穴あき日記〜奈良漬のブログ

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古典的奈良漬

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王朝文学の代表作品『伊勢物語』は、後世、文学の領域にとどまらず、さまざまな分野に影響を与えていきました。
屏風や襖、障壁からはじめて、陶器、硯箱や貝などなどあらゆる調度品に『伊勢物語』のモティーフが見られます。
とくに好まれたのは筒井筒の段と業平の東下りの段でしょう。

さて、『伊勢物語』関連の作品のコレクションが伊勢物語文華館(鉄心斎文庫)にあります。
ここは年に2度、短期間の展示だけされるところですが、所蔵品は優品揃いで、目を見張るばかりです。

今度、『伊勢物語』のカルタを中心とした展示があります。
あまり宣伝されないので、ご存じの方が少ないのが残念です。
もっともそのささやかな展示がまたいいのですが・・・。

11月5日(金)〜14日(月)
午前10時〜午後4時

場所は小田原市新屋3−2

最寄駅は小田急線富永駅

場所が場所ですので、休日にハイキングがてら行かれるとよろしいかと思います。
僕は埼玉から新宿に出て、小田急線でのんびりと車窓から見える景色を楽しみながら行きます。

かぐや姫出生異聞

今日、かぐや姫は、竹の中にいて、それを竹取の翁が見つけて育てたものと言われます。
しかし、中世にはそれ以外のかぐや姫の出生伝説も伝わっていました。

室町時代の連歌師牡丹花肖柏(ぼたんか・しょうはく)の著した『春夢草(しゅんむそう)』という詠草集には次のようなエピソードが載っています。

 * * *

昔、富士の裾野に竹取の翁という夫婦がいました。
近くに竹を植えて、それを毎年売って渡世としていました。
ある時、竹に鴬の巣があるのを見つけました。
鴬の巣には郭公(ホトトギス)の卵があるといわれるから、では育ててみようと思い立って持ち帰りました。
数日後、それは人の形になりました。

さらに月日が経つと次第に次第に美しい女の子に成長しました。
周辺まで光り輝くことから、かくや姫(かぐや姫)と名づけました。
さて、時の天皇をはじめとして、公家や国司など大勢の人々が妻に迎えようと心を尽くしましたが、一向になびきません。

かぐや姫は、その後、富士山の洞窟に籠もってしまいました。
富士山から煙が立ち始めたのはそれからだそうです。

 * * *

竹取の翁がかぐや姫を見つけたのは竹の中ではなく、鴬の巣の中でした。
そして始めから人間の姿なのではなく、卵から孵ったのでした。
かぐや姫は最後には翁夫婦のもとを去って月に帰るのではなく、富士山の洞に籠もってしまうのでした。

月に帰るというのはロマンティックですけど、洞に籠もるというのは不老不死を暗示しているのでしょうか。
山の神の前世の物語といった感じで、これはこれで魅力的だと思います。

近世の連歌師の廻国

連歌は5・7・5の長句と7・7の短句を鎖のように連ねていく文芸です。
これを100句(=百韻)続けて完結させます。
一人で行うときは独吟といい、二人で行うときは両吟といいます。
独吟も両吟もよく行われましたが、やはりもっと多くの人と一緒にやったほうが面白いようです。
連歌を行うと、その面子(=連衆・れんじゅ)には連帯感が生まれるようです。
人間関係の形成とか、親睦を深めるとかに有効な文芸であったわけです。

連歌は熱狂的に受け入れられ、都ばかりでなく、地方でも大流行りでした。
そうした需要に応じるべく、旅をする連歌師が現れました。
鎌倉時代の後期から増えていきました。

戦国時代になると、連歌の中でも和歌的伝統に反して諧謔性を指向する俳諧が流行り出します。
そして俳諧師と称する者が台頭していきます。
江戸時代は連歌よりも俳諧が主流となります。

ただ、後世、俳諧師とみなされる人物の中には、自分では連歌師と自認する者もいました。
西鶴の師西山宗因はその一人です。
宗因は旅の連歌師ではありませんが、また中世以来の諸国を巡る連歌師がいたようです。
17世紀末の本にこんな話が載っています。

連歌好きな人が諸国を巡っていました。
ある時、木曾山中の家に滞在することになりました。
そして主に言いました。
「ここに連歌師などはいませんか」
主の返答。
「ここにあかがし(赤樫)、しらかし(白樫)はございますけど、れんがしという樫の木はついぞ見ません」

これはちょっとした小咄ですけど、前提として連歌をして諸国を巡る人がいたことがあったのでしょう。
俳諧ではなく、連歌。
それをまだ受け入れる余地が、江戸前期にはあったのでしょうね。
連歌=中世、俳諧=近世という文学史的理解が一面的であったんだなあと思うきっかけとなりました。

