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江戸時代中期の戯作に『虫合戦物語』というものがあります。
舞台は庭。
といっても民家の庭ではなく、大名屋敷の庭園をイメージしたほうがいいかも知れません。
庭先の草むらに虫の国、草村国があり、カマキリが王として統治しています
そのかたわらに築山があり、そこにはツチグモが主として支配しています。
それから池の主はカエル。
このように、草村・築山・池それぞれの領土に虫たちが暮らしているのでした。
カマキリ王の姫君の名を玉虫姫といいます。
絶世の美女で、蛍の君が恋文を贈りました。
これに対抗して、ツチグモも贈りましたがダメでした。
そこで腹を立てたツチグモは策略を練ります。
池のカエルがその状況を聴き、ツチグモに味方して草村国を攻め込みます。
が、勝負は草村方に軍配が上がり、寄せ手は逃げ落ちます。
しかしツチグモは草村方の武士ヒトリムシ(火取虫)に討ち取られます。
さて、これで一件落着と思いきや、ツチグモの霊魂は転生してツツガムシとして復活します。
やはり築山の主として君臨し、悪事をなします。
ツツガムシは玉虫姫を誘拐します。
幽閉された玉虫姫をワレカラが一命を賭して救出します。
そこから草村国の反撃が開始され、ついにツツガムシが退治されます。
草村国の武士には俵藤太秀郷、頼光四天王などに基づくキャラクターがおり、ツチグモ・ツツガムシは妖怪の土蜘蛛、酒呑童子、平将門のイメージがみられます。
どんな名前のキャラクターが出てくるのか、主要なものを挙げてみます。
擬人名/対象昆虫/モデル
俵兵太米虫/コメムシ/俵藤太秀郷
渡辺源五郎虫/ゲンゴロウ/渡辺綱 坂田の井守のかみ/イモリ/坂田金時 うすいの筬虫/オサムシ/臼井貞光 浦べのすずむし/スズムシ/卜部季武 平井の火取虫/ヒトリムシ/平井保昌 犬せせりの谷のすけ/セセリムシ/ お袋蜘/ジョロウグモ/ 蛙の三郎何がし/カエル/河津三郎祐泰 手長の太郎水蜘/ミズグモ/手塚太郎光盛 げじげじ平蔵足広/ゲジゲジ/梶原平三景時 蜂やじがの守針持/ジガバチ/蜂屋頼隆? 熊ばちの長はん/クマバチ/熊坂長範 悪七兵衛かげろふ/カゲロウ/悪七兵衛景清 日向の蟀/コオロギ/悪七兵衛景清 かげろふの改名 稲子式部/イナゴ/和泉式部 あべのやすで/ヤスデ/陰陽博士 秀郷や頼光四天王のほか、『平家物語』関連のキャラクターが何人か出てきます。
河津三郎は『曾我物語』に出てきます。
ゲジゲジ=景時とするのは当時の通称(?)をそのまま受けたものでした。
珍しいのは和泉式部です。
王朝の人物の名はあまり使われません。
他にモデル不明の犬せせりはセセリムシの擬人名でしょう。
これはブヨのことです。
こういう名前にいちいち注釈を付けていく作業は意外と面白いものです。
当時の人はこういう名前をみて、『平家』や『曾我』の登場人物をすぐ思い浮かべることができたのでしょうか。
秀郷や景時のように知られた人物ならまだしも、河津三郎、手塚太郎くらいになると、そこそこ読みこんでいないと出てこない名前かも知れません。
パロディの読解に必要な古典の教養が気になりました。
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2011年11月15日
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