りぼんの読書ノート

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あたらしい名前(ノヴァイオレット・ブラワヨ)

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1980年に独立したジンバブエは、2000年代になってムガベ大統領独裁体制のもとで2億%ものハイパーインフレや90%の失業率という大混乱に陥ります。国民の1/4が国外に脱して、南アフリカなど周辺諸国の社会問題にもなっているほど。本書は、1981年にジンバブエに生まれて18歳で渡米した著者が、故郷の苦しみと不法移民の悲しみを描いた作品です。

かつては両親と本物の家に住み、学校にも通っていた10歳の少女ダーリンの生活は、既に一変しています。ブリキ小屋が立つスラム地区に移り住み、南アフリカに出稼ぎに行った父親は音信不通。欧米支援団体の支給品行列に並ぶか、近隣地域で盗みを働くかという日常の中で、11歳の友人は強姦されて妊娠してしまい、やっと帰ってきた父親はエイズに罹患した様子。ブルドーザーで破壊される家々、命がけの投票、改革を叫んで殺害される若者の葬儀、現地の子供たちの写真撮影は大好きだが握手などの接触は避ける欧米ボランティアらの様子などを、少女の目は見過ごしません。

やがて出稼ぎに出ていた叔母を頼って訪れたアメリカも、決して夢の国ではないことに、少女は気付いてしまいます。ダイエットとポルノビデオとボランティアの国で祖国への誇りを失い、母語も話せないアメリカ育ちの子供たちとの断絶も深まり、全くの根無し草となってしまう者がいかに多いことか。しかも永住権を持たない不法移民たちは一時帰国もできず、豊かな牢獄から出ることは叶わないのです。

本書が10歳の少女の視点から綴られていることは、深刻なテーマを露骨に描きずぎないようにするためなのでしょう。事象の表層をなぞるだけのようなのに、少女の視線は本質を見透かしているようです。アメリカの大学で教鞭を執る傍らで小説家としてデビューしたものの、まだ永住権を取れていないという著者の
体験が詰まっている作品です。

2019/7

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