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江戸初期の俳諧師松永貞徳は、今でこそ看過できない重要な人物です。
が、戦前はほとんど知られていなかったようです。
小高敏郎(おだか・としお)氏が松永貞徳を調べていた頃はまだまだ存在を軽視されていました。
昭和28年に出版された小高氏の名著『松永貞徳の研究』には資料探しのことが少々回想されていて、それがロマンティックで読みながら興奮してしまいました。
まず、西鶴研究などしている藤崎一史氏から松永貞徳の子孫という老人が昭和初期までいたことを訊きました。
その後、その老人が京都府立博物館に家に伝来した貞徳関係の資料や松永家が明治期まで開いていた私塾講習館の資料その他宝物類なども寄贈したことを知りました。
そこで博物館に行き、寄贈者の名と住所を聞き出しました。
ところがその老人はすでに亡くなっていました。
その老人は煙草屋をするかたわら、一時期、医者の書記をやっていたそうです。
老人は能書の誉れある貞徳や、名儒といわれる嫡子昌三の末裔でありながら、そういう境遇にあることを嘆いていたそうです。
さて、小高氏は残念に思って近所の古老に2、3あたってみたところ、母方の姪御さんが市内で酒屋にいるという情報を得ました。
そして昭和22年、その姪御さんから松永家伝来の古記録類50余点を借覧・筆写させてもらいました。
この女性が亡くなったら、松永家はついに断絶してしまうそうです。
松永貞徳の流れがまさに絶えようとしているときに、貞徳研究を志し、かくも優れた大著が生まれたことに、何か深い因縁が感じられました。
国文学の勉強をしているものとしては、人生のうちに一度はこういう出会いを得たいものです。
☆『SUB & MINOR』vol.1の紹介文
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