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中の人考

もう10年も前になりますが、怪獣の中に入ってたことがある。
着ぐるみのバイトってのはテレビとかだと汗まみれですごい稼げそうな印象だけども、現実はそんなに甘くない。
日給はいいとこ5・6000円だ。
とはいえ実働時間は2時間にも満たないぐらいだから、時給換算すれば決して悪くないが。
しかも仕事終わって事務所に引き上げてくると、別の現場行ってた久しぶりに会う人とかがいて、おう何よ、最近どうしてんの、じゃ飲もうぜ!なんてことになる。
そうなれば今日の上がりはパーになる。そこには「人生設計」や「蓄財」といった概念はみじんもない。

思い返せばあの業界というのは独特で、給料そのものにはあまり執着しないひとがやってるのだった。
もちろんそれでは食えないので、別のバイトをすごいスケジュールで詰めてどうにか食いつないでるような、あるいはキチンと就職して、そのうえで休みの日にショーの仕事やる、そういう本末転倒が当たり前になっていた。
ひとことで言えば、ショーが好きだからやってるみたいだった。
そういうバイトに甘えて、雇用側はあまり賃金やなんかの待遇を見直すことはなかったみたいな気がする。
まあそればっかりが原因とも思わないが、若手はちっとも育たなかった。平均年齢は毎年1歳ずつ上がっていった。


いまではすっかりお声もかからないようになったが、最近の現場はどうなってるんだろうか。
気になってたところで、現役のアクションマンに現在のキャラショー事情を聞く機会を得た。
初ステージがライブマンだというからかなりのおひとだが、すっかりショー自体におもしろみがなくなって、そろそろ引退しようと思っている ともらした。
どう面白くなくなっているのかというと、ショーに自由度がなくなっているんだそうだ。

版元によるショー内容の管理が厳しいのは昨日今日のことではないが、劇的に厳しくなったのは昨年の電王からだというから、少々複雑な気持ちだ。

版元から「ものまね禁止令」が出た とのことである。

具体的に言うと、PAさんとかがステージの電王の動きに会わせてモモタロスっぽく「よっしゃあ!」とか「俺の必殺技!」とか言ったら、即クレーム対象ってことだ。
似てる似てないの完成度は関係なく、ダメと言ったら一律ダメ。
だからといって電王を黙らせたままのショーが成立するかというとそれは無理がある。
そのために「最低限の受け答えを吹き込んだ電王の声のCD」がパッケージにはいってるんだそうだ。
タイミングは外せないし、その場に応じたアドリブもできない。

ついでに言うなら、どっかで見たような衣装を寄せ集めた、ショーならではの悪ボスも出しちゃダメなんだそうである。
テレビに出てこない敵とヒーローが戦ってたらおかしい、というのがその理由で、もちろん司会のおねえさんとの掛け合いはできない。
ちびっ子をステージに上げて戦闘員訓練、的なお遊びもナシ。
ここまでガッチガチに固めておいて、それで面白いショーをやれというほうがどうかしている。

つまり、版元は別に面白いショーをやって欲しいとは思っていないということである。
テレビと同じ声がして、テレビと同じ衣装の人が跳んだりはねたりしていればそれでいいということだ。
演じ手を馬鹿にしてる、それ以上に、お客さんを馬鹿にした姿勢だと思わずにはいられない。

面白いショーそのものの需要がなくなったわけではないのに、まだまだやる気のある中の人が、どんどん引退してゆく。

それがいいとか悪いとか言う立場に私はいないが、この寂しい気持ちはご理解頂きたい。


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