りぼんの読書ノート

シリーズ索引に「ハヤカワepi文庫」を追加しました。読書率が50%を超えたので。

今月の読書

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二十一の短篇(グレアム・グリーン)

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1954年に刊行された短編集ですが、収録されている作品は1921〜41年に書かれた初期のものです。
喜劇、悲劇、ホラー、不条理とさまざまなジャンルの作品が並んでいますが、共通して流れているのは淡いペーソスですね。

「廃物破壊者たち」:廃屋に住む貧乏じいさんの家を破壊しようとする、少年ギャング団のたくらみ。子供たちはユーモアのつもりなのでしょうが、これは残酷です。

「特別任務」:敬虔な社長が秘書に命じた特別任務とは、贖罪日を購うことでした。魂の救済を他人任せではいけませんね。

「ブルーフィルム」:倦怠期の夫婦がシャムで見たブルーフィルムに映っていたのは、思いもよらない人物でした。現代ではこんなリスクは蔓延しているのでしょうが、夫が思い出したのは過去の純愛だったのです。

「説明のヒント」:信仰への目覚めを子供の視点から記述した作品です。パン屋に買収されそうになった子供に奇跡の瞬間が訪れるのです。

「ばかしあい」:2人の老詐欺師の化かし合いは、彼らの甥と姪の恋愛に変わって行くのです。でも詐欺師の甥と姪にも、やっぱり詐欺師の血が流れているようです。本書で一番楽しい作品でした。

「働く人々」:空襲下のロンドンで、生産性のない会議と企画を繰り返す役人たちの物語。究極のお役所仕事が笑いとばされます。

「能なしのメイリング」:やはり空襲下のロンドンで、空襲警報そっくりの音で腹を鳴らした男がたどった悲劇。

「弁護側の言い分」:有能な弁護士が被告を目撃した証人たちの証言を覆すのですが、神の目はごまかせなかったのかもしれません。

「エッジウェア通り」:不人気な劇場で無声映画の上映会を見ていた男の隣に座ったのは、何者だったのでしょうか。「たしかな証拠」と似た趣向のホラーです。

「アクロス・ザ・ブリッジ」:百万長者の男がメキシコに留まっているのには、理由がありました。しかし共に暮らしていた犬が国境の橋を渡ってしまい・・。

「田舎へドライブ」:厳格な父親が強いる質素な暮らしを嫌がってい娘が、失業中の男に誘われてこっそりドライブに出かけるのですが、これは危険ですね。

「無垢なるもの」:少年時代の思い出が詰まっている自分の故郷に、バーで拾った女など連れてきてはいけないようです。

「地下室」:大好きな執事の不倫現場を見てしまった子供は、口止めをされるのですが、秘密を守るのは難しいのです。

「ミスター・リーヴァーのチャンス」:未開の地を訪れたセールスマンの前で、客となるべき男は病死。サインを偽造して契約を取ったセールスマンですが、彼にも報いが訪れるのです。

「弟」:パリのカフェに飛び込んできたコミュニスト集団と、それを取り囲む機動憲兵たち。店主はタダ酒を要求したコミュニストたちに共感を覚えます。

「即位二十五年記念祭」:老いて落ちぶれた男娼が出会ったのは、かつて娼婦だったものの現在は羽振りの良い女性でした。皮肉な運命の物語ですが、女性の気持ちはよく理解できます。

「一日の得」:名前も知らない男をつけまわす男は、その男が飛行機を利用して一日得したことが許せなくなります。得した一日は、最後にどこかで失われるのでしょうか。

「アイ・スパイ」:ロンドン空襲の最中に父親の店からタバコを盗もうとした少年が、父親と見知らぬ男たちの会話を聞いてしまいます。

「たしかな証拠」:自ら経験した神秘体験を講演する男の話は、とりとめのないものでした。実はそれは、ある事実の確かな証拠だったのです。これはホラーですね。

「第二の死」:瀕死の友人が語った話は、数年前の臨死体験でした。彼はもう一度「あれ」を体験したくないと言いながら亡くなったのです。

「パーティの終わり」:子供パーティの暗闇かくれんぼを怖がっていた双子が、悲劇に襲われます。子供が嫌がることを無理にやらせてはいけないのです。

2018/11

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