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今年はモーツァルトの生誕250周年に当る年だそうで、TVの音楽番組でも特集が組まれていますが、CDやDVDも記念販売されています。
このCDもその一つで、ダニエル・バレンボイムがベルリンフィルを弾き振りしたピアノ協奏曲全集です。9枚組CDに加えボーナスDVDも付いています。ボーナスDVDにはバレンボイムとショルティによる2台のピアノのための協奏曲、さらにシフを加えた3台のピアノのための協奏曲も収録されています。これで4,200\くらいですから、大変にお買い得なのです。
演奏内容についても定評があり、今更言うことはありません。ニュアンスに富んだすばらしい演奏です。旧盤の、バレンボイムとイギリス室内管弦楽団の演奏も大変評判になったもので、どちらにするか迷いますが、どちらを買っても満足できると思います
私はモーツァルトの作品の中でもピアノ協奏曲が最も好きです。モーツァルトの良いところが凝縮されているように思えるからです。今ではピアノ協奏曲の中でモーツァルトは別格中の別格と思っています。このことに気が付いた、というかこのことを感じるようになったのは、それほど昔のことではありません。
私はピアノ曲が好きで、聞く曲のほとんどがピアノ曲という、もともと偏った状態だったのですが、超絶技巧へのあこがれといったものもあり、どちらかと言えば、演奏効果のあがるロマン派のものが好きでした。モーツァルトの曲は、ロココ趣味の貴族相手のチャラチャラした音楽と、正直思っていました。
しかしいつの頃からか、もともと偏っていた趣味がさらに偏って、聞く曲のほとんどがモーツァルトのピアノ協奏曲になっていることに気が付きました。この状態がかなり長く続いております。客観的にみるとこの状態もどうかとは思いますが、とにかく中毒に近い状態です。モーツァルト以外ではこのような症状になったことはありません。
モーツァルトは音階ばっかりで練習曲のようだし、面白みがない、という人もたくさんおられるのではないかと思います。確かに、例えば良く耳にするピアノソナタ(K545)の第1楽章などはその最たるものでしょう。この曲は音階が多い、というのでは足りず曲のほとんどが音階でできていると言っても良いくらいです。ハ長調なのでよけいにそう思うのかもしれません。
ピアノ協奏曲にも音階を使ったフレーズがたくさん出てきます。ちょっと聞いただけでは、虜になるようなフレーズ、あるいは人を驚かすようなフレーズ、奇抜なフレーズはそれほど見当たらないかもしれません。
しかし、何と言ったらよいか、こんなに音階を自由自在に操り、音階の持つ美しさを堪能させてくれる作曲家は他にはありません。モーツァルトの音楽では、音階をベースにした自然で流麗な表現の中に、ハーモニー、調性、リズム、色彩などいろいろな変化が凝縮されています。その変化が、自然に、かつ絶え間なく耳に流れ込んできて、私たちは心地良さとともに、表現の可能性が追求され尽くされたような満足感を覚えるのだと思います。モーツァルトの音階を多用したフレーズは言わば、内包する豊かな音楽を私たちの耳に自然に流し込むための潤滑水のようなもの?のように思われます。
実際に、モーツァルトを聞いた人の脳からはα波が出ることが科学的にも実証されています。
癒しの時代とも言われる現在、平均率を天才的に操り、私たちの脳からα波を呼び覚ましてくれるこの偉大な作曲家に感謝の念を新たにすべきでありましょう。
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