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『「正社員」の研究』小倉一哉著 日本経済新聞出版社より2013.6.14発行 非正規社員の割合が三分の一を超える現在、企業における正社員の位置づけと役割はどうなっているか。これからも企業の中核を担い続けるのか、近年の環境変化はどうなっているかなど身近で根本的な問いに答える。 将来への不安が少なく安定している、退職金や企業年金がもらえるなど、企業に勤める正規雇用者の待遇はいいことずくめのように見える。だがこれらがすべて保証されているわけではなく、過酷なノルマや昇進試験、伸び悩む賃金、長時間労働、突然の解雇やリストラなど辛いことも多い。 そもそも「正社員」とは何なのかその根源的な問いを、近時の「非正社員」研究の蓄積の増加から導き出している。個々の日本人が持つ「正社員」イメージの危うさなのである。そもそも「正社員」には、厳密な定義すらないのが実態であり、「正社員」という言葉そのものも社会的に認知され始めたのはせいぜいで1980年代以降にすぎないようだ。 つまり、この用語自体、歴史が浅いのである。にもかかわらず、研究対象である「正社員」の厳密な定義がないままに、否、厳密な定義ができないからこそ、日本の「正社員」研究は蓄積されてきた。「正社員」を意識することなく研究が進められてきたのである。本書の面白みは、その根源的な問いに正面から取り組んだことであろう。そして、確かに、「正社員」を意識して眺めることで、日本の労働市場の構造変化、さらには、バブル崩壊以降「失われた20年」での「正社員」の変貌がよく見えるのである。 リストラ、成果主義、長時間労働、雇用不安など、正社員」の実態を余すところ無く炙り出す。その反面として「非正社員」の存在の意味、さらに、アベノミクスで注目される「多様な正社員」の真に意味するところを浮き彫りにする。現代の“正社員”の実態に多方面からアプローチした異色の研究。 雇用と賃金の安定も疑わしくなった今日、会社と働き手の関係を再考し、今後を展望する、日本の労働市場の構造変化を読み解く上で、労使双方参考になる「正社員」の現状と今後について言及した一冊。
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