能因、西行、宗祇、芭蕉など、放浪の歌人は古くから存在しました。
これはら氷山の一角で、きっと名もない歌人や連歌師、俳諧師が数多くいたのではないかと思われます。
歌をもって身を立てる旅人ではなく、諸国を廻る聖であって同時に旅先で歌を詠む僧も多くいたことでしょう。

室町時代後期の代表的な連歌師として宗祇がいますが、そのほかにも無数の連歌師がいました。
その中でも特に名高い人物に猪苗代兼載(いなわしろ・けんざい)がいます(1452-1510)。
猪苗代という名からうかがわれるように、もとは猪苗代湖のある会津の出身です。
そういうこともあって、兼載の足跡は多く東日本に残されています。

今日、栃木県の南部に位置する小山市(おやまし)となっている土地は、小山氏が統治していました。
小山氏はかつて鎌倉幕府に重用された名家でその後も当地の豪族として非常な影響力を維持しました。
その当主に小山政種という人がいます。

連歌の宗匠であった兼載が古河に滞在することがありました。
政種に招聘されて小山に行ったのが天正17年のこと。
その間、城で酒宴が催されました。
その時、まだ年若い政種が酒に酔っ払って兼載の頭をしたたかに叩きました。
そして短句を1つ。

 兼載つぶり 春風ぞふく

兼載が当然憤りました。
しかしそのまま感情にまかせて怒鳴るようなことはしません。
風雅の道を歩む連歌師らしく、次のような句を付けました。

 小山木の こぶしの花は 散り果てて

果たして小山家は家を失うことになってしまいました。
これは兼載が句によって小山家を呪詛したからだということです。

さて、このエピソードは残念ながら信憑性が極めて低いものです。
兼載の没年は1510年。
この出来事が起きたのは1589年。
半世紀以上もの隔たりがあります。
政種は実在の人物で、没したのは天正9年(1581)。
こちらとも合いません。
しかし、政種が14歳という短命で亡くなっており、「若気とは云ひながら」と政種を批判する表現は適切でしょう。
また小山家が代々の土地を追われて常陸の佐竹氏に居候するのは父秀綱のときで、政種もまた父と行動を共にしていました。

このエピソードが収録されているのは『東国闘戦見聞私記』という江戸時代に作られた軍記物語です。
『東国戦記実録』という類似作品にもまたこの話が載っています。
そういうわけで、はなはだ疑わしものではなりますが、歌による呪詛というモティーフが魅力的だと思います。
それに実話ではなくても、何らかの出来事が反映されているのではないかとも思われます。
誰か無名の連歌師の出来事を、後世、著名な兼載にすり替えたとか・・・。
興味は尽きません。

放浪の歌人の系譜

昔から放浪の詩人というものに憧憬をもつ人は多くいました。
今でもそうでしょう。
種田山頭火に根強い人気があるのもそうした憧憬を現代人が継承しているからかも知れません。

古く遡ると、平安時代の能因法師がいます。
この人は歌論書も編んでいる本格的な歌人ですが、若くして出家し、奥州をはじめ各地を旅してまわりました。

ついで西行法師が出ました。
この人の旅のエピソードは非常に沢山残されています。
中世の連歌師、近世の俳諧師がみな一様に尊敬し、憧憬した歌人です。
室町時代には『西行物語』が作られ、絵巻にも仕立てられ、『西行和歌修行』というタイトルの本も出ました。
『西行歌枕』という本もありますが、これなどは『能因歌枕』を意識したタイトルかも知れません。
内容は歌書ではなく、『歌枕廻国西行行脚』という別題が付いているように、諸国巡りの物語作品です。
文学以外でも西行の伝説は日本各地に伝わっております。
西行が旅先で農婦と歌問答をして負けるといった笑い話も多く、もはや実像とはかけなはれた西行が伝説的人物として日本中の人々の記憶にとどめられてきたと言えるでしょう。

室町時代になると、日本中に連歌師が旅してまわるようになります。
その中で抜きんでた逸材は宗祇法師です。
連歌師であり、歌も善くし、歌仙と称されるほどでした。
連歌師で影響を受けたものは数知れず。
近世の俳諧師もまた宗祇を、西行とならんで称えました。
宗祇の旅の話も多くのこされていますが、西行のように民間説話としてはそれほど流布していません。
とはいえ、廻国の物語が作られ、よく読まれました。
『宗祇諸国物語』というものです。

宗祇のほかにも宗長や兼載などの連歌師の旅の話が後世残ってます。

近世になると、知らない人はいない芭蕉が現れます。
芭蕉の旅については語りつくせないので省略。
西行や宗祇に廻国物語があるように、芭蕉にもあまり知られていませんが、似たような物語が作られました。
その名も『芭蕉翁行脚怪談袋』というものです。

このように、放浪の歌人はその人生とともに作物が大きな影響を後世に与えました。
それと同時に、彼らを主人公にした廻国物語が作られ、読み物の主人公としても楽しまれました。
水戸光圀とは違う水戸黄門の漫遊記が楽しまれるのと同じですね。


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