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お久しぶりです。
奈良漬(の中の人)の論文集『室町戦国期の公家社会と文事』(三弥井書店、近刊)出版準備作業が中々はかどらず、ブログのほうをおろそかにしておりましたorz
索引作りを済ませ、一昨日、表紙、帯も作りました。
20日に試作が出来るというので、あと一週間は針のむしろの上にいる心持が続くことでしょう。
とはいえ、少し心にゆとりが出来ましたので、今日はしまい込んでいた和本の類を少し引っ張り出して、ひとりニヤニヤしながら鑑賞しておりました。
その中の一つに『義経記(ぎけいき)』の絵入版本の端本があります。
内容はタイトルが示すように、源義経(みなもとの・よしつね)の伝記物語です。
版は江戸前期のもので、挿絵があります。
で、巻頭部分(右側=目録丁ウラ)をみると、次のように墨書されていました。
義経記 本屋/孫七
よい本じや
なんですかね。
「よい本じゃ」ってwww
よくこの手の版本に見られる書入れは、持ち主の名前は住所です。
「本屋孫七」という名はたぶんこの本の持ち主のこととみていいでしょう。
本屋が商品として扱ったというより、個人の持ち物としていたのかなと想像します。
本の痛みがひどいので、もしかしたら貸本として扱ってたのかも知れませんが、そういう痕跡がないので、ふつうに個人所蔵の本だったのかなと思います。
ただ、「よい本じゃ」ってコメントをでかでかと書いてある本など、これまで目にしたことがありません。
宣伝用の書入れとすれば、貸本かも知れません…。
単に読んで面白かったから勢いで書いてしまったのかもw
ちなみにこれが書かれた巻5は吉野山を舞台とする場面が描かれています。
義経一行が吉野山に隠れたものの、山の僧たちに追われることになったので、静御前を残し、佐藤忠信を山にとどめて、再び下山するまでの部分です。
能「吉野静」の題材にもなっているから良い巻であるに違いはありませんけどね。
それから挿絵にも落書っぽいもの―山上に〈月に叢雲〉を描くなど―が散見されます。
その中で、台詞の書入れもあります。
これは「忠信、吉野山合戦の事」の一図です。
斬っているのが忠信ですから、斬られているのはおそらく追手の「川くら法師」という僧兵でしょう。
忠信の上あたりに次の墨書がみられます。
をほへたか
「覚えたか!」
っと叫んだんでしょう。
ただし、このフレーズは原文にはありませんから、持ち主が勝手に創作したものです。
近代人なら
「思い知ったか!」
という心持でしょう。
こうした落書は嫌いな人は嫌いでしょうが、一概に無益なものともいえないでしょう。
つまりどのようにこの本を読んでいたのかという読書の歴史を知る、ささやかな記録にもなるからです。
奈良漬は落書フェチなので、古本屋で落書が一つもないキレイな本と落書だらけの本とがあったら、迷わず後者を求めます。
まあ、もっとも、挿絵に描かれたキャラクターに台詞を付けるというのは、一種の創作であり、子どもが教科書の挿絵の人物に吹き出しを付けて物を言わせるのと同等の遊びでもありますね。
だから真面目な話、学校の教科書の落書を集めた資料集というのを誰かが作ってくれれば面白いんですけどねw
とくに歴史の教科書は落書の宝庫だと思います。
ちなみに義経繋がりで付言。
上の記事とは関係ないですけど、義経の兄頼朝の墓が破壊されてしまったというニュースがありましたね。
とんでもない話です。
が、それよりも気になったのが、NHKのアナウンサーがおしなべて「みなもとのよりとも」を「みなもと・よりとも」と言っていたことです。
だったら、大河ドラマでも「たいら・きよもり」と名乗ってもらいましょうと言いたいところ。
ドラマと報道では人名の扱いを変えているんですかね。
仮に小野小町の墓が云々という話題を取り上げたら、「おの・こまち」と言うのでしょうか。
とかく日本語に関する啓蒙的な番組を作ったり、「ら」抜き言葉は日本語の乱れとか言っているわけですから、教育的な面にも配慮して、歴史上の人物の名前くらい正しく伝える努力を怠らないでほしいものです。
長文ご容赦。
***異類の会***
『こほろぎ物語』小考
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2012年02月12日
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