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こんな物語はどうだろうか。
42歳で魔法使い見習いに成った、アラフォーの物語。
私は、畑広美。
中学校教師だ。
最近、観葉植物が私の職場で流行(はや)っている。
と言う事で、私も植物を買いに街に繰り出した。
街と言うか、商店街だろうか。
私が住んで居る街には商店街が在(あ)るのだが、私は隣の隣の村の中学校の教員をしている所以(ので)
私、は自宅と学校の行き来だけの生活に成(な)り勝(が)ちだった。
久し振りの地元の町の商店街である。
「貝塚種苗店(かいづかしゅびょうてん)」はその商店街の中に在る。
私は、観葉植物を種から育てようと思い、野菜でも何でも良いから種苗店に来たのだ。
其処(そこ)で会った人物が、「貝塚浮世」である。
後(のち)に私は彼女から、「私の専属魔法使いに成って欲しい」と言われる事に成る。
そのような状況の中で大学生私が出会った人物が「貝津浮世(28)」であった。彼女は、私の言葉に重さを加えてくれた。私の言葉に具を入れてくれた。方法論に過ぎない私の言葉、現代の言葉に確固たる内容を入れてくれた。
「私の魔法使いに成って下さい!」
私が貝塚種苗店から帰ろうとしていて、歩道を歩いていたら、貝塚種苗店オリジナルのエプロンを取り去った私服姿で、貝塚浮世は、私の方に駆け寄って来て、私に声をかけてきたのだった 私は、とても真面目に生きて来た。真面目と言うよりも、正しく生きて来た(きた)。
正しさなんて物、現代においてよく分からない概念だけれども、私は私が思う「正しさ」を実行してきた。
してきたつもりではない。してきたのだ。着実に、確実に正確に。
誤解されやすいのだが、正しく生きているからと言って、「変な事」「おかしな事」に出くわさない訳ではない。大真面目に正しく生きてきても「おかしな現象」には出くわす。
普段から現象に対して、真正面から向き合うから「変な現象」に対しても、いつも通りに真正面から向き合うのだ。私(畑広美)は、「私(貝塚浮世)の魔法使いに成って下さい!」と言う聞き慣れない、変な珍しいの言葉に対して、即答した。
「わかりました。なりましょう。」
まさかの2つ返事で。更に今後の計画まで指定した。
「では明日、再びお店に参りますね。」私はそう貝塚浮世に言った。
ニコっと微笑んで、私はその日は自宅に帰った。
実は、私は、彼女、貝塚浮世に対して、その世にも奇妙な会話の以前に、訝しく思った事があったのだ。私は何の種を買おうか品物を見物(けんぶつ)しながら迷っていた。私は迷うことを楽しんでいた。横文字に言い直す(書き直す)のどあれば「ショッピングを楽しんでいた。」
その際、店員である、貝塚浮世の腕が、私の視界に入った。 その腕の肌が一瞬…否、二、三瞬間「緑色」に見えたのだ。
私がこれまでの人生で以前に経験した事の中に、その緑色の肌の腕は存在している。
しかし、其の記憶の断片が私の記憶の中に、単独で存在している。
一体どの様な出来事の後に、其の緑色の腕を見たのか。解ら無い。
一体全体どの様な経路を進めば、其の単独で存在している「記憶」に補足情報を伴う状態でaccess出来るのだろうか。私の記憶の其の緑色の肌はいつ見たのか。
私は思い出す事を試みた。が、補足情報を思い出す事は不可能であった。
此(こ)の記憶をより正確に思い出せれば、膨大な記憶を同時に得られる気がした。
そう。私は、ワカメの国での出来事の一部始終の記憶を削除されて居(い)た。 フランジェリム・ミラコ・ペディグリン、ディクドトリ・ミラン・ペディグリン、和昆戦争…忘れさせられて居たのだった。一度成(な)らず二度迄(まで)も。
然(しか)し、勿論私は一度目にフランジェリムさんに記憶を消された事も、二度目に記憶を消された事も覚えて居(い)無(な)い所以(ので)、記憶を消された事に対する怒りは沸いて来る筈(はず)も無い。
大体、妖精の国の所在を隠す為(ため)に、ワカメの国に訪れた人の記憶を消す事は決まりに成って居(い)るから、怒れる訳では無いのだけれど。
だけれど、フランジェリムさんは少しだけ私に記憶を残した様だった。
フランジェリムさんは魔法が上手だから、ミスで記憶が残ってしまったのでは無い。
フランジェリムさん心残りが有(あ)って、私のワカメの国での記憶を全て消してしまう事に対して心残りがあり其(そ)れで、残っていても何の役にも立た無いどうでも用意記憶を残したのだった。
