りぼんの読書ノート

6−7月はもろもろ辛抱です

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ちょっと変わった作品でした。バブル時代の1989年に行われた香港パッケージツアーで消えた青年をめぐる物語。といっても、ぐるぐるとめぐっているのは関係者の「記憶」です。

舞台はツアーから十数年後の現代。平凡な主婦のもとに届けられた謎のラブレターは、彼女が銀行窓口で働いていた頃に彼女を密かに思っていたらしい青年からのものでしたが、それが誰なのか、いっこうに記憶に残っていないのです。彼は「香港にしばらく残る」と言っているのですが・・。

香港でその青年と一緒に遊んだ男性は、引越しの際に過去の日記を読み返すのですが、それが実際にあったことなのかどうかすら、もはやあやふやになっているのです。一方、ツアー添乗員の女性は、まるで自分のことが書かれているようなブログを見て衝撃を受けます。

では、香港で迷子になった青年とは、いったい何ものなのか。なぜ、誰の記憶にも定かに残っていないのか。最終章でこの青年が自ら姿を現し、彼をめぐる謎は一応の決着を見ることになりますが、この物語が訴えたいのは、この青年のことではないのでしょう。

昭和が平成に変わった頃に「何かを失くした」のは、本書の登場人物たちだけじゃない。誰もが持っているであろう「喪失感」が、この青年という形で現れたものではないのか。さらに言うと、記憶の絶対性が疑われる中で、「個人」を作り上げているのは何なのか。自分が自分であることを「他者」に委ねてしまっていいものなのか。スラッと読める短い小説ですが、テーマは深いですね。

2009/1

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こんにちは。同じ本の感想記事を
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2010/11/10(水) 午前 11:34 [ 藍色 ] 返信する

藍色さん>訪問&コメント、ありがとうございました。記憶と喪失感を巡る物語は楽しかったけど、このテーマに共感できるかどうか、結構微妙な話かもしれませんね。

2010/11/12(金) 午前 6:02 りぼん 返信する

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