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いくとせか 春来て秋にたちかへる なごりしのぶの山のうそひめ 燕
17世紀の動物物語『鳥の歌合』より
【妄想語訳】
これでもう何度めになるだろう…
春に来て秋に去る、こんな暮らし。
名残り惜しく、想いしのびがたい私のうそひめよ。
〔妄想的解説〕
さすらいの男ツバメくんはマドロス姿でギターを背負って港にたたずんでいます。
夏が過ぎ、別れの季節がやってきました。
「男なら旅立つ時がある」
遠く水平線の彼方を見つめながら呟きました。
「かっこいいセリフだけど、それってパクりよね」
ツバメくんは振り返らず、無言のまま赤面しました。
「じゃ、オレはもう行くゼ。
ゆめゆめ追って来ちゃあいけないゼ」
何かの草を加えながらウソ姫を見つめました。
「はい、ではまた来春、お目にかかりましょう」
「…」
「何か?」
「あの、もう少し芝居に身をいれていただけませんか。
地のまんまじゃないですか」
そうです。
この二人は教室で学芸会のお芝居の練習をしているの最中でした。
(水平線の彼方は黒板に書かれています)
「はあ、やっているつもりですけど」
「じゃ、じゃあ、最後の愛のエンディングをやりますよ。
これは一番感動するシーンなんですからね」
そういって、ツバメくんは背負っていたギターを手にして歌い出しました。
「ウッソウッソにしーてあげる〜♪ ハイ、御一緒に」
「…」
「ウソ姫さん? どうしたんですか?」
「あの、この場面でこの歌ってヘンじゃない?」
ウソ姫さんは手渡されたネギを持ちながら至極当然な疑問を口にしました。
「いえ、ここでこそ、この歌はうたわれるべきなのです!
さあ、そのネギを振りながら歌いましょう!」
「…そう。では見解の不一致ということで、この役、辞退させてもらうわ」
ウソ姫さんは教室から出て行ってしまいました。
女性陣はその後を追って退室。
「ツバメくん、キモイ」「かっこいいのに残念ですわ」
などとつぶやく声が聞こえます。
残ったのは男性陣ばかり。
「フッ、男のロマンは結局男にしかわからないものなのか…」
ツバメくんをはじめ男性陣はがっかりしました。
かっこいいのになかなか好感度が上がらないツバメくんは今日も悩んでいました。
この歌は芝居の中、つまり二次元の世界では相思相愛の関係になっているウソ姫さんに対して、ツバメくんが詠む予定だった歌です。
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