その記憶が「緑色の肌をしている何か」だったという訳だ。
だが、私が貝塚種苗店で、店員さんの腕が一瞬緑色に見えた時点では、フランジェリムさん何(なん)て
、全く記憶に無かった訳だ。
其の後思い出す事に成るのだが…。
私が、初対面の貝塚浮世の世にも奇妙な「私の魔法使いに成って下さい」と言う頼みを唯々諾々(いいだくだく)と承知した理由のひとつがそれだ。
緑の肌が気に成ったから。
もう1つは、真面目に頼み事をされると、其の中身がどんなに変な内容でも物事に真正面から立ち向かう私の性格と言うか、性質に拠(よ)る。
翌日、また貝塚種苗店を訪れた。
種を買う為でも無く、苗を買う為でも無く、貝塚浮世に会う為に。
夕方に訪れた。
其の日は金曜日。
明日は休みだから夜遅く成(な)っても、大丈夫だ。
私は貝塚種苗店に入り、貝塚浮世と落ち合った。
私と貝塚浮世は、一旦店を出て、それから貝塚家に上がった。
私は、貝塚浮世の部屋に通された。
其処(そこ)で、詳しく話を訊いた。
―誰でも良かったのだろうか。
其の話に拠(よ)ると、彼女、貝塚浮世本人で無ければ、誰でも良いのだった。
自分自身で無ければ。
自分自身意外の誰かならば。
そうだと初めは思っていた。
でも、私でないと駄目だったらしい。
人間世界で最も「魔法」に近い事は、「言葉」。
「言葉」を極める者、即ち(すなわち)国語教員である私だからこそ、魔法使い見習いに選ばれたのだ。
私は、「貝塚浮世」から「言葉の重み」を貰った気がした。
彼女、貝塚浮世の部屋で魔法と魔力の違い、妖精と魔法使いの違いを説明されている間に私はそう感じでいた。
私は、彼女に出会って「単なる言葉」を「重みの有る言葉」にして貰った。
そんな気がする。
彼女、貝塚浮世は、言葉に対して誠実であった。
言葉に誠実であるという事は、言葉で騙されたことも多かろう。
彼女は言葉を信じるという事は言葉に翻弄されて生きて来たということでもあるだろう。
言葉に拠(よ)って、良い事もあったろうし、言葉に拠って悪い事、具体的には言葉に拠って裏切られた事もあるだろう。
言葉によって良いことだけを味わうようでは「陰」と「陽」のバランスが可笑しい(おかしい)。
陰と陽は同じ値(あたい)である状態でバランスが取れているのである。
私は中学校で国語を教えている。
私が国語教員を目指していた頃と違って、現在の現代の私の生徒が使う言葉は、「抜け殻」である。
私は残念だ。
そして更(さら)に無念であることは、私が感じている現代の若者の言葉に感じている感覚を一部生徒も感じていると言う事である。
生徒からすると、
「先生が何かが重要で美しい、素晴らしい事柄(ことがら)を私達の手においてくれる。渡してくれる。が、自分の手に先生からの言葉が渡った途端(とたん)にその煌(きら)びやかな『言葉』は色褪(あ)せてしまう」
のであろう。
どんなに残念であろうか。
円(まる)で、「」
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第9章 正し過ぎた人 畑広美
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「あの事件はね。本当に不思議な事件だったわ。
銀の涙はワカメの国の民には直接的には悪影響を与えない。
妖精は感情の高まりに拠って生まれる。
感情が詰まった、銀の涙は妖精を無き物にするとい言うよりも、寧ろ妖精を肯定する存在。
其の事件はちょうど、此(こ)の「迷い子案内所」で起きた事件。
迷い子案内をしていた当時の和布の民が、あ、其の頃は、ワカメの国は、「若布の国」では無くって、「和布の国」だったわね。
其の和布の国の民がいつも通りに仕事をして居たの。
そうしたら、其の対象の人間の頭の中が銀色に成って、其の対象の人の世界が全部銀色に染まった。
何も出来無く成って、其の和布(わかめ)は引き換えした。
そして、其の対象の頭の中では、仕事が出来無く成って仕舞った。
あぁ其の頃から、若布の民は人間の頭の中の便利な道具とか、便利な概念を拝借させて貰っていたわ。
今、は「ドラえもん」の秘密道具の記憶が様々な人の頭の中に存在しているから、其れを貰ったりしているわ。
大人に成る子供の頭から貰うのよ。
だって大人に成る人は「ドラえもん」の秘密道具の情報なんて記憶から消されていても問題ないでしょ?
