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新年の初めはやはり本ネタにするのが奈良漬らしいと思いますので、地味に先月読んだ本のご紹介で始めますw
昨年までは「先月読んだライトノベル」を挙げてましたが、本ブログの傾向としてはラノベよりも硬い本のほうが相応しいかなと思うようになりましたので、月一でこのネタをやっていくことにします。
さて、先月、ラノベ以外では次の本を読みました。
東京大学史料編纂所編、昭和27年、東京大学出版会刊行。
日本史の史料を時系列に編集したシリーズの一冊。
後小松天皇の御代のうち、応永15年11月〜同16年6月を収録。
山科教言(のりとき)の日記『教言卿記』は以前通読したことがあります。
しかし、その中に、東坊城家、西坊城家の日常的な動向について記したあることを見過ごしておりました。
これが収穫でした。
また東坊城秀長の日記『迎陽記(こうようき)』が比較的多めに摘録されています。
ちなみに『迎陽記』は去年から校訂本が八木書店から刊行されはじめました(史料纂集古記録編)。
小町谷照彦著、平成19年、新典社刊行。
江戸時代に出版された『源氏物語』のダイジェスト版『源氏物語絵尽大意抄』の写真版、翻刻版、解説を主に取り上げています。
後半は『源氏物語』のあらすじが付いています(これは余計では?)。
このほかにも『源氏物語』関連の挿絵の類がいろいろ収録されています。
いわゆる源氏絵のDB化を考える上で参考になるものです。
薮崎香著、昭和63年、私家版。
郷土史家でなくては作れない労作。
地元を丹念に歩き、気になった地形を見出して調べていって中世の遺跡を見出すということは、一見の来訪者にはできないことです。
土地の旧家にも不審がられず屋敷に上げてもらい、伝来の文物を見せてもらえるのも、普段の付き合いがあればこそのこと。
そうした郷土史家の利点を最大限に生かしながらも謙虚な研究姿勢に、読みながら感動しました。
ほとんど普及していないのが残念な著作です。
内容は千葉県柏市を中心とした相馬氏の実態や城址の報告、寺社の歴史など。
相原充子著、平成14年、山川出版社刊行。
久保惣記念美術館所蔵『伊勢物語絵巻』を考察したものですが、読みやすい内容でした。
修士論文をまとめたっぽいですけど、クオリティは高いです。 研究史がよくまとまっていました。
ただ、解釈に解釈を重ねるような論の展開はいただけません(一般的読み物のつもりならかまいませんが)。 それから、『伊勢物語』の本文を岩波文庫から引用するのはやめてもらいたいです。 ついでに現代語訳もいらないのでは? そもそも、原文を読めない読者がこの本を丹念に読むことはしないでしょう。 野村典彦著、平成23年、青弓社刊行。
一般には、近代人の旅の歴史について論じたものといっていいでしょうね。
著者のご専門は民俗学(口承文芸)ですが。
際だっているのはガイドブックなどの本に捺された旅先のスタンプや書入れを手がかりに、旅の意味を考えていることでしょう。
こういうものも、使いようによっては分析対象になるものだと知り、驚きました。
柔軟な発想の重要性が知られます。
朝倉治彦・伊藤慎吾編、平成11年、東京堂出版刊行。
江戸前期の仮名書の短編物語草子を五十音順に翻刻した資料集の24冊目。
き〜けの巻。
『宜應文物語』『狂歌旅枕』『悔草』『化女集』『賢女物語』の5作品を収録しています。
『宜應文物語』は主に子どもが生まれるわけや、胎内の様子を述べたもので、ずいぶん神秘的な解釈がされています。
たとえば双子はなぜ生まれるのかとか、子どもの魂が体内に宿るときはどういうことが起きるのかとか、中々興味深い問答が繰り広げられます。
中には女なのに心は男に似る者もいれば、反対に男なのに心は女に似る者もいるのは何故かという問答があります。
これ、FtM、MtFに関する歴史資料にもなり得るものでしょう。
『狂歌旅まくら』は紀行文風の狂歌物語です。
『悔草(くやみぐさ)』は説教臭い教訓物ですが、諺をたくさん取り込んでいて、諺資料として有益です。
『化女集』『賢女物語』は列女伝の一種です。
なお、巻末に板元別の出版目録が掲げられていて、便利ではないかと思います。
以上のように、先月は日本文学・日本史に関連の本ばかり読んでいました。
ちなみに今読んでいる本は分厚いので、冊数的には前月比で落ち込みますw
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和本・古本
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先日、本を写す時に針の穴を刺すということを取り上げました。
日本では、自分で確認した限りでは、天文13年(1544年)の『伊勢物語』の注釈書が古い事例です。
調べ続ければ、もっと古い文献が出てくるかも知れません。
さて、西洋では日本よりも早くからこの方法が採られてきました。
日本と違って羊皮紙を用いる文化であったことが遠因としてあるかもしれませんが、どういう経緯で針穴をあけることが定着していったのかはさだかではありません。
今夏バルト3国の1つ、エストニアの首都タリンを訪れたとき、その実例を目にしました。
