
「使えるヤツだと思っていたが、ヘマなやつ。お前よりもターゲットの方が一枚上手だったようだ。まさか我々を訴えてくるとは・・・。」

「こうなったら、道は一つ。君には海外へ飛んでもらうよ。」
カイダは知っている。海外へ飛ばされるということの意味を。
パスポートもいらず、お金もいらず、旅行鞄を準備することもなく、航空券の予約もなし・・・ただ、この地面の外に飛ばされるのだということを。

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「キコエル様のお側にいるだけで、普通の人間である我々にも、ほかの人の心の声が聞こえるようになるのです。」
茶髪の女性が言った。

田中は、どこかでそんな話を聞いたことがあったのを思い出し、不思議とも思わずにうなずいてみせる。

「これは外から聞こえる実音を遮断するための耳栓です。」
女性は田中の耳に、小さな綿の塊を装着した。

それで外側からの音が聞こえなくなり、ミエルキコエル様の能力の一部を感じ取りやすくなるということらしいと、漠然と了解した田中は、自分の耳を覗く若い女性の息遣いに気をとられている。
女性に牽引される牛のように、田中と田中の友人二人は噂の霊能者の部屋へと立った。

ミエルキコエル様はごくごく普通の中年男性の場合もあれば、若い女性の場合もある。集団ストーカーが用意した人物、それがミエルキコエル様なのだ。

(なんだ、普通のオジンじゃねえか。)
「なんだ、普通のオジンじゃねえか、と思いましたね。」

田中は驚いたが、(マグレカモ。シラをきってやろう。)と、思い直した。

「マグレカモ。シラをきってやろう、と思いましたね。いいですよ。あなたの考えはすべて読めますから、どんなことでも考えて御覧なさい。」

'(今のもマグレだろう。誰でも同じ反応をするに違いない。じゃあ、今日の昼食のメニューは誰かに見られていたかも知れないから、そうだ、夕食になにを食べるか考えてみるか。」

「夕食のメニューを考えるのですね。昼食は誰かに見られていたかもしれないから。誰でも同じ反応をすると思って、マグレだという考えから離れることができないのですか。」

田中はますます驚いたが、自分のほうから「では今はなにを考えたかわかりますか?」などと言っては面白がり、彼らの思う壺にはまってゆく。

田中の耳に装着した耳栓は、綿でくるまれた小型スピーカーと脳から流れる電流をパソコンに送るマイクロチップ。パソコンで言語化された田中の思考を音声化して、キコエル様の内耳に装着したスピーカーに送る。
それで偽者のエスパーの出来上がり。

田中の耳に『so-kaのクズどもが、集団ストーカーなんて卑怯な真似はやめてよね。』と、苦々しくののしる女の声が聞こえた。
顔色を変える田中。

「驚くのも無理はありません。その声は、あなたの入信しているso-kaを批判しているブッテキの声です。」と、キコエル様が眉根を曇らせる。

「私が懲らしめてやります。」と田中は胸を張った。
田中は耳栓を返した後、ふと呟いた。

「あれ?・・・何か聞こえる・・・『この馬鹿、本当に信じていやがる。機械に弱いやつは騙しやすいから楽勝楽勝・・・それにしても臭いな、コイツ。2度と会いたくないもんだ。』・・・って・・・あんたの心の声か。騙すとはどういう意味だ。機械に弱いやつは騙されやすいから楽勝楽勝って、キコエルというのはウソなのか。」
田中はキコエル様に詰め寄った。

「キコエル様になにするんですかっ。(このゴキブリが・・・。)」

「ゴキブリだって? ヒドイな、あんた。綺麗な顔をしているのに。俺のことをそんなふうに思っていたのか。」

驚いた目で田中を見る若い女性の目に嫌悪感が走る。
(私の心を読んだ。コイツ、本物のテレパスなの?)