人間の頭の中の物を貰っていたりしたのだけれど、其の銀色の世界では、情報を貰って拝借する事が出来なく成って仕舞ったの。
其の「銀色現象」は当時ちょくちょく起きていたわ。
そして其の銀色の原因を突き止めたわ。
世界が銀色に成る瞬間を目撃した和布が出て来たの。
其の和布の証言に拠ると、世界が銀色に成る直前に、銀色の素敵が振っているという事が分かったの。
人それぞれ見ている夢が違う。
全く、雰囲気が違う夢を見ている人でも、世界が銀色に成る前に銀色の水滴が振っている事が分かったわ。
後々(のちにち)、ワカメの国の大王の「千里眼」で、解った事は、其の銀色の水滴は、人間が発生させた物だという事。
当時の和布の国の王の感覚から物を言わせた場合、其の銀色の水滴は「涙」だと言う話だったの。」
なるほど。
つまり、この話から私が得る冪(べき)教訓は、
どんなに好き曲でも、その曲を鳴らしている楽器を食べては成ら無い、
どんなに好きな人でも、其の人を食べては行け無いと言う事…。
私は、久し振りに真剣に考えた。
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「水俣病は有機水銀を原因とする神経系の慢性中毒症です。」
「そうなんだ。解らないけれど。其の事件が、恐らく私達ワカメの国の民の間で言われている「銀の涙事件」ね。
銀と言う色はね、感情の行き止まりの色。
月が銀色に光る事が頭の中に浮かんだら、其れは感情の行き止まりを表して居(い)るわ。
NeoMoon。
銀月。
溢れんばかりの感情の高まりの象徴で有る銀の涙を呑んで終ったら頭が可笑しく成るのも当然。
余りに強い感情は、他人の感情を可笑しくしてしまうわ。」
「つまり、中枢神経が可笑しく成ると言う事ね。」
私はフランジェリムさんの話を現実に即した表現で言い直して呟いた。
「え?何か言った?」
「いえ、何も。で、銀の涙事件はどの様な事件だったのですか?」
私は現実世界でのメチル水銀がどの様にワカメの国の民に影響したかが気に成った。
私だって一応、いえ、一応では無く、人間界に居た時は、中学校教師だったのだ。
理科担当だ。
フランジェリムさんは口が重そうに話し始めた。
閑話休談
つづく
(水俣病に付いての知識「讀賣新聞」平成24年4月7日より引用)
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「あ、もしもし?ディクッチャー?あのさ、ちょっと聞きたい事が有るんだけど。
あれ、あのさ、何十年前に在った事件。銀の何とかって事件あるでしょ?…あそれそれ、銀の涙事件(ぎんのなみだじけん)。有難う。じゃ此れから帰るから。」
電話が終わった。
フランジェリムさんはコチラを向いて。
「聞いてた?「銀の涙事件」。人間界の人間の感情が銀の涙として表現されて、其れを魚が飲み込んでしまって。
其の魚を人間が食べて、人間が余りの感情の高さに、動け無く成ったり、震えが止まら無く成ったりした事件。あんたの年だと知ら無いか。」
え、っとその話って、何か聞いた事が有る様な気がする…。
「え、其の話って、「水俣病」の事ですか?」
「は?何其れ。知らない。人間界でどの様に呼称されているかは知ら無い。何?「みかんびょう」って呼ばれてるの?」
「違います。蜜柑病では無く、「みなまたびょう」です。」
「ふうん。」
閑話休談
つづく
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「兎に角(とにかく)あれは危険物よ!」
「そ、其うですか」
私は肩透かし感を感じながら先輩に相槌を打った。
「詳しくは、ディクドトリに聞いてね。」
「え?」
「私の弟。人間界のあれこれに詳しいから。私は一般的なワカメの民だから人間界の事はよく解(わか)らないの。
でも、私の弟の「ディクドトリ」通称「ディクッチャー」はワカメの国の民のくせに、頭が良いのよ。人間界のあれこれに詳しいから。人間であるアンタと話が合うと思うわ。」
「はい。でも、私フランジェリムさん以外の方と上手く話せるか自信無いです。」
「其(そ)う?じゃあ、私から聞いてあげるわ。仕事が終わったらね。」
夢の世界から抜け出せ無く成った子を夢の世界から現実の世界へ還してあげるという私達の仕事を終えてから、迷い子案内所の前でフランジェリムさんが携帯電話を取り出した。
…夢の世界にも携帯電話が有るんだ。
夢が壊れる。
閑話休談
つづく
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