穴あき日記〜奈良漬のブログ

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古典的奈良漬

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募金と勧進

今回の震災でも出ました。
震災復興の募金と称する犯罪です。
阪神大震災の時にもあったと記憶します。
 
これらの輩がニュースで取り上げられると、きまって、室町時代の売僧(まいす)を想起します。
古くは南北朝の合戦、近くは応仁文明の大乱によって都をはじめ各地の社寺が焼失し、また破損しました。
修理し、再建する必要があります。
しかし社寺の所領は武家に横領され、修理・再建する経済的ゆとりなどほとんどありません。
そこで、修理費を募るべく各地に僧を派遣します。
街頭に立って募金活動に励む僧もいれば、一軒一軒歩いて回って一紙半銭、つまりほんのわずかな金銭や紙、鉄くずでも喜捨してもらうのです。
こういう活動を勧進といいます。
 
ところが人々の善意をたのんで社寺の復興、鐘の鋳造などを唱えて、その実、私腹を肥やす輩がずいぶんといたようです。
室町時代の北野大社の社家日記などを読んでいると、何人かの売僧が当社の勧進と称して金銭を得ているということが話題になっています。
 
このほかにも記録が散見され、当時、偽の勧進活動がはびこっていたことが知られます。
 
悲しいかな、昔も今もこういう輩はいるものですね。

近世には男色の文献がたくさんあり、またそれらを取り上げる人は昔からおります。
そうした先人が紹介しているのかどうか、あまりこの分野に明るくない者としては分かりかねます。
なのですでに知られているものかも知れませんが、最近読んで面白いなと思った男色関連記事をちょっと挙げておきます。
それは先日も取り上げた仮名草子『大仏物語』(1644年刊)に書かれていることです。

 * * *

客僧云はく、
「昔より女房・若衆の道を、義理を背いても愛するはいかに。」
一貫曰く、
「それ、女房・若衆は花月の二つなり。
 たとへば花を若衆に比してみれば陽なり。
 月を女房に比してみれば陰なり。
 されば花を若衆に比して云ふときは、十五六は春の花なり。
 誠に落花のはやきものなるほどに、情けをうけて人にも見すべき事、まこと本意なり。」

 * * *

この物語は行脚の客僧と儒仏道の三教に通じた一貫という人物との問答から成っている作品です。

客僧が
「昔から義理を背いてまでも女房や若衆を寵愛するのはなぜか?」
と、一貫に訊きました。
一貫はこう答えました。
「女房と若衆は花月に譬えられる。
 若衆は花で女房は月。
 女房は陰で若衆は陽。」

ここでいう〈花〉とは桜の花を指すのでしょう。
若衆は桜の花だから、その命は短く、15、6歳というほんの一時しか盛りがありません。
世阿弥のいう「時分の花」と同じ発想のようです。
そういうわけだから、若衆に対して、その一時を大切にしてあげなくてはならないという考えなのでしょう。
だからこうも述べます。

「この方より世間に稀なる名花、または主ある花などに思ひを懸けて、かへつて他見をねたみ、我一人して飽くまで見んと思ふは人欲のわたくしなり。」

若衆は囲って秘蔵すべきではなく、その美しさを広く見せる器量を持てと言っています。

「心静かに愛すべきに、何の仔細のあるべきぞ。」

このように、『大仏物語』に見える若衆論はずいぶんとプラトニックなもので、花のごとく心静かに眺め、わずかな美しい時を惜しみながらも愛でるのがよいというもののようです。

舎利という尼の話

昔、肥後国(熊本県)八代郡に舎利の尼という女性がいました。
天保勝宝3年(751)生まれです。
しかし、生まれたときの姿は身の毛もよだつものでした。
満月のような形をした肉塊だったのです。
二親はともに恐れ、箱に入れて山峡に捨てました。
7日後、どうなったか気になったので見に行ってみると、肉塊が割れて女の子がおりました。
父母ともに喜んで大切に育てることにしました。
 
この子は成長が早く、わずかの間に大人のように大きくなりました。
体だけでなく、頭脳のほうも自然と知恵が備わっており、言葉も巧みに美しくこなしました。
7歳で『法華経』『華厳経』を誦して尼僧となりました。
仏道修行に熱心で、周囲の人々からは聖者と称えられました。
 
