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鬼面が外れなくなった酒呑童子は寺に身の置き所がなくなります。
さらには山王権現に比叡山から追放されてしまいます。
童子は泣く泣く山をおりて門前町の坂本に出たものの、人に見られては困るので夜まで隠れていました。
親のごとく育ててくれた須川殿ならきっと不憫に思って助けてくれるだろうと思ったのです。
さて、夜になって須川殿の屋敷に出向いてみたら、奉公衆が驚きおののいてみんな逃げだしてしまいました。
何事かと外に出てきた須川殿もまた恐ろしい鬼の姿に驚きましたが、退くことなく
「何者か」
と訊ねました。
その鬼は自分が酒呑童子であることを伝えます。
須川殿は話を聴いて、確かに酒呑童子だと認めました。
しかし助けてはくれませんでした。
「いそぎ誠の親の元へ参らせ給ふべし。
今日より後はみづから夫婦を、父とも母ともおぼしめすな。」
本当の親とは伊吹大明神のこと。
親元に帰れと素気無く追い払ってしまいます。
酒呑童子は日ごろ父とも母とも頼んでいる須川殿に捨てられ、泣きながら伊吹山に向かうことにします。
そんな酒呑童子を哀れに思った人がただ一人います。
須川殿の娘で童子の母である玉姫御前です。
玉姫は老僧の姿に身を変じ、童子に住むべき岩屋を教えます。
教えに従い岩屋に着いた童子はそこに留まることに決めます。
かくて長い年月をここで送ることになりました。
すると次第に童子は人間離れした神通力を備えるようになり、ついには本当の鬼となって鳥獣はおろか、人間まで襲うようになります。
するとついに比叡山の伝教大師の知るところとなり、日枝七社の神々の力で追い出されてしまいます。
その後、出雲―紀伊―摂津―大和―吉野―尾張―信濃―加賀―駿河―伊豆―相模―常陸―下野―上野―出羽―奥州と経巡り、そのたびにそれぞれの土地の神様に追い出されてきました。
さらに四国や筑紫、中国地方にも飛んで行ったのですが、やはりダメでした。
しかし、灯台もと暗し。
京都の北西、丹波の国の大江山は神様がいない山だと気づきます。
ここなら安泰に暮らせるだろうと通力を駆使して城を築きました。
これが大江山の<鬼が城(じょう)>です。
かくて、大江山の酒呑童子が京中の人々を奪い、喰らう時代がやってきます。
鬼面のはずせぬ童子から本当の鬼になるまでの過程は信頼した人に捨てられ、人々に遠ざけられ、ひどく人間的に傷ついています。
この部分、原文を読むと、けっこうジーンと来ます。
ここに挙げた巻物は奈良漬蔵『伊吹童子』です。
これは山王権現に比叡山を追い出され、須川殿に会いに行く場面からが残っている残巻です。
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