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またまた雑誌紹介をしようとしたら、違う方向に話題が進んでしまいました。
『汲古』第60号は「築島裕先生追悼号」ということなので、これは捨てがないと思ったわけです。
僕は先生とはまったくもって無関係な環境で生きてきましたので、専門的なところや人柄等についてはわかりません。
ただ、訓点語の研究の第一人者で古代・中世以来の日本伝来の仏典や漢籍に付された訓点資料を数多く紹介された方です。
ですから国語学専攻でなくとも、その紹介された貴重な資料の数々に接する機会がたびたびありました。
中でも、同じく訓点語研究の大家小林芳規氏らとともに刊行した石山寺資料叢書は何度となく手にしたものです。
ところで築島氏や小林氏の開拓した資料群に〈角筆(かくひつ)〉と称されるものがあります。
われわれならば書入れをするときに、鉛筆とかペンとかを使います。
前近代は墨なり朱なり色こそ違いますが、筆を使って書入をします。
しかしもう1つ方法があって、それは先をとがらせた木や金属の棒で書くことです。
これは紙面を汚さないし、また他に有用性があったことでしょう。
写真や影印版ではほとんど見過ごしてしまうものなので、原本を手にして、光のあたる角度に注意してみないといけません。
こういう資料があるんだという驚きは、学生時代に国語学の講義の中で教わりました。
で、書誌学資料のサンプルにでもと思ってその後何点か買い求めたことがあります。
(写真はまた今度載せます)
さて、ことのついでに、原本を手にしなければ分からない書誌情報として他にどんなのがあるかというと、それはまあいろいろあるものです。
(昨日も都内の大学図書館に奈良絵本の『平家物語』の書誌調査に出向いたのですが、そこで写真では絶対分からない制作時期を示唆する痕跡を見つけました。)
たとえばその1つに白界というものがあります。
これは要するに罫線のことですが、しかし墨で引いたものではなく、ヘラ押しして引いたものです。
上の資料では四周と行間とに線が引かれています(『十八道念誦頌次第』奈良漬所蔵)。
これは文章を均等に書くために利用するわけですが、もう1つ昔は穴をあけて見当を付ける方法も採られました。
各行の頭に黒い点がみえますが、これは針で開けた穴です(『歩立聞書(かちだち・ききがき)』奈良漬所蔵)。
こうすることで、一定間隔で書写することができるわけです。
まあともかくも、国語学の研究というのは、古典資料を原典から洗いなおすことから出発することがおおいので、畑違いの人間にしても得られるものはいろいろあるものなんですね。
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2011年12月22日
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