肥前の大安寺という大きな寺で仏事があったとき、舎利尼の参会しておりました。
これに対して寺僧が
「尼の身でなぜここにいる?」
と難じたのに対し、尼は答えました。
「仏の慈悲は平等で、人間に満遍なくそそがれています。
 法界一相、なぜ男女を分かたれましょうか。」
その後、次々と僧たちの問いが続きます。
次第に教義に及んでいきましたが、尼は流暢に答えていきました。
 
かくて、諸人は舎利の尼を敬い尊び、舎利菩薩と称えました。
 
この舎利菩薩が実在したのかどうか定かではありません。
出生の異常さは、かぐや姫に通じるものがあります。
捨てられた後、超人的な能力を示すのは、以前取り上げた酒呑童子もそうでした。
女性が僧侶からの難題を次々に解決していく趣向は、頼朝・義経の母常盤御前の物語『常盤問答』などにも見られます。
この人の伝記は、分解していくと、関連する伝説・物語が見えてきます。
なお、肉塊を産む話は怪談風に語られることがしばしばあります。
たぶん、後世、血塊(けっかい)といわれるものでしょう。
民間にも伝わる話です。
 
中世の漢文体の伝記集『元亨釈書(げんこう・しゃくしょ)』に見られる話でした。

長田神社の幟

前回取り上げた神戸の長田神社の続きです。
長田神社の幟(のぼり)もなぜか手もとにあります。
「長田大明神」と大文字で記されています。
立派なもので、手書きかと見たら、そうではなく、これもまた摺物です。
イメージ 1
よくよく見ると刷毛の跡が見えます。
たとえば「大」の字の3画目から「明」の「月」の部分にかけて刷毛の痕跡がはっきり見てとれますね。
 
絹布ではなく、紙の幟です。
こういうのはどういう目的で摺ったのでしょうか。
室内に架けたのでしょうか。
 
用途がいまいち分かりませんが、ちょっと珍しい資料だと思います。
 
ようやく正月ボケから回復しつつあります。
 
以前紹介した国文学者↓
が言っていた言葉をちょっとメモしておきたいと思います。
 
1つ目は柳田國男についてのつぶやき。
 
「柳田先生のお宅は質素だった。
 服装もそうだ。
 その分、本を買っていた。」
 
柳田國男は『遠野物語』の著者としてよく知られている学者です。
日本の民俗学の父とも称されています。
僕も昔は柳田の著作をたくさん読みました。
国文学にも大きな影響を与えた人で、とりわけ昔話や伝説といった民間説話と文学との関係について示唆に富む優れた説を多く提起していきました。
そういう人ですから、私生活はつつましやかに、学問には惜しみなく出費していたのかも知れません。
 
次に三島由紀夫。
 
「三島由紀夫は能を分かっていない。
 一般の人は、しかし、三島が言うと、ああそうかと納得してしまう。」
 
「三島由紀夫は国学院大学に2度足を運んだ。
 1度目に来たとき、折口信夫(おりくち・しのぶ)先生は赤いチョッキを着ていた。
 そのことは阿部君は知るまい。」
 
前者については、能楽研究の大家ですから、よく分かってらっしゃるということでしょう。
あいにく僕は三島作品を碌に読んでいないので、なんともコメントしづらいつぶやきです・・・。
後者については、まず折口信夫というのは国学院の教授で国文学全般を研究し、また柳田國男の弟子ともいえる民俗学者でした。
とはいえ、その学問はきわめてユニークで、柳田民俗学とはずいぶんと違った性格をもっています。
歌人釈迢空(しゃく・ちょうくう)の名でも知られています。
 「葛の花 踏みしだかれて 色あたらし。 この山道を行きし人あり」
という歌が代表作で、僕は高校の教科書で知りました。
阿部君というのは阿部正路氏で今は亡くなりました。
折口最晩年に卒論を出したという方です。
近代文学専攻ですが、妖怪・幽霊の本もいろいろ出していました。
赤いチョッキを着ていたとか、まあどうでもいいことですけど、こういうところ、一種のファン心理なんでしょうね。
 
最後に藤井貞文。
 
「藤井先生は身なりに構わぬ人だった。
 いつもクチャクチャのYシャツやネクタイ、よれよれの背広を着ていた。
 服装なんてどうでもいい(笑)」
 
歴史学者藤井貞文氏についてのつぶやき。
幕末維新期の研究者で、やはり折口の弟子にあたる人。
 
学者というのは身だしなみにこだわるタイプと全然無頓着なタイプがいるみたいですね。
『相棒』の右京さんとアニメ監督の庵野秀明さん(安野モヨコ『監督不行届』参照)とを、ふと思い浮かべましたw

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