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「えっと、質問を繰り返させていただきます。先輩。
先輩は、「リア充」の反対語が何だと思いますか?」
俺はボケを入れる事にした。
「え、?リア充ってなんだ?」
ガタッ。
後輩がイスを立った。
そしてどこかへ行く素振りをした。
「おいおい、冗談だよ。なんだ、なんだ、リアルが充実しているの反対語か?」
俺は、本気で怒ってしまった彼女(石川真理子)を引き止めた。
「何だ、分かってるじゃないですか。リアルが充実の反対語です!
ああ、もう良いです。
私が言いたい事をさっさと申し上げます。
此れ以上話していると、芸人に成りそうですから!
私は、「リア充」の反対語は「イメ充」だと思っただけです!
はい、そうです、私は、自分が思い付いた事を先輩に言いたかっただけです!
もう、先輩には用事は存在しません!」
完全に怒られた。
「え、リア充の反対語が、何だって?」
「イメ充です!!!!」
怒鳴られた…。
ガタ。
隣の倉庫から物音が聞(きこ)えた。
森野が昼寝から起きた様だった。
今の石川真理子の怒鳴り声に驚いた様だ。
「イメ充は一体何の略語なんだ?」
「イメージの充実の略語です!」
石川真理子は棒読みの怒鳴り声という面白い声の発声方法を使用しつつ俺に其の心を伝えた。
「成る程な、イメージが充実していると、…。うん。深いな。深良いなぁ。」
「私の言いたい事は以上です。もう何も言いたい事は存在しません」
何時(いつ)から石川真理子の口癖が、「存在しません」に成っただろうか。
ガチャ。
倉庫のドアが開く。
「先輩何事ですか?」
森野が眠気を掻き分けながら俺に聞いて来た。
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第3章 混乱する人 玉木和男
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テレビ局、オカルト担当室での駄弁り(だべり)。
石川真理子が携帯電話を弄り(いじり)ながら、俺(玉木和男)に話し掛けて来た。
「ねえ、先輩。か、いや、玉木先輩」
「おい、今、お前俺の事を和男と呼ぼうとしただろう」
「へ!?そんな事、ん
さて、話しの本題へ移らさせて頂きます。
玉木先輩、「リア充」の言葉の反対語は何だと思いますか?」
確実に俺の事を下の名前で呼ぼうとしていたから。
俺の先輩が俺の事を和男と呼ぶから、其れを聞いていて攣られて(つられて)言い掛けて仕舞ったのだろう。
まあ、許す。
「リア10?何だ其れは、又、インターネットスラングか?」
…石川真理子に引かれた。
石川真理子は今度は顔を引き攣っている。
「いや、いや、俺さ、テレビはちゃんと見るけどネットはほぼし無い所以(から)さ」
「…。そうです…?…。そうですよ…ね。うん。そうですよね。知りませんよね」
石川真理子は自分自身に納得させる様に其う(そう)言った。
続けて石川真理子の言葉。
「えっとですね。リア充は、リアルが充実しているの略語ですよ。…先輩。」
「ああ、リアルが充実。リアルって何だ?」
石川真理子が「リ・ア・ル」をギャル後風な発音で言ったので(山形の方言も、ギャル語の発音と同じらしい。)
何か特別な意味が入っている言葉かと思った。
「え、先輩、英語ですよ。リアル=現実です。」
ああ、其の儘(そのまま)の意味か。
「ああ、と言うと、現実が充実していると言う意味か。ん?現実以外何が有るんだ?」
…。
黙られた。
後輩に黙られた。
何故?
石川真理子は暫く(しばらく)目を見開いた儘(まま)固まっていた。
そしてハッと我に返ったらしく、体をビクっとさせると、次の様に言った。
「先輩、リアルは現実で、其の反対は、ネット世界の事、詰まり仮想空間とか、アニメとか、絵の二次元作品の事ですよ!」
どうやら先程の「||」一時停止は、俺の無知さに驚いていた間らしかった。
「ああ、なるほどな。成るほど、成る程。つまり、詰まりだな。ネットが架空の世界で、現実が、リアルだとそういう事だな?」
「はい。そうです。」
「で、何の話しだっけか」
石川真理子の心の声が辛(かろ)うじて俺にテレパシーして来た。
―基本知識の説明で中々本題に入れない…―
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昔は、ワカメの国に行くことが出来る人は大勢居た。しかし、最近では「機械」、特にインターネットの存在などが邪魔をしていて、ワカメの国に生きにくくなっている。「機械」のなんらかの影響により、魔法の力が弱くなっている。現在ではワカメの国へ行くことが出来る人は数少ない。日本には百人も居ない。ワカメの国は海の中にある。心のレヴェルが高い人だけがたどり着くころが出来る特別の場所で例えるなら、竜宮城のような所である。
はん。
馬鹿げている。
「ワカメの国」?そんな物あるか!!
