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擬人化という語(1)

現在の日本では、〈擬人化〉という語が過剰なほど使われるようになってきた。これは2000年以降の現象といえるだろう。
ただ、動物が人間に〈変身〉することも〈擬人化〉という語で表現する現状は、文化論や物語分析の文脈では適切でない。
さらにいえば、古くから文化人類学の分野では人間の姿で神が表されることを〈擬人化〉と表現されることが多い。これもやはり同様に適切とは考えない。太陽や雷を神として信仰する行為と、「フォークとナイフをイケメンに描いてみました」という個人的創作とを同じ次元で扱おうことになってしまう。
小著『擬人化と異類合戦の文芸史』(三弥井書店)では、序論において、〈変身〉という概念と〈擬人化〉という概念は別であるということ、〈神格化〉や〈妖怪化〉と〈擬人化〉とは、文化的位相も物語上の意味や機能も異なるということを論じている。
以下には、本書の性質上取り上げなかったことを、補っておきたい。
 
そもそも、この〈擬人化〉という術語はいつ頃から使われ出したのか。
これについては鈴木棠三『通名・擬人名辞典』(東京堂出版)の「擬人名概説」が参考になる。これはあくまで「擬人名」という術語の語史に主眼があるのだが、周辺語彙も扱っている。これによると、『広辞苑』に「擬人観」という項目があり、そこにはanthropomorphismの訳語であるという。『広辞苑』の何版からある項目なのかは分からないが、1955年(昭和30年)に初版が出ているから、それ以降のことであるのは確かだろう。
鈴木が古い事例として挙げるのは、1915年(大正4年)刊行の『大日本国語辞典』で、それには「擬人」「擬人法」が立項されているという。ただ、「擬人」は「自然人にあらざる者に、法律が人格を付与すること。又は、其の人格。法人」とあり、法律用語として扱われている。一方、「擬人法」は「非情なものを、人類に擬していひなす法」という、今でも普通に使われる修辞法の用語として扱われる。
 
ちなみに『日本国語大辞典』第2版(初版未見)には「擬人化」が立項されており、「人間でないものを、人間になぞらえて扱うこと」とする。妥当な解説だろう。そして初出例として1935年(昭和10年)発表の鏑木清方「雪」を挙げる。すなわち「多く行はれる禽獣の擬人化の中でも殊に傑れたものであらう」とある。前後の文脈は分からないが、今と変わらぬ用法で使われているようである。
 
ところで、鈴木は「擬人」が翻訳語であるか否か、翻訳語ならばいつ頃造られたのか、資料的に確認できずに結論を保留している。
鈴木はpersonificationが「無生命の事物、あるいは抽象的観念を人として表現する」として、その訳語のように捉えているのだが、すでに1919年(大正8年)の『袖珍新聞語辞典』に「擬人」をpersonificationの訳語として示してある。
戦前、戦後にかけての日本では、これが一般的だったのかも知れない。
結局、「擬人」が訳語であるか、それとも、personificationに、すでにある「擬人」という語を採用したのか、まだよくわからない。
ちなみに「擬人法」は『袖珍新聞語辞典』に先んじて1892年(明治25年)の正岡子規『獺祭書屋俳話』に見える。翻訳語のようにも思われるが、あるいは国文の分野で用いられ出したものかも知れない。

そういうわけで、鈴木と同様、私も結論は保留としたい。

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