「違う、おれはテレパスなんかじゃない。何かの間違いだ。というか、キコエル様の威力がまだ俺に残っているんだろう。それとも本当に、キコエル様は偽者なのか。騙したのか。」
田中の形相に女性は悲鳴を上げ、田中は友人たちに取り押さえられた。

田中は座敷牢で耳を塞いでもがき苦しんでいた。いくら痛み止めを飲んでも効かない。それどころか、今では町中の人の禍々しい声が渦巻く轟音のように聞こえるのだ。
とうとう田中は狂い始めた。
「俺が本物のキコエル様だ。あはははは・・・・。」

屋敷の内で、ばたばたと倒れてゆく人たち。
「禍々しい声が・・・キコエル〜。」と叫びながら。

幽霊の役目

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丘の上の高級ホテルの玄関口に、一台の車が停まった。

若くて身なりのよい男性が運転席から降りると、車の前を横切って助手席のドアを開けた。
美しい女性が降りる。
「ぼくは地下の駐車場に車を置いてくるから、レストランの予約席に先に行ってておくれ。」
「ええ、待っているわ。」

ところが、いくら待っても男性は姿を現さない。
レストランの予約席に一人ぽつんと座った彼女は、時計を見て首をかしげ、それからレストランを出て地下の駐車場に向った。

彼女が駐車場でパートナーの車を探していると、一台の車が発進して彼女の身体すれすれに通り過ぎた。
「おい、危ないところだったぞ。酷い運転だなぁ。あの女の人をもう少しで轢くところだった。」
と、助手席の初老の男が言った。
「ええっ? 何をいってるんだい? 誰もいなかったじゃないか。」
「女の人がいただろう、お前の側に。」
「目の錯覚じゃないの? 最近かすんできたって言ってたし。」

レストランのラストオーダーの時間に、二人のウエイターが小声で話した。
「毎月この日には一人でお見えになっていたあの予約席のおかしなお客さん、今夜はとうとう姿をあらわさなかったね。いつも見えない相手と会話を楽しんでいた様子だったのだけど、少し怖かった。」
「そうだね。奥さんが亡くなってからは、月命日には必ず来ていたんだけどね。この思い出のレストランで2人分の食事を並べて思い出に浸りきって・・・。でも、どうしたんだろうね。」

「あ、あったわ。」
ドアも開けずにスルリと助手席に座った彼女の目に映ったのは、運転席にうな垂れている男性の胸のあたりからお腹まで真っ赤に染める血。
「ああ、あの昔の知り合いとかにとうとうやられちゃったのね。じゅあ、あなたはもう、用済みだわ。」
女性の姿はみるみるうちに運転席の男性とそっくりに変貌した。
「この姿で、あなたの昔の知り合いとやらに取り付いてくるわね。あなたの死後の魂が復讐に現れたと思って、きっと驚くわね。私・・・じゃなかった、もうボクだった。ボクは死んだ人間に化けて、死後の魂を人間に信じさせるのが役目だからね。悪霊の世界でもかなりのやり手だから、あいつをびびらせてみせるよ。」

胸元を赤く染めた男性が、夜の街にゆらゆらと出て行った。

テレパス・後編

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テレパス前編をまだお読みでない方は、下のURL(前のページ)から先にどうぞ。


・・・・・・・テレパス後編・・・・・・・・

煙草を吸わなくなったM男たちが、
「オレらは、念力で人間を操作することができると言っていた人たちを知っている。」
と触れ回っていた。

「あるオバサンの部屋に隠しカメラを仕込んでいて、念力を送ってそのオバサンを操作するところを見せてもらったんだ。」

(何を吹聴する気だ。)と睨みつけたが、M男はこっちにまったく気づかずに、数人の友人の前でポリッと頭を掻いて、

「オレも、その人の隣にいると、念力が使えるようになると言われて、その気になって・・・。」
と、すっかり思い出したようにしゃべる。

声をかけようかと思ったが、M男のセリフに足が止まった。

M男は、
「お前ら、集団ストーカーって知ってるか? なに、知らない? お前ら遅れているなぁ。今時集団ストーカー犯罪を知らないなんて。」
とほざきやがった。

集団ストーカーのカップルに加担してたのは誰だぁ?