幸い撮影可能な資料でしたので、ここにも挙げて参考にします(リューベック市の法律書?)。
上記の資料では各行に開けてあります。
また、これは左右2段になっていますが、それぞれの段の首尾の4箇所に穴が開けてあります。
ではよいお年を。
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一週間ぶりの更新です。
年末恒例の新宿京王百貨店の古本市が開催中です。
僕は毎年行っています。
去年は中々の掘り出し物を手に入れたものです。
室町物語の代表的な恋愛物語『しぐれ』の古筆切を見つけました。
今回も何かいいものは出てないものかと期待を膨らませて行きました。
結果としては、古筆切に関してはめぼしいものは見出せませんでしたが、ただ、それ以外で面白いものをいくつか入手できました。
収穫品はこんなものです。
・『仮名草子集 男色物』(古典文庫、昭和33年刊)
『催情記』『田夫物語』『色物語』を収録しています。
いずれも全部写真版になっているので、見ていて楽しい本です。
・『森銑三著作集』別巻(昭和47年刊)
著作集全12巻の索引(人名・書名)のほか、森の研究ノート「近世人物研究資料綜覧」「素材録」、さらに「著作目録」「著作集総目次」を収録しています。
「近世人物研究資料綜覧」は人物別に伝記資料を整理しているもので、参考になります。
「素材録」は伝記読み物として面白いものです。
・『九州日置 島津家御所蔵品入札』(東京美術倶楽部、昭和3年刊)
日置(ひおき)島津家に伝来した名品の数々が載っています。
一般にこの手の目録には茶道具や書画が中心なのですが、これには伝定家筆の古筆切をはじめ、古典籍がたくさん載っています。
表紙には島津家の家紋(丸に十の字)がでかでかと銀で摺られ、また銀の野毛箔と金の切箔が押されていて、なかなか立派なデザインです。
・『未完成 猿狸問答』(岡田重幸編、曼荼羅文化研究会、昭和26年刊)
猿と狸とが教義の問答をするもの。
設定が面白かったので、つい手に入れてしまいました。
内容はまだ読んでないのでよく分かりませんが、仏教談議のようです。
気になるのは、国会図書館で検索すると、『猿狸問答』の出版年を1950年8月としていることです。
昭和26年といえば1951年です。
「未完成」と冠していることもあり、国会本とは別種の版のようです。
・『あこがれ』第弐年第四号(篠舟詩社、大正4年3月)
兵庫県有馬郡中野村(現・三田市)で出されていた詩の同人誌です。
和綴孔版の珍しいものです。
同人誌の歴史を考える上で参考になるかなと思って手に入れました。
清水威和夫という人が主宰していたようです。
どんな人だったんでしょうね。
・『塩漬の国魚のが原 玉子の前由来』(呑龍軒妙作、新版おどけうをづくし)
幕末明治頃に出た戯作です。
魚の擬人化本として珍本だと思います。
殺生石の由来のパロディのようですが、まだ読んでないのでわかりません。
塩漬の国→下野(しもつけ)の国
魚のが原→那須野が原
玉子→玉藻
てっぽう石→殺生石
などの洒落が見受けられます。
以上、どれも面白そうですが、中でも『玉子の前由来』は調べ甲斐があります。
***メディアコンテンツ研究会***
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大正14年(1925)に大岡山書店から出版された『郷土会記録』は柳田國男が編集した談話会記録です。
明治43年(1910)、柳田は新渡戸稲造らと郷土会を起こし、大正2年(1913)には雑誌『郷土研究』を創刊することになります。
その雑誌は今日復刻本が出ており(名著出版、昭和53年)、大きな図書館でならば大抵読むことができます。
それに対して、口頭発表の記録はあまり残されていません。
もちろん、発表後、成文化されたものもあれば、口頭発表したままになったものも多くあったことでしょう。
本書はその意味で学史的に有益なものです。
一部でも活字化したことは良いことだったと思います。
さて、僕の手もとにある『郷土会記録』は旧蔵者が分かります。
蔵書印を捺しておいてくれたのですね。
横浜の保土ヶ谷に住んでいた磯貝久氏。
神奈川県農会の技師だった人です。
職業柄、生業や民具に関心を持っていたのかも知れません。
この磯貝氏旧蔵本の前後の遊紙に記念切手が貼られています。
加えて、チョコレートのラベル2枚。
表紙を開くとこの切手が。
(下のラベルは糊付けされているわけではありません。)
切手は3銭切手で、「大婚弐十五年紀年」と記されています。
これは大正天皇のご成婚25周年の記念切手です。
発売日は大正14年(1925)5月10日。
消印は小田原郵便局、日付は「○.5.20」と見えます。
年は分かりませんが、「14」かも知れませんね。
ちなみにふちは銀色です。
銀婚式はこの頃から日本に普及しはじめたようです。
もうひとつの切手はこれ。
一番したにある切手ですが、これには「中華民国郵政」とあります。
帆船が描かれた1分切手です。
切手はさておき、チョコレートのラベルは森永チョコレートのものなのは分かりますが、いつ頃製造されていたものなんでしょうね?
