夜光石 雲根志前編 巻之一(安永二年 1773年)より 私の家の隣にたいそう勇気のある人間が住んでいた。名前を義兵衛といった。 この義兵衛さん、あるとき仕事の帰り道、夜も更けた頃、田ノ上谷と呼ばれる淋しい山の中を一人で通り掛った頃、一つ谷を挟んだ向かいの山の裾野の方に妙な光を見つけた。 青い光りが、さながら虹のように夜空に向かって昇っている。 義兵衛という男は、生まれついての怖い物知らずで、早速光りの元を確かめようと、草木を掻き分け、道なき谷を下り、現場に赴いた。やっとの事でその場所を見つけ、早速その光り発している物を覗き込むと、これがなんと言う事もない普通の石。 折角だからとその石を手に取り、背中に背負って家まで持ち帰る事にした。 夜道を歩いている時にも、その石は同じように光りを発して、お陰で辺りは昼のように明るくなり、手足がはっきりと見えて大助かり。 夜の開ける頃までには家に帰りついていた。やれやれと背負っていた石を軒先あらためて置きなおし、早速朝飯などしたためて一服し、どれ今一度あの石を見てみんものと、さっき石の置いた軒先に行って探したけれど、これが何処にも見当たらない。石は忽然と姿を消していた。さてもいったいどうしたものだろうかと、その回りはもちろんの事、誰かが盗んだのではないかともかんぐって、そこらじゅうの人間に尋ねまわったけれど、結局見つからず、石はそのまま行方知れずとなってしまった。 この国甲賀郡石原潮音寺の和尚の話によると、その寺の近くで農人が畑を掘り返していた所、握り拳ロよりも少し大きな石が出てきたそうだ。 それはとにかく普通の石とは違っていた。 奇麗な石だ。あまりに奇麗な輝きの石なもので、男はその石を家に持ち帰ることにした。 その石は夜になると光りを発し、まるで流れ星のようだったという。 友人の一言に言わせれば、そのような石はとても我々人間が扱えるような代物ではなく、別世界から来た石であり、そんな物がもし家に有ったら、必ず災いに見舞われるに決まっているので、もし持っているのなら粉々に打ち砕いて捨ててしまわなければならない物であるらしい。 その農人は早速斧を取り出して振りかぶり、その美しい石を粉々に打ち壊して、近くの竹やぶの中に粉になった物をまき捨ててしまった。その夜、竹林がさながら数万の蛍たちが集会でもしているかのように光り輝き、一面で光りが燃えているのを見て、驚いた村人たちがおそるそる行ってみると、それは昼間みんなの前である農人が斧で打ち砕いた石のかけらの一粒一粒でそれがそこかしこでぼーっと青白く光り輝いていた。それはこの世の物ではない位美しかったという。 翌朝になって噂を聞きつけた近隣の物見高い連中が押しかけてきて、その竹林の中を探し回ったがその石のかけらは見事に一粒も残ってなかったそうだ。 そういえば越後の国、上妻郡のある人なども、夜道を近くの村を訪ねていく途中、川を歩いて横切ろうと水の中を歩いていて、そこで何やら光る物を見つけたという。 拾い上げてみればそれは小さな石だった。 翌朝、この奇麗な石をさるお方に差し上げた所しばらくすると、この石は自然に消えてしまった。 |
全体表示
[ リスト ]







不思議なお話ですね。でも人間の手におえないものあります。それが珍しく素晴らしいほどのものほど。でも人間は欲のままそれらを欲しがる。自然において置けばいいものを欲のままに奪いあったり。でも本来そうゆう物ほど、手にすると災いを起こす気がします。現代にも、似たような話が沢山あるような。そっとしておいてあげて。それが不思議な力を発するのです。欲のある者達には、必要ないものです。現代にも通じる事ですね。
2005/10/9(日) 午後 1:24
その通りです・・・長々とした文章を読んで頂いて感謝です・・・^^ 欲を出しすぎると、ろくな事ありませんよね・・・
2005/10/9(日) 午後 2:07