隠しカメラで他人の生活を盗み見ながら嫌がらせを楽しんでいた奴らが、よく言うよ、エラソウに。

アホじゃないのか、テメェらは・・・。

しかし、話の腰を折る気が失せて、黙って聞くことにした。するとM男の奴、そのオバサンをどのように操作したとか、相手の心の声を聞いたとか、やっぱり危ないことを言い出す。しばしの我慢が必要だった。

「それはさ、相手の身体の内部になにかしらの通信機器を埋め込んだテクノロジー犯罪だったんだ。ハ・ン・ザ・イ。」

M男が言い終わらないうちに、学園の女王が教室に入ってきた。
確かに美人だ。

以前はつんけんと気取って冷たい顔をしているイケスカナイ女子だと思っていたが、笑え、今はオレの彼女・・・らしい。

オレの方から告白したんじゃない。
そんな度胸はない。

あの事件の翌日、一緒に下校しようと誘われたのだ。それから毎日・・・。巷では女王のご指名だとの噂だが、単なるボディガードのつもりかも。

なんでオレなのか、尋ねてみる度胸もない。

しかし、陽光をまとっているようなその白い顔を、まだ、マトモに眺めるのは気恥ずかしい。羞恥心が芽生える関係だ。

「ねぇ、B君、私、ちょっと相談が・・・」
と、オレの顔を覗き込んでくる。思わず引くと、うふふと笑う。まるで心を読まれているようだ。


//////////////


うううっ、うわぁぁ・・・と叫んで数人の男達が次々と倒れた。

男たちの耳の奥、いや脳の全体に反響する、若い女性の声。


その声がまるで脳の中を自在に駆け巡るようにラウンドしては、
「犯罪者、全部知っているぞ。お前の名前は0000だ。」
と罵るのだ。


身をよじるほどの苦痛。


集団でストーカー行為を働いているアパートの一室で、一時的に気を失った男女の耳にパトカーのサイレンが聞こえた時のことを、後に彼らは激しい頭痛から救われたと裁判で証言している。


被害者たちのブログに、近所で盗撮盗聴を行っていた集団が逮捕されて、ストーカー被害が終焉したという報告がアップされてゆくにしたがって、学校でもM男たちのことが話題になった。加担して謹慎処分を受けたアホがいると。


しかし、ストーカー逮捕記事は、被害者のブログだけでなく、一般人のブログにも事件情報として扱われるようになり、日本だけでなく、海外でもまるでブームのように集団ストーカーの摘発が続いていた。



「ねぇ、B君。私ね、加害者と被害者に分けられるのは、善悪の基準が人によって違うからじゃないかと思うの。集団ストーカーのように、やってはいけないことも分からないような人間がいるのは、世界的に善悪の基準が一致していないからだと思うのよ。」


学校前バス停から一つ先のバス停まで、川沿いの道を並んで歩く。西日で川面がきらめいていた。


彼女の話は難しくて半分しか理解できないが、大真面目な顔でうんうんとうなずく。惚れた弱みだ、仕方ない。


「B君は、最近ブームになっている集団ストーカーの摘発と裁判についてどう思う?」



「ああ、あれ、集団ストーカー規制法ができるって聞いたけど?」
何とか話題についていく。



「そうなの。法ができてからストーキングするヤツラは厳罰だって。」
西日の暑さも忘れさせてくれる清涼感のある声だ。



「今まで規制されていなかったのがおかしいほどだよな。被害者の身になってみれば。」
あのアパートでの不快感がよみがえって、思わず本気で答えた。



彼女は嬉しそうに笑った。
頬の辺りが水面からの反射光でぼやけている。

「で、相談があるんだけど、高い善悪の基準って、なんだかチキンと習ったことがないような気がするの。倫理の時間以外は生活の中で自然に学習して、それで支障がなかっただけ、みたいな・・・。B君はしっかりしているよね。善悪の基準が。それでね・・・」


え? え? あれ? いや、そんなことは・・・。
しかし、なぜオレのことを善悪の基準がしっかりしているなんて思うのだ?

「B君、待って・・・ああ・・・。」



彼女の表情がみるみる凍り付いてゆく。黒目が見開かれ、唇がかすかに動いたが、何を言っているのかまったく聞き取れない。



彼女は耳を塞いでうずくまった。鞄が投げ出される。


「どうした?」

オレもしゃがみこむ。

苦しそうな顔が紅潮していくのが見て取れた。



それとほぼ同時くらいに、
「「「うわあああ!!」」」
近所から、凄まじい叫び声が聞こえる。
すぐ傍のアパートの上の階だ。



オレは一瞬、とまどった。
うずくまったままの彼女を置き去りにして叫び声の方へ行くわけにはいかない。だが、ただならぬ叫び声だった。何事かが起きたのだ。



「B君、警察を呼んで・・・。」

彼女が苦しげに嘆願する。
しかし、何故警察?