切手が戦前のものですから、これもそうなんでしょうか。
森永はよく復刻版を出していますが、これもまた出してもらいたいものです。
この本の持ち主、磯貝久氏がいつ亡くなったのか未確認です。
『郷土よこはま』第37号(昭和39年3月)に磯貝長吉氏が「磯貝久覚書」という資料を紹介しています。
長吉氏は身内の方かと思います。
こういう資料を出しているということは、この時点で久氏は亡くなっていたのではないかと想像されます。
二枚目の画像の上に
「昭和33年10月20日(月)夜、晴 本郷木内書店ニテ」
とペン書きがあります。
おそらく遺族が蔵書整理して流失したもので、それが本郷の木内書店の店頭に出て、次なる所蔵者某の手に渡ったものと思われます。
(木内書店は文京区本郷6丁目、つまり東京大学のそばにあった本屋ですが、いまはもうありません。)
その第二の所蔵者の元を離れ、今度は三鷹のユーホードー書店に渡って、僕の手もとに落ち着いた次第です。
僕が手放したら、僕以上に有効に使ってくれる人の手に渡ってくれればいいですねw
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先月下旬に訪れたエストニアでは古本屋を1軒、ヘルシンキで2軒見つけました。
ヘルシンキのほうはあいにく開店時間前に前の通りを通過しただけで入る機会が作れませんでした。
一方、エストニアのタリンのほうには十分な時間を作ってじっくり渉猟できました。
街の本屋で得たものも含めて、購入した本を少し挙げてみます。
ほとんど子ども絵本です。
その中に1935年10月に発行された雑誌が1冊あります。
Huvitav Zurnaalという雑誌(Interesting Journalの意)で、時事、文芸、インテリアやファッション情報、地方情報などの総合誌です。
政治関連の記事の中には当世の政治家の漫画が描かれています。
まず、左上はKoronel Beck。
ポーランドの外交官ユゼフ・ベックです。
1935年当時はドイツをはじめ、欧州各国を駆け回っていました。
右上はKindral Goring。
言わずと知れたナチスのヘルマン・ゲーリングです。
本誌出版の前の月、つまり9月にはドイツでニュルンベルク法という反ユダヤ主義の法が施行されております。
ドイツはエストニアにとってもますます油断ならぬ国に映ったことでしょう。
左下はHessで、ヒトラーのアススタントと書かれています。
1987年まで生きたナチスの副総統Rudolf Hessのことです。
下中央はHeile Selassie。
エチオピア皇帝ハイレ・セラシエ一世です。
この皇帝は1974年までエチオピアに君臨し、最後はクーデターで倒れました。
本誌発行の翌年1936年にはムッソリーニのイタリアが侵攻し、英国に亡命することになります。
右下はJulius v. Gombos。
ハンガリー王国の首相ゲンベシュ・ジュラ。
翌年亡くなります。
明るい記事、というわけではありませんが、ハリウッッドスターを起用した広告も載っています。
PHILIPSのラジオです。
女の子はシャーリー・テンプル、男性のほうはゲイリー・クーパーです。
Shirley Temple kurameerib Gary Cooperiga.
(シャーリー・テンプルはゲイリー・クーパーに恋してる。)
1935年当時、シャーリーは6歳でした。
この年、アカデミー賞特別賞を受賞しており、子役として不動の地位を占めました。
エストニアは本誌発行の5年後の1940年、ソ連がバルト三国に侵攻してエストニアも占領されてしまいます。
ちなみにその2年後の1942年、今度はドイツ軍に占領されます。
さらに1944年、再びソ連に占領されてしまいます。
そんな不穏な空気のただよう1935年のエストニアの雑誌でした。
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