穴あき日記〜奈良漬のブログ

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02 からすは(朝の歌)

    からすは
 
一からすはかあ/\ないておるすゞめ
 はちう/\ないておる障子(せうじ)はあか
 るくなつてきた早くおきぬと
 おそく成(なる)着物(きもの)をきがへ帯(おび)を
 しめ手水(てうづ)をつかひに行(ゆき)ま所(しよ)
 盥(たらい)に水(みづ)をくみいれてよふじを
 つかひ口(くち)そゝき顔(かほ)をていねに
 よくあらい手先(てさき)もていねによく
 洗(あら)ひきれいになつたらおはよふ
 と朝(あさ)の礼儀(れいぎ)を致(いた)しましよ御飯(ごはん)
 をしづかにたべまして紙(かみ)や手(て)
 拭(ぬぐい)わすれずに持(もつ)たら行(ゆき)ま所(しよ)
 幼稚園(よふちえん)さつさとあるいておくれ
 ずに今日(けふ)もあそばんつれ立て
 能哥(よきうた)うたひおもしろき遊(ゆふ)ぎ
 をいくつも致(いた)しま所(しよ)すきなべん
 きやう致(いた)しましよ
 
【釈文】
 
    からすは
 
一 烏はかあかあ鳴いてをる。
  雀 はちうちうないてをる。
  障子はあか るくなつてきた。
  早く起きぬと遅く なる。
  着物をきがへ、帯を しめ、手水をつかひに行きましよ。
  盥に水をくみいれて、楊枝を つかひ、口そそぎ、
  顔を丁寧(ていね)に よく洗ひ、手先も丁寧(ていね)によく 洗ひ、
  きれいになつたら 「おはよふ」 と、朝の礼儀を致しましよ。
  御飯 をしづかに食べまして、紙や手 拭わすれずに、
  持つたら 行きましよ、 幼稚園。
  さつさと歩いて遅れ ずに、 今日も遊ばん、つれ立つて、
   よき歌うたひ、
  おもしろき遊戯 をいくつも致しましよ。
  すきな勉強 致しましよ。
 
 
 ※「朝の歌」『新撰唱歌 尋常科用』(明治三五年 兵庫 近藤猪八郎著)収録。作詞・作曲未詳。
  なほ、YAHOO知恵袋では、この歌が何かといふ問ひに対し、「満鉄小唄」の替へ歌とする回答をベストアン サーとするが、それは誤り。満鉄(南満州鉄道)の創業は明治三九年であり、時期も合はない。
 
■『明治唱歌集』について

01 天長節

   天長節(てんてうせつ)
 
一今日(けふ)は十一月三日の朝(あさ)よ朝日(あさひ)に
 かゞやく日(ひ)の丸(まる)の国旗(こつき)は角(かど)並(なみ)
 ひいら/\国旗(こつき)は角(かど)並(なみ)ひいら/\
 
二今(いま)は十一月三日の昼(ひる)よ岡(おか)でも海(うみ)
 でも勇(いさ)ましく打出(うちだ)す祝砲(しくほふ)どん
 どん/\打出(うちだ)す祝砲(しくほふ)どん/\/\
 
三我(われ)ら子供(こども)は一所(いつしよ)につどひ幼稚(よふち)
 園(ゑん)にてうたひましようたひや
 はやせやよい/\/\
 
四今日(けふ)の祝(いわ)ひはどう言(ゆふ)いわひ
 みかどの御生(おんま)れ遊(あそば)した其(その)日(ひ)
 の祝(いわ)ひぞやヨイ/\/\天長節(てんてうせつ)
 ぞヤヨヽヤ/\/\
 
 
※作詞・作曲 伊澤修二
 三番の「うたひや」は「うたへや」の転訛。原文のまま。
 
 
『明治唱歌集』について

明治時代の唱歌集

手もとに明治時代の唱歌集の写本があります。
これは亡き孫娘の想ひ出に祖母が記憶をたよりに書きとどめたものとのことです。
序文を著したのは祖父です。
まづその文を掲載しませう(適宜、句読点・濁点・送り仮名を補つてゐます)。
 
***********************
 
此写本は愛孫みよ女が神田錦町神田幼稚園へ入園の当時、祖母貞子が附き添ひ行き、遊戯唱歌の折、日々聞き書きせしものにて、其の後、学齢に達し、神田淡路女子小学校壱年生より、下谷練屏小学校三年生に至る迄、常に家庭の教育復修等に心を用ひ、当人も夫を悦び、学びければ、毎学期の成績もいとよろしく、行く行くの発達を相共に楽しみしが、惜しむべし、明治三十九年九月廿日、計らずも、急なる病の為に(急性の腸胃病)、薬用効なく、西方へ行きて帰らぬものとなりければ、祖母のかなしみ、一方ならず、くやしく腹だゝしきことなれば、此の書も取り捨てんといゝしを、かく教への道に心置きせし数々を残しおきなば、後々子孫の為に親子励みの一つにもならんと、はし書きなして、保存することとはせり。読む者、おろそかになすべからず。
 
