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「奇跡のピアニスト」 〜フジ子・ヘミング物語〜(シナリオ)12 ※大月家の居間
投網子、吉野、ウルフがいる。
郵便屋の声「航空便で〜す」
玄関に取りに行くウルフ。
ウルフ「姉さんからだ!」ウルフ、直ぐに郵便をもって戻ってくる。
投網子が開封して、フジ子からの手紙を読み上げる。
投網子「バーンスタイン先生に1週間に渡るコンサートを開いて貰うんだって・・・」
思わず3人から、万歳の声が起る。
吉野「お赤飯を炊かないとね」投網子「そうね。取り合えずは、世界への第一歩を踏み出したんだからね」
嬉しそうな、投網子の顔。
※ウィーンの病院
耳鼻科の診察室
フジ子「何とか、聞こえる様にしてください」左耳の治療を受けているフジ子。 医師が紙に文字を書く。 「完全には直らない」
書き文字「少しづつは、聞こえる様になるかもしれない」
※同、会計フジ子の顔に絶望感が漂う。
会計の前に立って、困っている顔のフジ子。
フジ子「お金を持ってくるのを忘れてしまったんです。今度、来る時でいいですか?」会計係診療の計算書を示す。 「325ギルダー」
会計係が同僚と相談して、会計係が紙に「判りました。今度は、忘れずに」の文字。
※フジ子のアパートほっとして帰って行くフジ子。
フジ子が絵を描いている。
フジ子「もう一度鳴いてみて!お願いだから・・・」猫が寄り添ってくる。 フジ子が抱き上げると猫が鳴く。 ハッと笑顔になるフジ子。
猫は中々鳴いてくれない。
※中華料理屋フジ子は窓を開け、外の音を左耳で聞こうとしている。 嬉しそうなフジ子の顔。
人の良さそうな中国人の店主が経営している。
店主「フジ子、どうしたんだ?いつものと違うのを頼むなんて珍しいね」フジ子「今日は、持ち合わせが少ないから・・・」 店主「今日もじゃないのか?」
店主は笑いながら、フジ子の前に注文と違う品が差し出す。
店主「良いからお食べ」驚いた顔のフジ子。 フジ子「お金が足りないわ」 店主「持ってるだけの金額で良いよ」
フジ子、嬉しそうに食べる。
※フジ子のアパート
フジ子が過去に描いた絵を集めて、持って出て行く。
※中華料理屋の前フジ子が思い詰めた様に立っている。
手には、自分が描いた絵を持っている。
店主「フジ子。入らないのか?」中に居た中国人の店主がフジ子を見つけてドアを開ける。 フジ子「・・・この絵を買って下さい」
店主がチラリと絵を見て
店主「フジ子、何か勘違いをしているんじゃないか?」
フジ子、下を向いて口をギュッと結んだまま、走り去って行く。
フジ子のN「明日は、もっといい日にしよう。毎日そう思っていると、必ずよくなるって信じているの・・・」※ウィーンの病院
耳鼻科の診察室
医師「だいぶ聞こえるようになったね」左耳の治療を受けているフジ子。 フジ子「有難うございます。やはり完全には、直らないのですか?」 医師「現在、聴力は40%位、回復している。後は、フジ子自身の努力しだいだ」
諦めた様に頷くフジ子。
※ストックホルムの街(フジ子40歳)(1971)
フジ子がキョロキョロと手元の住所を頼りに会社を探している。
※会社事務所のドアガラスから父、ジョスタの姿が見えた。フジ子の顔が急に明るくなる。 目的の場所を探し当てたのだ。 気持ちが先走り乍ら、ビルの中に駆け込んで行く。 大きく成功して、ボスに治まっていたが、フジ子は会えなかった。 帰ろうとするフジ子を一人の婦人が呼び止めた。 フジ子のN「ジョスタの妹さんが、スウェーデン国籍の取得に尽力してくれたの・・・その時から、大月フジ子からフジ子・ゲオルギ・ヘミングになったの・・・」 ※ストックホルムの音楽学校
フジ子が先生になって、ストックホルムの学生にピアノを教えている。
※羽田空港、国際線。そこに、ヨーロッパでフジ子が参加した多くの演奏会が、オーバーラップする。
タラップから降り立つフジ子。
※同、ロビー出迎える投網子。
投網子とフジ子が、話をしながら歩いてくる。
投網子「日本には、おまえの出番はないよ・・・」フジ子「どうして?ヨーロッパではコンサートツアーもしていたのよ!一流とは言わないけれど、日本でも生活する位のテクニックはあるわ!」 投網子「じゃ、弾いてごらん」
ピアノの音が聞こえて来る。
※投網子のピアノ部屋がオーバーラップして、
興奮した様子で、ピアノを弾くフジ子の姿が現れる。
投網子「その程度のピアニストは、日本には沢山居る」曲名テロップ「月光」
フジ子の演奏の手が、ぴたりと止まる。
※羽田空港から離陸して行く、ルフトハンザ機ピアノのくぼんだ鍵盤の上に涙がポトリと落ちた。
飛び立つと、小さくなって去って行く機影。
つづく・・・。「月光」 |

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