アパートの上の階を目線で示されて初めて、オレは自分の勘の鈍さに眉をしかめながら携帯を開いた。



「もしもし、パトカーを要請します。」
と言うか言わないうちに、立ち上がった彼女が
「お前らは犯罪者だっ。全部知っているぞ。お前の名前は0000だ。お前は000.お前は0000だ。その女から手を引けーっ。」
と、怒りの気を発するように両手を掲げて唸り始めた。
緑の黒髪を逆立てた、学園の女王とは思えないほどの凄まじい形相で。



尻餅をついたオレの携帯から、そこはどこですか、と婦人警官の声がする。








あれは夢だったのだろうかと、時々思う。

あの後、彼女は海外留学、相談したいこととはそのことだったらしい。オレはどこでもいいから取り合えず大学には入っておこうと、必死の受験勉強だ。将来は地方検事局で働ければ・・・と夢想中。



そして何度も思い出す。最初に聞いたテレパスの声。
まるでジグソーパズルのピースをつなげるように。



・・・私は今まで自分の悪霊的な力を封じていたの。・・・

・・・でも、今日やっと、自分の役目に気付いた。邪悪なストーカーたちを退治するのが、私の役目だということに。・・・



彼女は誰にも言わず、一人で闘っていたのだろうか。

集団ストーカーから被害者を救い出すために。



ところで、M男は「悪いことをするのが死ぬほど怖い」という題で、校内弁論大会で喝采を勝ち得た。大爆笑の後の、正直な懺悔にホロリとさせられた。その場にいた全員が、悔い改めの弁論主旨を納得する出来だった。

ただのアホかと思っていたが、見直したよ。







夕暮れに、着信があった。
「B君?・・・私よ。お久しぶり。今、話せる?」
なんて携帯にかけてくるのは、うちの母親にもできない芸当だ。



オレは彼女の涼しげな声にずっと憧れていた。
「驚いた・・・。久しぶりだね。」
迂闊にも、妙に明るい声が出た。



「あれ以来、B君とはなんだか疎遠になってたね。
私、聖書研究クラブに入ったの。
学校の部活。実は、ほとんどが世界中から集まった留学生で・・・
部員全員が元は私と同じ・・・テレパスなの。」



「テレパス?・・・やっぱり・・・。」
目の前が暗くなる。



「聞いてくれる? 
私と同じように助けを求めていた人たちなの。
誰の心も読めなくなる方法を探していたの。」



「テレパスだってことを悩んでいたの?」
思いがけない話に面食らったが、彼女が長いこと悩んでいたことに気付かないでいたことにもショックを受けた。



「ええ。でも、今は大丈夫よ。
ここにはテレパスが聖書研究を通して異常な能力を捨て去ることでは歴史があるのよ。代々続いているの。
それで、ここの高校に集まってくるのよ、世界中のテレパスが。
どこの高校って言えないけど。
だから私も、研究が進めば人の心にメッセージを伝えることは出来なくなるわ。」



そう言われるとなんだかもったいないような気がするものなんだな。

でも、そういう能力は危険だ。高い善悪の基準をもっていなければ。ああ、それであの時・・・。

ジグソーパズルのピースが繋がった感じだ。いやに回りくどい相談事だと思っていたが、そうだったのか。



「B君、電話をきったら、私のテレパスとしての最後のメッセージをあなたに送るわね。元気でね。次からはメールするから、」


その言葉を最後に電話は切れ、オレは携帯を閉じた。



すかさず、耳元で涼しげな声が。
その声は
「・・・・・」
と囁くと、うふふと笑ってさわやかな風のように消え去った。
  


え? なんと囁かれたのかって?
それは、大切なヒ・ミ・ツ・にしておく。
オレだけの宝物だ。

ぎぇ〜っ、照れる。

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