  明治四十年春 祖父六十翁 寿綱しるす
 
  此の春に野の花を見て
なき孫をおもへばかなし桜花
 ともに見し世は楽しかりしを
 
***********************
 
序文を著した寿綱の姓は宇都宮。
天保12年(1841)生まれ、明治45年(1912)没。
栄太郎。活版印刷業を営んでをり、また出版もしてをりました。
歌を嗜み、また古泉鑑定家としても知られます。
明治14年(1883)以来、『雅学新誌』を発行。
成島柳北らの文人と交流がありました。
編著書に『懐中常磐津本』明治17年(1886)、『大日本全国風雅の友 風交の友』 明治19年(1888)、『千代乃友』明治26年(1893)、『風雅美術 百花艸紙』明治26年(1893)などがあります。
亡くなつたのが明治45年といふことですので、本唱歌集が編まれたのは亡くなる5年前といふことになります。
 
***********************
 
以下に目録を掲げます(表記は巻頭目録による)。
 
 
08 ほたる
09 君も来給へ
10 川瀬に
11 桃太郎
12 うがびでゝ
13 ひばり
14 はと
15 朝日に
16 すゝめ
17 へいたい
18 赤ずち
19 浦しま
20 来て見よ
21 上にも
22 うさぎト亀
23 うんとふ会
24 さくら
25 こうとく ※「公徳唱歌」
26 すゞめ
27 いぬころ
28 いの字
29 舌切すゞめ
30 うさぎ
31 ひいらいたひいらいた
32 ますとの上
33 さるとかに
34 てうてう
35 花咲春
36 友とぢ
37 こゝなる門
38 風車
39 一つとや
40 すゝめ
41 こどもこども
42 あをぎみよ
43 君ヶ代
44 水をあおぐ
45 すゝめや
46 池のほとり
47 もゝ太郎
48 すゞめすゞめ
49 年の始
50 もんに
51 まなべまなべ
52 おりなす
53 わが子
54 梅
55 まさしけ ※「正成」
56 鉄道
57 すゞめに
58 雪だるま
59 紀元節
60 学門
61 椿
62 友とち 之二 ※「友とぢ来れ之二」
63 すゝめすゝめ
64 きしうつ浪
65 せかい一しう
66 朝とくおきて
67 おきよおきよ
68 かごめかごめ
69 おん馬(ま)よすゝめ
70 あさがほ
71 はなくらべ
72 あしたはうれしい
73 今日のけいこも
74 ひんひんどふどふ
75 きく
76 お池の金魚
77 七草千草
78 きのふも今日も
79 もふいくつねると
80 兄弟妹
81 ありをみよ
82 ひばりは
83 ちいさい子
84 廣瀬中佐
 
 以上
 
これから、ときどき1曲づつ紹介していきたいと思ひます。
 
■先日、中山太郎(1876-1947)の『日本盲人史』正続2冊(昭和9年及び11年、昭和書房)を手に入れました。
本書は盲人史研究の先駆的業績として名高い著作です。
イメージ 1
 
中山は『土俗私考』『日本若者史』『日本婚姻史』『日本巫女史』『祭礼と風俗』『学界偉人 南方熊楠』『日本民
俗学論考』『民俗点描』『伝統と民俗』『歴史と民俗』『生活と民俗』『国体と民俗』『信仰と民俗』『日本民俗学辞典』その他、数多くの著作を残しました。
また『梅こよみ・春告鳥(帝国文庫)』『校註 諸国風俗問状答』などの校訂本も出してゐます。
ただ、『愛慾三千年史』『売笑三千年史』などタイトル的にも一寸となあといふ領域にも手を染めてゐて、常に胡散臭さが付いて回る人文学者でした。
さういふわけで、中山の記述は話半分で読むのが丁度いいのかなと思ひます。
上記の諸編は『南方熊楠』や『日本巫女史』など幾つかを除けば、今日殆ど読まれなくなつてしまつたものですが、その点を了解して読めば充分楽しいと思ひますがね。
 