馬鹿か。
と俺は思う。
―――そう、ワカメの国なんて無い。この世にはない。ワカメの国とか言うアミューズメントパークがあったとしても、絵本に出てくるようなワカメの国など、実際にはどこにもないのだ。それはもう、わかっている。それを前提とした上で、どのように恰も(あたかも)「ワカメの国」が本当に実在するかもしれないと視聴者に思わせる番組を作るかが重要な点だ。そしてその「ワカメの国って本当に実在するかもしれない」という感覚を、錯覚を、どのくらい長い時間引っ張れるかが重要だ。初めから、この番組の班の中の誰一人として本物のワカメの国なんて信じていない。 はっきり言って番組を作る方からすれば、本当かどうかなんてどうだっていいのだ。この手の番組の「やり方」とは、まあ言ってみれば、「ワカメの国は実在するのか!?」「どんな場所なのか!?」みたいな感じのテロップをデッカク出せばいい。とりあえず語尾に!?を付けて、ドドーン!みたいな効果音でも出しておけば尚(なお)良い。視聴者はそんなんで騙されてくれる。暇な視聴者はそれで番組を見てくれる。それにしても一体どこの誰がこんな訳の分からない事を言い出したのだろうか。森野はインターネットで調べたとか言っていたが…。今はウィキペディアという誰もが加筆修正できる百科事典があるから、そこから引用してきたのかもしれない。どこの誰がそんな事を書き込んだんだろう? まあ、とはいっても取材をしないという訳にはいかないという事で…今俺達ロケ班はその妄想じいさんが居るという長野県へ向かって電車に乗っている。こんあ巫山戯(ふざけ)た番組のために局はよくもまあ金を出すもんだ。それで採算が合うんだから、視聴者はそれだけオカルト系の番組っていうものを見てくれるらしい。一体お茶の間は何を求めているのやら、一体日本は何を求めているのやら。テレビ番組とか、流行のものというのは、その時の国民の雰囲気、心情を表す。何かきっと、楽しいこと、不思議なこと、ワクワクすることが欲しいのだろう。班の皆は疲れているのか、私以外の5人は夢の中だ。 長野県というのは広い。面積自体も他の県と比べて、大きい。そして実際の景色も広大だ。空気もきれいだし、当たり前だが東京とは違う。 自然というのは確かにいい。そう思った。朝というのもあって、余計に雰囲気がよかった。なんだか高貴な感じがするのだ。東京の機械っぽさ ではなく、スッと心に凛としたものが入ってくるような感じ。朝というのはどこでもそういった凛とした高貴さを感じるものだ。ただ、あまり寝ていなかったりすると その高貴さも感じられにくいが。結局私も眠ってしまった。途中トイレに起きたときに森野がよだれを垂らしていてそれが面白かったのを何となく覚えている。 古田ゲンジさんのお宅は、これと言って古くもなく、新しくもない、それなりの家だった。なんだか田舎感丸出しだ
。家の裏が林で、家の正面には田んぼが続いている。畑もぽつぽつある。一体、この普通の家に本当にワカメの国に行くことができるとかいう妄想じいちゃんがいるのだろうか。 ガチャ!私が家を眺めながら住所を確認していると、玄関が開いた。中から出てきたのは小さな男の子だった。 「あ!来た!来たよー!」 その男の子は私達取材班を見るなり、家の中に向かってそう叫んだ。 「こんにちはボク、古田さんのお家であっているかな」 「うん、おじいちゃーん来てー」 男の子は家の中に向かって大声をあげた。 取材班は全員一旦中に通されてお茶をもらった。 何でも話しに聞くと、おじいちゃんが孫の男の子にいつもワカメの国の話をしていたところ、その子がこの番組にハガキを送ろうと言い出したらしい。それで男の子がうるさいものだから、仕方なく家族が情報を書いて送ったらしいのだ。まさか本当に取材班が来るとは思わずに…。もしも男の子が書いていてくれたら、子どもの字だって分かっていたら、長野まで来なかったのに。
