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『天佑なり 高橋是清 百年前の日本国債 上・下 』幸田真音著 角川書店より2013.8.8発行
足軽の家に貰われたのちの高橋是清は、英語を学び、渡米。奴隷として売られる体験もしつつ、帰国後は官・民を問わず職を転々とする。生来の勉強家は、現場経験に培われ不世出の銀行家へと成長する。(下巻)日露戦争の戦費調達を命じられた高橋是清は、ロンドンで日本国債を売り出し、英語力と人脈を駆使して成功を収める。蔵相、首相をも歴任、金融恐慌の鎮静化にも尽力するが、経済を破壊する軍国主義の波が押し寄せる。
日本が日露戦争に立ち向かっていくときにお金なく、初めて国債を発行し、常識はずれの金額を海外で販売できたためになんとか戦争を続けることができ、大蔵大臣になってからの財政の運転の仕方。実地で学んだ金融・財政を生きた形で生かしていく姿と最後まで、「なりゆき」任せに見える人生だがその場その場で、腰を据えて事に取り組む姿は、学ぶところが多い。
「もとより人間は、無一物でこの世に性を享ける。その後、どんな波乱や苦難に直面しようとも、所詮自分の始末は自分一個の腕でつけるものだ。どの時々で骨惜しみせず、おのれの信ずるままに精一杯生きて、ないも残さず、裸で堂々と死んでいけばそれでいい。」私欲を捨てて、国家のために全精力を尽くした生き方。
七転び八起き、百起きと言ってもいい波乱万丈の生涯、特に、幼少期の海外体験、芸者のヒモ、金八先生顔負けの熱血教官、文字通りの「山師」「相場師」、そして言うまでもなく、日銀入り後の輝かしい活躍、後の第20代総理大臣高橋是清、日本史全体を見渡してもこれほど多様で数奇な人生を送った人物はいない。
前半の波乱に富む人生もすごいが、後半の緻密な法律作りをしたり、金融の世界へ入りそこでも見事に自分の考え方を見いだして、国のために働く、無私の生き方がさわやかだった。「運がいい」というエピソードが展開される。流されるままに、人生に翻弄されているけれども、身につけられるものは、しっかりと身につけて、成長していく。高橋是清の生涯を描いた作品である。まさに波瀾万丈、豪快にして清廉潔白人生だった。
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