 
■さて、入手した『日本盲人史』が得難い価値があるのは、中山自身によつて献本されたものであるからです。
それは遊紙に墨書されてゐます。
イメージ 2
 
■献呈された阿部吟次郎といふ人物については寡聞にして知りませんが、『角』(昭和14年、私家版?)なる著作があります。
どうやら角のコレクターだつたやうです。
 
・阿部の著述として夙くに見えるのは、横浜貿易新報社といふ出版社が大正5年に刊行した『横浜市振興策(懸賞論文五篇)』です。
これに最優秀論文として掲載されてゐます。
本稿を読むと、横浜市を「我愛する郷土」「我市」などと書いてあるので、阿部は横浜出身で、当時なほ在住してゐたかと思はれます。
・また大正9年、雑誌『銃猟界』4月号に「サンダーバンス地方鰐魚狩日誌」を寄稿。
サンダーバンス地方はバングラデシュ(当時、英国領)にあります。
・翌年5月にも「鰐魚狩日誌」を寄稿。
・同年9月号には「野牛狩の記」を寄稿。
・昭和7年には『比島ト日本 モツト比島ニ注目ヲ望ムタメニ』といふガリ版刷の私家版を出しました。
比島とはフィリピン(当時、米国領)のこと。
表紙には著者名の端に「比島在任五年半」と記されてゐます。
昭和2年からフィリピンに滞在してゐたことが知られますが、奥付には福岡県門司市(現・北九州市門司区)の住所が載つてゐます。
実家でせうか。
・また昭和10年の大阪毎日新聞社編『南支南洋を国策的に観る』に「日本人はかうして食ひ込め」といふ論文を寄稿してゐます。
この時の肩書は三井物産株式会社台北支店長。
・昭和9年から10年にかけては台湾倉庫株式会社の監察人も務めてゐます(『台湾倉庫株式会社二十年史』昭和11年)。
この職は1年任期で三井物産から出向するのが恒例となつてゐたやうです。
なほ、11年には台北支店長は廣岡信三郎に代はつてゐるから、阿部は内地に戻つてゐたと思はれます。
・また昭和14年1月刊行の雑誌『経済市場』に三井物産の新小樽支店長として紹介されてゐます。
・更に翌年4月の同誌には三井物産新庶務部長として紹介されてゐます。
・ついで昭和15年8月28日の『大阪毎日新聞』の「指導者原理で一貫経済団体を再編成」といふ記事によると、三井物産業務部長として名前が挙がつてゐます。中央物価統制協議会議に出席したとのこと。
 
 
■かうして見ると、阿部吟次郎といふ人は戦前の経済界で活躍し、とくにアジア貿易に造詣が深く、一方で狩猟の趣味を持つた人物であつたことが知られます。
狩猟趣味が昂じて角コレクターともなつたのでせう。
恐らく東南アジアで獲つた獣の角が自慢であつたのではないかと察せられます。
 
 
■中山太郎が阿部に献本したのは、書入が正編にだけ見られることから、正続2冊併せてのことだつたと思はれます。
数ある著作の中で、阿部の専門外の著作を献本したことからすれば、新刊として続編が出たばかりの頃だつたのではないかと想像されます。
つまり続編は昭和11年8月刊行だから、それよりもさほど遠からぬ頃のことかと思はれます。
阿部は前年、三井物産の台北支店に赴任していましたが、11年に内地勤務に転勤していた可能性が高いので、中山は国内の阿部宅に送付したものでせうか。
 
 
■結局、中山太郎との接点が那辺にあるのか、今回は分かりませんでしたが、どちらも幅広い人脈があつた人物だつたでせう。
あるいは中山が世話役をしてゐて、『明るい家』といふ雑誌を刊行してゐた社交クラブ同人談話会あたりがからんでゐるのかも知れません。
気になるところです。
明日、「〈曾我物語〉の絵画化と文化環境―物語絵・出版・地域社会を手がかりにして」と題する公開研究会があります。
事前申込不要ですので、ご興味のあるかたはご参加ください。
 
開催日時 2014年3月2日(日)13:00〜17:50
会場   立教大学(池袋) 5号館 5302教室
 
◇ プログラム
12:30〜   受付開始
13:00〜13:10 趣旨説明
 
第1部 物語絵画としての曾我物語 司会 伊藤 慎吾(國學院大學兼任講師)
13:10〜13:55
◆「絵入り版本『曾我物語』の挿絵をめぐって―組み合わせ絵入り古活字版『曾我物語』を中心に―」
出口 久徳(立教新座中学校・高等学校)
 
13:55〜14:40
◆「『曾我物語絵巻』考―曾我物語絵の展開と享受の諸相―」
宮腰 直人(立教大学・兼/国文学研究資料館客員研究員)
 
14:40〜15:00 休憩
 
第2部 富士の巻狩と地域社会 司会 目黒 将史(日本学術振興会特別研究員)
15:00〜15:45
◆「下野狩りにみる『曽我物語』」
斉藤 研一(武蔵大学・非)
 
15:45〜16:30
◆「南九州における〈富士野の巻狩〉図の受容と再生―二つの神事絵巻をめぐって―」
鈴木 彰(立教大学)
 
16:30〜16:50 休憩
 
第3部 共同討議
16:50〜17:50 共同討議 
討議参加者 恋田 知子(国文学研究資料館) 黒田 智(金沢大学) 市川 廣太(近世絵手本研究者) 植松 有希(長崎歴史文化博物館)
 
 
 
人間文化研究機構 国文学研究資料館 公募・若手共同研究「語り物文芸の絵画化と享受環境の基礎的研究」研究代表者:宮腰 直人 
 

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