「お前はなんていうの?」 取材班唯一の女子である石川が男の子に優しい声で尋ねた。 「古田まんみつ」 「まんみつ君?珍しい名前だね」 「うん!」 そういって男の子はリビングへ行って紙と鉛筆を持ってきて自分の名前下手な漢字で書いた。 満密。本当に珍しい名前である。 しかし、そのハガキにあった、“妄想おじいちゃん”がワカメの国に行けるというのが嘘だということになると、もう他に手がかりが無くなってしまう。インターネットで調べたことをまとめて放送するだけではあまりにも本物感が出ないし、あまりにもお粗末だ。古田ゲンジというおじいちゃんは確かに存在するが、そのおじいちゃんには「あれは空想の物語として孫に話したが、実際にはワカメの国なんて存在しないし、行くこともできやしない!」と、なぜかちょっと怒り気味に言われた。 満密君はその言葉に対して、 「え〜〜だって本当の本当に行ったって話してたじゃん。おじいちゃんは本当に行ったみたいに話してたよ!」 と不服そうな顔をして申し立てたが…。 もう、こうなったら、今回はおじいちゃんに役者になってもらう他ない! 私はおじいちゃんとおじいちゃんの息子さんであり、また満密君の父である、密彦さんだけを別室に呼んで、その旨を伝えた。 おじいちゃんはヤラセ番組の役者を演じてくれることに一応了解してくれた。 これから、私達取材班とゲンジおじいちゃんの6人で全国の人を騙すための番組を作ろうとしている。 まあ、初めからワカメの国なんて存在しないのだから、どんなに真面目にやっても嘘にしかならないし…。 マリさんが番組の流れをササっと考えてくれた。 マリはアイディアを出してそれをまとめる能力に長けている。 頭が切れるのだ。 今回は悪知恵としてその頭の良さを使っていただく。 ヤラセ番組の流れを考える際にゲンジさんがやたらと「こうしたらいい」と助言してくれて、いかにも「不思議の国と交流を持っている何か特別な力を持っている仙人おじいさん」という雰囲気を醸し出すのにはとても好い助言であった。 よくもそんなにポンポンとアイディアが浮かんでくるものである。 「妄想じいさん」と私は勝手に心の中で言っていたが、それはある意味で当たっているらしい。このじいさんはヤラセ番組を作るのに喜んで手伝っている。 少しは罪悪感というものを感じているのだろうか?そうは見えないが…。 むしろ楽しそうである。 台詞もおおよそ整ったから、あとはドラマの撮影をする要領でシーンを撮影して、ワカメの国についての情報をいくつか挿入しつつ、繋ぎ合わせれば、「オカルト特番」の完成だ。大体いつもこんな漢字で「オカルト特番」は作る。 ゲンジさんの精神統一をしているシーンでは、どこか本物のようなものを感じた。 どうやら、ワカメの国へ行けるというのが嘘でも、ゲンジさんが瞑想をしていることは真実であるらしい。 そしてゲンジさんがインタビューに答えるシーンでは、ゲンジさんが勝手にいい感じでアドリブを入れてくれた。そのことにより、胡散臭さを本当っぽさの両方の値がググッと上がった。信じない者にとっては、嘘っぽく、又信じる者にとってはより真実味を帯びる画(え)が撮れた。 そんなこんなで、何とか必要なシーンを撮影して、帰ってきた。編集も済んで放映した。 満密君はおじいちゃんがワカメの国に行く事ができるのは嘘じゃない!って言って、あまりいい顔をしていなかった。 そこんところはまあ大人の事情というやつなので……ね。 一応本物っぽく作ったから満密君、この特番を見て機嫌を直してね。 と私はそんな感じで思っていたのだが、まさかその満密君が後に、あんなことになるはそのとき俺は知る由も無かった……。 死んだ。 亡くなった。 古田満密君がお亡くなりに成った。 俺達ロケ班が行ったあの、妄想爺さんの家の裏の林、森で熊に襲われて、亡く成ったそうだ。 ニュース番組で知った。 |
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今回は、「ワカメの国」に行くことが出来るとか言う爺さんの特番を任された。俺がいつも担当している番組はUFOとかUMAとかそういった類の有り勝ちなオカルト番組だ。はっきり言って俺はそういうのはあまり信じない立ちだ。こういう番組にはもう定石になっているやり方というのがある。それなりに作ればよいのだ。それなりに。
夜のオフィスで、今日は任されたばかりのその特番の資料に目を通していた。部下の森野が提出してきた資料だ。よく調べてある。あいつは真面目だから。それによるとこうだ。
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