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室町時代のお伽草子に『精進魚類物語』という擬人化作品があります。
精進とは精進料理のことで、納豆や豆腐をはじめ、野菜の類がいろいろ出てきます。
魚類は魚や貝、蛸、烏賊の類です。
納豆太郎糸重(なっとうのたろう・いとしげ)
蛸入道赤色
丹後鰤助(たんごのぶりすけ)
*室町〜江戸期、鰤は丹後の名物でした
こんな名前の武士たちが壮絶な戦いを繰り広げます。
精進の勢力と魚類の勢力が合戦をするのですが、これが『平家物語』を彷彿とさせる迫力ある文章でつづられており、この時代の出色の物語作品だといえるでしょう。
これはなかなか人気があったようで、公家や武家の間で読まれた記録が残っています。
時代が下っていろいろな人たちの目に触れる機会も多くなったのでしょう。
読むだけに飽き足りず、二次創作をする好事家も出てきました。
『魚類青物合戦』、またの名を『青物魚類合戦状』と題する戯作が生まれました。
たぶん江戸中期〜後期のこと。
微妙にキャラの名を改めたもので、出版されずに写本として流布しました。
流布といっても伝本は2本しか確認されていないから、わずかな人々の間で回し読みされた程度だったものかも。
それから『精進魚類問答』という浄瑠璃風作品があります。
これまた写本で1本確認されるのみですが…。
こういう作品をみてみると、江戸時代の人も同人誌みたいなことやってたんだなーと思うわけです。
一方、こういった読み物のほかに、似た内容の語り物芸能(早物語)もあって、東北のほうでは近代まで知られていました。
これに関して、とある知り合いから、昔話研究者の故野村純一氏がそういう物語を紹介しているものがあると教えていただき、さらにコピーまでしていただきました。先月のこと。
『国文学 解釈と鑑賞』1985年10月号
これに鶴岡の鶴屋鴎涯(慶応2年〜昭和13年)という画家が大正8年に書いた『精進魚類軍記』という絵入写本が翻刻・紹介されています。
まさしく『精進魚類物語』の後裔!
はたして鴎涯の創作か、それとも手もとにあった写本を写したにすぎないのか、不明ながら、実に面白い内容です。
読み物と語り物との接点を考える上で非常に示唆に富む作品です。
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