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このところ買いためた古書の整理を兼ねて、めぼしいものを幾つか紹介します。
■『アララギ』昭和28年10月号「斎藤茂吉追悼号」
※釈迢空(折口信夫)の追悼文が収録されてゐるので入手。
迢空はこの年の9月3日に他界しました。
10月1日発行という表示が正確ならば、当人は本誌を手にすることができなかつたでせう。
編集後記には次のやうに記されてゐます。
「本号執筆者の一人である、旧アララギ同人釈迢空(折口信夫)氏は、九月三日病歿せられた。深く哀悼申上げる次第である。追悼録二に収めた一篇は、七月末病を押して執筆せられたものである。」
他にも錚々たる人々が寄稿してゐます。 横山重の文もあるかと期待しましたが、ありませんでした。 でも岡田真(ただし)の文があつたのは収穫です。 この人は歌人といふよりは蔵書家として著名で、奈良漬も何冊かこの人の印記の捺してある本を持つてゐます。 同じくアララギ歌人の岡麓が岡田に献本したものとか、古典籍とか数点。 なほ、歌集も出してをり、拙蔵本には署名が入つてゐます。 で、その追悼文を読んでみると、大阪の鹿田松雲堂に案内した時の思ひ出が綴られてゐます。 そこで正保版『祖庭事苑』を買つたが、茂吉に譲つたのだといひます。 どこまでも本から離れられない人のやうですねw 結局、後日、自分用に正保版よりも善い古活字版を手に入れたといひます。 きつと蔵書印を捺したはづだから、この人の印記をもつ古活字版は探せば出てくるものと信じます。 他の著名な執筆者…小宮豊隆・新村出・山田孝雄・平宗敦夫・宇野浩二・木村荘八・鈴木信太郎・川田順・斎藤昌三・水原秋桜子・山口誓子・なかのしげはる・幸田文・小堀杏奴・河野多麻・西尾実・土屋文明など。
『アララギ』は、このほか昭和17年11月号も入手しました。
これには釈迢空が「白桃以前」という論考を寄せてゐます。 奈良漬の折口信夫コレクションがまた増えましたw ■『はまぐり姫 付、くらげのおつかい(講談社の絵本)』昭和27年 文・千葉省三、絵・村上三千穂
※蛤女房をどう造形してゐるのか気になつて入手しました。
表紙では蛤の付いた冠をかぶつてゐますが、他では完全な人間の姿で描かれてゐます。 付録として後半1/3くらゐを割いて掲載されてゐる『くらげのおつかい』は海月骨無しの話。 こちらはクラゲの姿そのままを擬人化してゐます。 ただし目鼻は傘に付いてゐます。 他の魚介類は頭にモチーフとなる魚介類を冠してゐるタイプ(頭部着装型)とフルフェイスのマスクのやうに描かれてゐるタイプ(頭部異類型)とがあります。 ■『〈万民有益〉諸芸独稽古』明治19年
礼式・茶の湯・活花・書道・漢詩・和歌・俳諧・狂歌・雑俳・絵画・盤上遊戯・音曲・唱歌・諸々の遊戯・算術などの心得や作法を説いてゐます。 いろいろ面白い記述があるので、またの機会に紹介するつもりです。 ■『唱歌集』明治40年写 亡き孫を幼稚園に連れていつてゐた老婆が、遊戯唱歌の際に聞書したものをまとめたもの。 珍しい資料なので、これまた別の機会に紹介予定。 ■『八幡古表神社の傀儡子(吉富町文化財調査報告書第2集)』吉富町教育委員会、平成元年 福岡県築上郡吉富町に鎮座する八幡古表神社(はちまん・こへう・じんじや)に伝わる芸能の報告書。
傀儡子舞(くぐつまひ)と神相撲について報告してゐます。 後半、傀儡子の写真を掲載。 さて、驚いたことに、神相撲とは、その名の通り、神々の相撲の人形劇だといふことです。 神社での相撲といふと、奉納相撲と決まつてゐると思ひましたが、当社の神相撲は神々(の人形)を東西に分けて、勝ち抜き相撲を興行するのです。 奉納相撲の精神は、神の御覧に入れて、楽しんでいただくことにあるわけで、そこから転じて観衆も楽しむやうになつたと見られます。 ところが本相撲はどうでせう。 次第としては、まづ行司役の神が当社の主祭神たる神功皇后の像を拝します。 ついで相撲が行はれます。 終了後は皇后を筆頭として神殿に帰還します。 恐らく主祭神を慰撫するために神々が相撲を興行するのが本義だつたのではないかと思はれます。 その意味では神話世界を相撲といふかたちで現出させてゐるわけです。 依代となつた傀儡を通して神々が相撲をとつてゐるのだと思ふと、何とも不思議な感じを受けます。 神楽と傀儡遊びが融合した中世芸能の名残でせうか。 非常に惹かれます。 4年に一度行はれるさうだから、次回は平成28年のやうです。 今度は拝見したいものです。 なほ、当社については下記サイトを御覧ください。 http://kohyoujinjya.jimdo.com/ |
和本・古本
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