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伝承文学研究会という会が東京と関西で毎月1度開催されています。
もともとは東京だけでしたが、中心的な先生が関西に赴任されてから、東西二箇所の月例会と、夏に合同の大会が行われるようになりました。 私はこの会に大学院後期課程から参加しており、それから随分経ちました。 大抵の月例会には出席し、いろいろ勉強させてもらっております。 その会が先週の土曜日に第400回を迎えました。 記念の会ということで、いつもの研究発表ではなく、下記のテーマで座談会が催されました。 「領域の深化と多様性―テキスト・資料の発掘、文化としてのアプローチ―」 伊藤慎吾「中近世の公家社会と伝承文学、その他」
恋田知子「物語草子とその周辺」 藤巻和宏「文学研究の対象と枠組み―寺社縁起研究を起点として―」 研究発表でもシンポジウムでもないということなので、肩肘の張らない内容になりました。
三人それぞれ強い関心をもって取り組んできた対象と研究の展望について話をしました。 まず「中近世の公家社会と伝承文学、その他」は公家社会において伝承文学とは何なのかということ。
これを場の問題として捉え、故実口伝の実態について菅原家を中心に研究してきたこと、今後のことを述べました。 基本的には伊藤著『室町戦国期の公家社会と文事』で言及したことを整理したものですが、中でも家や諸道の垣根を越えた口伝のやり取りに注目しました。 また物語読申の場についても三条西家、山科家を例に言及。 音読史の必要性を説きました。 ところで伝承文学研究において、柳田国男以来しばしば説かれる物語・語り物の伝承者としての宗教者・芸能者の問題ですが、これについても一石投じました。 『浄瑠璃物語』に関することですが、ちょっと長くなるので省略します。 要は冷泉という伝承者がいてこの物語ができたという説に対する批判です。 この他、現代文化論にいかに介入するかということについて言及。 次に「物語草子とその周辺」は物語草子研究の現在の諸問題を示し、とくに絵巻・奈良絵本の制作実態や環境について、また寺院という場の問題や宗教的言説との関わりをめぐる研究状況を紹介。
ついで恋田さん自身の関心として〈物語草子〉という概念について、お伽草子と擬古物語及び仮名草子の関係について、尼寺における文芸受容について、仮名法語について種々言及されました。
最後に「文学研究の対象と枠組み」は、藤巻さん自身の研究の軌跡と現在のテーマを述べ、寺社縁起研究の流れを概観。
そして今後の寺社縁起研究の方向性について、古代縁起・太子伝と流記資材帳、中世縁起の多様性、近世縁起―略縁起・霊場記・名所図会・通俗仏書、資料の発掘・紹介、起源論・由緒論・比較縁起論に項目を分けて解説しました。 三人に共通することといいますか、この世代はそれよりも若い世代に比べ、既成の学問的枠組みに批判的な性格が強いように思います。
戦後の国文学が細分化し、学会による棲み分けが進み、古代・中世・近世の繋がりが希薄になる中で、歴史学におけるいわゆる「社会史」の影響もあって越境の試みに積極的であるように思います。 これからどうなることか。
このまま会が存続すれば、第500回は10年後くらいに行われるでしょう。 |
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2012年10月12日
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