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前回の夕顔の巻の続きです。
六条の御息所のお付きの女房中将の君の、源氏に対する気持ちが叙述されています。
【本文】 北村季吟『源氏物語湖月抄』(猪熊夏樹編、積善館、明治24年初版)
おほかたにうちみ奉る人だに、こゝろしめ奉らぬはなし、
ものゝ情しらぬ山がつも花のかげにはなほやすらはまほしきにや、
この御ひかりをみ奉るあたりは、ほどほどにつけて、わがかなしと思ふむすめを、つかうまつらせばやとねがひ、もしはくちをしからずと思ふ、いもうとなどもたる人は、いやしきにても、猶この御あたりにさぶらはせんと、思ひよらぬはなかりけり、
ましてさりぬべきついでの御ことの葉も、なつかしき御気色をみたてまつる人の、すこしものゝ心を思ひしるは、いかゞはおろかに思きこえん、
あけくれうちとけてしもおはせぬを心もとなきことに思べかめり、
【書入れ】この色のフォント(本文太字部分に対応)
おほかたにうちみ奉る人だに
ばくぜんとみてゐた人 こゝろしめ奉らぬはなし 心にしめこませ申さない ものゝ情しらぬ 趣味もわからぬ 山がつも (山)の労働者も なほ やはり やすらはまほしきにや ぐづぐづしたい気になるのか、 この御ひかり 源氏の御様子 わがかなしと思ふむすめ かわゆい つかうまつらせばやとねがひ おつかへ申させたいと願ひ、 くちをしからずと思ふ じれつたくも思はない娘 みつともなくもない娘があつたなら いもとなど 妹 もたる人 持 いやしきにても たとへいやしい身分でも 猶この御あたりに やはりこのお方のそばに さぶらはせんと おつかへしやうと 思ひよらぬはなかりけり そうゆう風に気の向かなかつた人はなかつたことだ ましてさりぬべき だからより以上に それ相応に ついでの その場合場合の 御ことの葉も 手紙をもらふこと ものゝ心を思ひしるは ものゝわけのわかつてゐる人は いかゞは どうして おろかに 源氏のことをいゝかげんに 思きこえん 思ひませうか あけくれ 朝晩 うちとけてしも 御自由に おはせぬを (おはせぬ)方(を) 心もとなきことに 気がゝりなこと 【復元的近代語訳】
漠然とみてゐた人でさへ心にしめこませ申さない。
趣味もわからぬ山の労働者も、花の蔭にはやはりぐづぐづしたい気になるのか。
源氏の御様子を拝見する人々は、身の分際分際につけて、自分のかわゆいと思ふ娘をお仕へ申させたいと願ひ、もしくはみつともなくもない娘があつたならと思ふ。
妹など持つた人は、たとへいやしい身分でも、やはりこのお方のそばにお仕へしようと、さういふ風に気の向かなかつた人はなかつたことだ。
だから、より以上に、その場合場合の手紙をもらふことも、懐かしい御様子を拝見する人で、少しものゝわけのわかつてゐる人は、どうして源氏のことをいゝ加減に思ひませうか。
朝晩御自由にいらつしやらない方を気がかりなことに思ふやうだ。
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「内閣文庫本『安驥最要抄』について」
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近代の『源氏物語湖月抄』書入
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